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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする

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恋愛小説です。  過去の傷からクラスメイトに心を閉ざした嫌われ者が、新しい恋によって前を向こうとする痛々しい青春模様を書いている…つもりです。  春…起承転結でいう「起」のパート…
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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第64話-梅雨が来た〜瑞穂はめっちゃ頑張った

 貴志の地獄のような課題を、 瑞穂は健気にもこなし続けていた。
 貴志は普段の瑞穂の表情や言葉尻の中から、精神状態を推察し、けして限界は超えさせ無いように課題の量を調整している。
 漢字に関しては、中学必修範囲どころか漢検準2級レベルまで読み書きできるようになった。英単語も高校生レベルまで進めている。
 暗記の課題に関しては、社会と理科に移行しても問題ない様子だった。
 要した時間は2週間。6月の

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第63話-夏が来る〜瑞穂の猛勉強

 夏が始まる少し前。この時期に貴志は初恋を経験したらしい。
 それはどんな人だったのか。どうして初恋は終わってしまったのか。貴志に聞きたいことは山ほどあった。しかし瑞穂にそんな時間は与えられなかった。

「福原、これ放課後までに提出してくれ」
 北村貴志が瑞穂に手渡したのは、大量に英単語が書かれた紙が5枚ほど。
「中学必修の英単語全部まとめてある。和訳して俺に返してくれ。採点の時間は高島さんにお願

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第62話-夏が来る〜貴志と紗霧の2年前②

 北村貴志の朝は早い。4時半に起きて、1時間ほど自転車トレーニングをしたら、母と弟の朝食を準備する。コーヒーは豆から中細に手挽きした豆をハンドドリップでゆっくりと抽出する。この至福の時を終えると、洗い物を済ませてさっさと登校してしまう。
 今はそのための準備時間。心をコーヒーでしっかりと整えていく。
 昨日は良いことがあったので、今日はマイルドなブレンドにしてみる。甘めの豆を中心に酸味が薄くなるよ

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第61話-夏が来る〜紗霧の2年前

 住宅地の明かりがかき消した星空を窓から眺めながら、紗霧は炭酸水を飲み干した。
 炭酸の刺激が駆け抜けた喉から、恍惚のため息が流れるように吐き出された。右肘をそっと撫でる。つい数時間前、北村貴志に触れそうになった右肘を。
 そして次は落胆のため息をついた。
 国語の解釈を教えて欲しい。そんな貴志のお願い事を今日果たしてしまった。
 貴志があの講義で満足してしまえば、もう彼に頼ってもらうことはなくな

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第60話-夏が来る〜二人の協定

 親友と好きな人が同じだった。そんな時、どうするのが正解なのだろう。
 恋を取るのか、それとも友情を取るのか。そもそも自分でそれを選ぶのは傲慢なのかも知れない。

「協定を結ぼうぜ」

 裕は貴志をまっすぐ見つめて、そう言った。貴志は固唾を飲んで、協定の詳細が語られるのを待った。
 友情と初恋を天秤にかけているなら殴るぞ。裕の言葉が重い。
 でも確かに裕の言うとおりだ。大切な想いを天秤にかけること

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第59話-夏が来る〜貴志と裕の2年前

 坂木紗霧の短い授業を終えて、貴志は大満足だった。国語の理解が進んだし、何よりいつもの机の間隔よりも近くに紗霧がいたのだ。すぐそばに、いたのだ。
 裕にバレないように、余韻にひたる。
 
 裕は隣で、紗霧が雑談交じりに話していたポイントをマーカーで強調している。その姿を貴志は片眉を上げて観察していた。
 俺が教えても、メモひとつ取らないくせに。そう思いつつも、裕が教えたことをちゃんと覚えてることは

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第58話-夏が来る〜貴志と紗霧の2年前①

 林間学校を終えた如月中学校は、慌ただしく実力テストの準備期間に差し掛かっていた。
 昨日までの仲間はすべてライバル。毎回のテストが来年のクラス分けに影響してくる。
 わざわざ私立中学校の受験をしたくらいだから、生徒たちは必然的に中高一貫コースに進むことを目標としている。
 その資格を得るのは7クラス中でたった2クラスのみ。成績順でクラス分けされる以上、授業のレベルもクラスにより分けられている。す

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第57話-夏が来る〜裕と瑞穂

 5月も終わろうかという時期になると、昼間はすでに暑い。しかし夕暮れからは激しく気温が落ちて、今はとても涼しかった。
 貴志の家で定期的に勉強会をしよう。そう決めた帰り道、裕は瑞穂と並んで歩いていた。
 好きな人を家まで送り届ける役目は誇らしく、そしてどうしようもなく切ない。

「なあ瑞穂。気持ちは固まったのか?」
 修学旅行を終えてから、瑞穂の貴志に対する態度が変わった。だから裕はすでに気づいて

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第56話-夏が来る〜受験も来る

 俺はもう恋なんてしない。夏が終わり秋が深まる頃、中学1年生の時、そう決めた。
 決めたはずなのに…。
 どうして、あいつは…。

 修学旅行を終えて、季節は初夏の色を呈し始めていた。
 全国模試を月末に控えていたため、1年半ぶりに本気を出してみた実力テスト。その結果が張り出される。
 クラス分けの公平性を担保するために公表されていた順位だが、最終学年では旗色が変わる。
 今度は進学校受験の模擬的

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【中書き】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする〜春

 なんとか春編を終了し、夏編に移ることができました。
 現在御堂は春編を読み返している最中です。いかんせん元々の設定とは大幅に中身が変わってしまったものですから。自分の張った伏線を忘れていないか見直しております。

 これまで連載を読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
 もしこの中書きから読んでいただいている方がおられたら、お楽しみはこれからです。

 いつの間にやら55話も書いてし

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第55話-春、修学旅行3日目〜初夏の足音を聞きながら

 家に帰るまでが遠足です。
 学校に戻り、貴志に送ってもらう道すがら。公園脇に設置されたベンチも、瑞穂には修学旅行先に変わりなかった。
 修学旅行中に、もう一度ゆっくり話したい。まだ家に着いてないからセーフだよね?

 瑞穂に促され、貴志はベンチに腰掛ける。重い荷物からひとまず解放されて、二人はホッと一息ついた。
 瑞穂がゆっくりと貴志の隣に腰掛けて、空を仰ぐ。緊張が止まらない。でも、今はその緊張

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第54話-春、修学旅行3日目〜瑞穂

「北村くん、家まで送ってくんない?」
 たった一言。たったそれだけを言うのに、どれだけの覚悟を決めただろう。
 貴志の事を考える時に胸に湧き上がる違和感。裕の告白を機に気づいたその気持ちが、恋と呼べるものなのか、それとも…。
 それを確認したい。その気持ちが理由で裕の告白を断ったのだから。
 裕は多分気付いてる。私が北村くんと帰りたいって、そう思ってたこと。彼に背を押され、北村くんの前に立ったのだ

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第53話-春、修学旅行3日目〜旅の終わり、恋の終わり

 如月中学校ご一行様を乗せたバスが、河口湖畔のホテルを出発する。
 理美は最後にホテルのエントランスを、道を挟んだ湖畔の庭園を目に焼き付けた。
 さようなら。私の初恋が終わった場所。
 きっとこのホテルの事を、私はずっと忘れないだろう。
 ちゃんと悟志と向き合う決意が出来た場所。
 いつかまた、この景色を見たい。曇りのない気持ちで、大切な人と。
 もう間違わない。誰かを好きでいるということは、その

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第52話-春、修学旅行3日目〜紗霧の朝

 朝風呂は6時から入れるらしい。修学旅行の間、紗霧の朝は風呂の解禁とともに始まっていた。
 割り当てられた風呂の時間に入浴しない旨は、教師たちに事前に報告してある。同級生たちに体を見られないようにするためだった。
 
 湯船に体を沈める。周りに人がいないため、眼鏡を外して素顔をさらすことへの恐怖心は薄れていた。元々彼女の視力は悪くない。むしろ眼鏡は邪魔なくらいだ。
 幼さは抜けていて、気品があるの

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