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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする

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恋愛小説です。  過去の傷からクラスメイトに心を閉ざした嫌われ者が、新しい恋によって前を向こうとする痛々しい青春模様を書いている…つもりです。  春…起承転結でいう「起」のパート…
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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第57話-夏が来る〜裕と瑞穂

 5月も終わろうかという時期になると、昼間はすでに暑い。しかし夕暮れからは激しく気温が落ちて、今はとても涼しかった。
 貴志の家で定期的に勉強会をしよう。そう決めた帰り道、裕は瑞穂と並んで歩いていた。
 好きな人を家まで送り届ける役目は誇らしく、そしてどうしようもなく切ない。

「なあ瑞穂。気持ちは固まったのか?」
 修学旅行を終えてから、瑞穂の貴志に対する態度が変わった。だから裕はすでに気づいて

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第56話-夏が来る〜受験も来る

 俺はもう恋なんてしない。夏が終わり秋が深まる頃、中学1年生の時、そう決めた。
 決めたはずなのに…。
 どうして、あいつは…。

 修学旅行を終えて、季節は初夏の色を呈し始めていた。
 全国模試を月末に控えていたため、1年半ぶりに本気を出してみた実力テスト。その結果が張り出される。
 クラス分けの公平性を担保するために公表されていた順位だが、最終学年では旗色が変わる。
 今度は進学校受験の模擬的

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【中書き】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする〜春

 なんとか春編を終了し、夏編に移ることができました。
 現在御堂は春編を読み返している最中です。いかんせん元々の設定とは大幅に中身が変わってしまったものですから。自分の張った伏線を忘れていないか見直しております。

 これまで連載を読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
 もしこの中書きから読んでいただいている方がおられたら、お楽しみはこれからです。

 いつの間にやら55話も書いてし

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第55話-春、修学旅行3日目〜初夏の足音を聞きながら

 家に帰るまでが遠足です。
 学校に戻り、貴志に送ってもらう道すがら。公園脇に設置されたベンチも、瑞穂には修学旅行先に変わりなかった。
 修学旅行中に、もう一度ゆっくり話したい。まだ家に着いてないからセーフだよね?

 瑞穂に促され、貴志はベンチに腰掛ける。重い荷物からひとまず解放されて、二人はホッと一息ついた。
 瑞穂がゆっくりと貴志の隣に腰掛けて、空を仰ぐ。緊張が止まらない。でも、今はその緊張

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第54話-春、修学旅行3日目〜瑞穂

「北村くん、家まで送ってくんない?」
 たった一言。たったそれだけを言うのに、どれだけの覚悟を決めただろう。
 貴志の事を考える時に胸に湧き上がる違和感。裕の告白を機に気づいたその気持ちが、恋と呼べるものなのか、それとも…。
 それを確認したい。その気持ちが理由で裕の告白を断ったのだから。
 裕は多分気付いてる。私が北村くんと帰りたいって、そう思ってたこと。彼に背を押され、北村くんの前に立ったのだ

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第53話-春、修学旅行3日目〜旅の終わり、恋の終わり

 如月中学校ご一行様を乗せたバスが、河口湖畔のホテルを出発する。
 理美は最後にホテルのエントランスを、道を挟んだ湖畔の庭園を目に焼き付けた。
 さようなら。私の初恋が終わった場所。
 きっとこのホテルの事を、私はずっと忘れないだろう。
 ちゃんと悟志と向き合う決意が出来た場所。
 いつかまた、この景色を見たい。曇りのない気持ちで、大切な人と。
 もう間違わない。誰かを好きでいるということは、その

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第52話-春、修学旅行3日目〜紗霧の朝

 朝風呂は6時から入れるらしい。修学旅行の間、紗霧の朝は風呂の解禁とともに始まっていた。
 割り当てられた風呂の時間に入浴しない旨は、教師たちに事前に報告してある。同級生たちに体を見られないようにするためだった。
 
 湯船に体を沈める。周りに人がいないため、眼鏡を外して素顔をさらすことへの恐怖心は薄れていた。元々彼女の視力は悪くない。むしろ眼鏡は邪魔なくらいだ。
 幼さは抜けていて、気品があるの

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第51話-春、修学旅行3日目〜男子部屋の朝

 朝が来た。目覚めは良いとは言えなかった。標高800メートルの河口湖で夜風に当たり、すっかり湯冷めした体が悲鳴を上げている。加えて和室の薄い布団に裕の寝相の悪さ。
 貴志は目を覚ますと腹部の重みに身をよじった。裕がなぜか自分と交差するようにうつ伏せで寝ていて、二人で十字を形作っていた。
「裕…頼むから人の腹の上で寝るのは止めてくれ」
 ごもっともな意見だ。叩き起こされた裕が貴志にあくび混じりの謝罪

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第50話-春、修学旅行3日目〜女子部屋の朝

 眠い…。河口湖の水面に昇る朝日を眺めながら、瑞穂は両目をこすっていた。まるで猫のようなその仕草だけを見ると、男子たちは、あまりのかわいらしさに魅了されていたことだろう。あいにくここは女子部屋で、男子はいない。
 そして瑞穂は2日間に渡る睡眠不足で驚くほどやつれた顔をしていた。目は腫れ、大きなクマができている。
「ふわあああ!」
 大きな欠伸とともに大きく伸びをする。

 瑞穂のあくびの声に刺激さ

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第49話-春、修学旅行2日目〜理美④

理美は膝をついて泣きじゃくっている。
 貴志の心を奪った坂木紗霧が憎かった。
 貴志の隣は、誰もが羨んでいた特等席。それを手に入れた、坂木紗霧に嫉妬した。
 そして紗霧がいなくなり、貴志の心は壊れてしまった。
 いくら泣いたところで、それは何の解決にもならない。それがわかっていても、泣きながら謝ることしか出来ない。
 出来ないのだ。
 理美は泣きながら謝ることしか出来ない。貴志が、2年近く

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第48話-春、修学旅行2日目〜貴志③

 最後に見た紗霧の顔は笑顔だった。目の端に涙を浮かべた、寂しい笑顔。その意味を知った時には、すでに彼女は貴志のそばにいなかった。
 あれから1年半の月日が過ぎた。

 夜風が冷たく体温を奪っていく。こんな風に心も冷めてくれたらどれだけ楽だっただろう。
 水面の揺れる音だけが二人の間に流れる時間を教えてくれた。静かに静かに時間が過ぎていく。
 その静寂を破るのは、二人の会話のみ。
「好きっていう言葉

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第47話-春、修学旅行2日目〜理美③

 貴志の涼し気な笑顔を見たのは、いつぶりだろう。無理して作っている表情なのは、潤んだ目元が教えてくれている。

 貴志の表情が消えて、激しい憎悪の目線を向けられ、しばらく無言の時間がやってきた。髪を振り乱し、頭を抱えた貴志の声にならない悲鳴は、しかし耳に、心に確かに聞こえていた。
 思えば貴志が取り乱す姿なんて、ほとんど見たことがなかった。坂木紗霧を傷つけた。それ以外の理由で貴志が、我を忘れる程怒

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第46話-春、修学旅行2日目〜貴志②

 貴志は、いまだかつてない感情の奔流に飲み込まれていた。気持ちが追いつかない。今の自分の気持ちすらわからなくなっていた。
 紗霧がいなくなって良かった?
 まさかそんな言葉が理美の口から出てくるとは思っていなかった。

 紗霧がいなくなって、貴志は人生の意味を見失った。紗霧がいなくなった「あの事件」は言わば心の殺人なのだ。それを…。
「紗霧がいなくなって、嬉しかった。そう言いたいんだね」
 無機質

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第45話-春、修学旅行2日目〜理美②

「私ね、悟志くんの事が、好きだよ」
 湖畔の闇に吸い込まれるように、言葉が紡がれた。河口湖の風は穏やかで、理美の次の言葉をも包み込もうと静かに波音を立てていた。
「悟志くんは、貴志くんの代わりなんかじゃない。
 ひとりの男の子として、好きなんだ」
 貴志は黙って頷いた。初恋が失われることの痛みは、とても根深い。ひょっとしたら一生をかけても癒やされないんじゃないか?とすら思う。
 それを乗り越えて弟

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