御堂彰

noteから小説家デビューを目指す40代です。 高校時代に書いていた小説を40代の人生…

御堂彰

noteから小説家デビューを目指す40代です。 高校時代に書いていた小説を40代の人生経験でブラッシュアップして書いてます。 心の痛みや喜びが生きているキャラクターを描写しようともがきながら書いてます。 接待フォローはいたしかねます。

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  • 【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする

    恋愛小説です。  過去の傷からクラスメイトに心を閉ざした嫌われ者が、新しい恋によって前を向こうとする痛々しい青春模様を書いている…つもりです。  春…起承転結でいう「起」のパートです。春編の終わりには新しい恋が始まります。  今はキャラクターの心を中心に。夏以降は過去に触れて。そんな構成を考えています。  第一話はあえて短く作っておりますので、お時間よろしければ7話まで見ていただければ話の骨格が見えてくると思います。  覗いて頂いてありがとうございます。

  • 詩のようなもの

    詩、ポエム、独り言。 過去作がほとんどです。 小説書くのに疲れたら書いてみようかな? (次の話の覚え書き的な書き方をするかもしれません)

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【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第1話-春、始業式〜貴志①

 俺はもう恋なんてしない。  夏が終わり秋が深まる頃、中学1年生の時、そう決めた。  中学3年生になる始業式の朝。  新しい日常の始まる朝。  この上なく気分の悪い朝。  北村貴志(きたむら たかし)は学校に続く坂道を歩き、ゆっくり下っていた。気分はまったく乗らない。  新しいクラスへの不安はない。友達なんて作るつもりはなかった。だから不安もプレッシャーも生まれるはずはなかった。  鼻先まで伸びた前髪は切れ長で涼やかな目元を隠し、その表情は読み取れない。肩甲骨の間にまで伸び

    • 【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第36話-春、修学旅行1日目〜貴志⑤

      「坂木さん見つけた」  貴志は、理美からの連絡を受けて駆けつけた。しかし初恋の人、紗霧との再会は叶わなかった。そこにいたのはたった一人。赤く腫れた頬を押さえ、茫然と立ち尽くす高島理美だけだった。 「貴志くん…ごめんね」  その一言が、赤く腫れた頬が、全てを物語っていた。紗霧はもうここにはいない。 「ごめん…なさい」  目の焦点が合わないまま、理美はただただ謝罪の言葉だけを繰り返していた。  まただ。また取り返しのつかない罪を重ねてしまった。  それなのに…。 「頬が腫れてる…

      • 【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第35話-春、修学旅行1日目〜紗霧④

         北村貴志という人を好きだと認識したのはいつだっただろう。後から振り返れば、そうだと思う瞬間は何度もあった。  初めて手紙をもらった時。林間学校の班長会議で遅くなった彼に偶然教室であった時。彼が忙しい母の代わりに、家事を毎日こなしていると聞いた時。  彼が山村裕と二人で、ふざけて笑い合っているのが見えた時。  だけど一番鮮明にあの時だ!と思い出せるのは、あの時だ。林間学校の夜。二人で見上げた星空。 「きれいな空だったなあ…」  思わず声に出してしまう。その微かな呟きは店の喧

        • 【詩】虹の橋🌈

          雨が上がったら 虹を見に行こう あなたはそう言った あの虹はきっと 希望につながる 橋なんだよ あなたの言葉を 笑った僕に 夢がないねと 笑うあなた 僕の雨はやまない 太陽(あなた)をを失った僕の心に もう虹の橋はかからない

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        【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第1話-春、始業式〜貴志①

        • 【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第36話-春、修学旅行1日目〜貴志⑤

        • 【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第35話-春、修学旅行1日目〜紗霧④

        • 【詩】虹の橋🌈

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        • 【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする
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        • 詩のようなもの
          4本

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          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第34話-春、修学旅行1日目〜貴志④

           初恋の人がこの街にいる。自宅から数百キロ離れた街で、奇跡のような偶然があった。  しかも彼女は同じ店で食事をしたらしい。それはいつか二人で行こうと、約束した店だった。  占いを受けて周りを見渡した時、一人の少女に目が止まった。  雑に伸ばした髪。縁の大きな眼鏡。紗霧の面影を見つけることもできなかったけれど。  それでもあの大勢の人の中で、なぜかあの少女だけは気になったのだ。そしてその少女が吸い込まれるように入った店が、二人の約束の店だった。そして同じものを頼んでいたという。

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第34話-春、修学旅行1日目〜貴志④

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第33話-春、修学旅行1日目〜瑞穂②

           構えた銃にためらいはなかった。自分は今、悪い奴らをこらしめるヒーローなのだ。奴らは物陰から自分たちを狙ってくる。考えろ…。反応しろ…。そして射て!  瑞穂は華麗な銃さばきで敵を打ち倒していく。隣で裕が小さく「さすが」と呟いたのが聞こえた。 「裕、右!」  指示すると同時に敵が弾け飛んだ。  中華街のゲームセンターで、瑞穂は裕と二人、ガンシューティングゲームに興じていた。  観客が声援を送る。まんざらでもないが、今はそれもただの雑音。敵の気配を鈍らせる。  完全なる二人の世界

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第33話-春、修学旅行1日目〜瑞穂②

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第32話-春、修学旅行1日目〜紗霧③

           なんとなく。そう、なんとなくだった。占いの館にいた、中学生の集団がなんとなく気になっただけだった。  スープチャーハンに舌鼓を打った紗霧は、店を出ると、向かいにある占いの館へと向かった。  同じ占い師が空いている様子だったので、その前に立つ。するとなぜか占い師は、自分の顔を見るなり大きなため息を着いたのだった。 「お姉ちゃん…。もしかして、失恋とかしなかったかい?  それも一生を左右するんじゃないかって思うくらいの」  まだ何も言っていないし、占ってくれとも言っていない。

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第32話-春、修学旅行1日目〜紗霧③

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第31話-春、修学旅行1日目〜理美③

          「瑞穂ちゃんたち、なんかトレンド入りしてるっぽいよ」  理美が横浜中華街で検索をかけると、見慣れた制服の後ろ姿が引っかかった。どうやらゲームセンターでとんでもない快進撃を展開しているらしい。  あの二人がガンシューティングなんかしたら、そうなるだろうな。一心不乱にゲームをしている二人を想像したら、自然と笑みがこぼれてくる。 「油断しすぎだよ、貴志くん。  今、普通に笑ってる」  理美の指摘で初めて気がついたのか、貴志が口元を隠す。どうもこの連中の前では、心も緩んでしまうらしい

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第31話-春、修学旅行1日目〜理美③

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第30話-春、修学旅行1日目〜裕②

          「お兄ちゃんの運命の人は二人いるようだね。そしてすでに、二人共出会った後みたい」  占い師が貴志の手相を見ながら告げる。  すでに出会った…二人?  一人は間違いなく坂木紗霧だろう。だとすると、もう一人というのは、やはり瑞穂のことか。それはこの場にいる中で、裕だけがたどり着いている結論だった。  貴志も、理美も「意外と近くにいる」の言葉だけを考えていた。紗霧が近くにいる。その可能性だけを。 「運命の人、二人共にもう出会ってしまってるから、お兄ちゃん大変だよ。今いる運命の人を

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第30話-春、修学旅行1日目〜裕②

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第29話-春、修学旅行1日目〜紗霧②

           修学旅行生であろう集団が占いを受けていた。その姿を紗霧は横目で見つめる。  普段なら気にすることもないそんな姿を目で追ってしまったのは、「たかし」と聞こえた気がしたからだった。  貴志なんて名前の男の子はどこにでもいる。会いたいから、聞こえてしまっただけ。  そう自分に言い聞かせる。  そもそも彼はあんなに長髪ではなかったじゃないか。  その長髪の少年が、自分の運命の人だとは気づかないまま彼女は首を振った。  長髪の少年の後ろにいた人物に至っては、顔を見ることができなかった

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第29話-春、修学旅行1日目〜紗霧②

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第28話-春、修学旅行1日目〜貴志③

           結局貴志と二人で歩いても、瑞穂は彼に聞きたいことの半分も聞けないでいた。横浜中華街の土産物全般を取り扱う、横浜大世界の前で班のメンバーと合流する。  そこに矢嶋の姿はなかった。理美と裕で他の班に合流するように勧めたようだ。彼女は喜々として班から離脱したらしい。  集合は2時間後に関帝廟前。まだまだゆっくりと過ごせそうだ。ひとまず晩御飯を食べることにする。  誰もが初めて来たため、お店の選択は貴志に委ねられた。貴志の家に横浜の旅行誌が置いてあったからだ。  内科医である貴志の

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第28話-春、修学旅行1日目〜貴志③

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第27話-春、修学旅行1日目〜貴志②

           パシフィコ横浜のプラザ広場で解散した、如月中学校修学旅行生一行は、それぞれの班に分かれて自由行動を開始した。  昼食と夕食を済ませ、19時頃に戻って来るまで丸々自由行動となる。無論教師たちは管理責任を果たすため、あらかじめ提出された行動範囲に分散配置されている。  バスを利用し、八景島シーパラダイスに行く班が一定数いたのは教師たちにとっても誤算だったらしい。翌日の午前の目的地だったからだ。  貴志達の班も、早々にランドマークタワー内のカフェで昼食を済ませていた。  瑞穂の

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第27話-春、修学旅行1日目〜貴志②

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第26話-春、修学旅行1日目〜理美②

          「ねえ、貴志くん。ひとつ聞いても良い?」 バスのエンジン音にかき消されないように、理美は貴志の耳元で囁いた。 「どうしたの?」  貴志も小声で返す。いくら街の騒音やバスの音にかき消されようとも、昔の口調に戻っているのだ。今の口調を、周りに聞かれたくはなかった。 「もし…もしもだよ」  理美はためらいながら言葉を選んだ。結局いい言葉が見つからなくて、かなり直接的な聞き方になる。 「もし坂木さんに偶然会えたとしたら、貴志くんはどうするの?」  思わぬ質問に貴志も驚きを隠せなかった

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第26話-春、修学旅行1日目〜理美②

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第25話-春、修学旅行1日目〜理美①

          「福原、バスの席、替わってくれないか?」  貴志の言葉に瑞穂が頷いて、裕と瑞穂が並んで座る。裕は両肩が耳に引っ付きそうなくらいに、いかり肩になって硬直している。  別に気を利かせたわけではない。貴志は理美と話がしたかっただけなのだ。  バスが小さく振動し、出発する。ここから約40分の短い旅が始まる。要件を伝えるには十分な時間だった。  自然と理美の表情が固くなる。 「二人で話したいとは言ったけど、周りに人がいない時がいいなあ」  貴志を軽く牽制してみる。貴志は軽く頷いて黙っ

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第25話-春、修学旅行1日目〜理美①

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第24話-春、修学旅行1日目〜瑞穂①

           フクロウを見に行こうか。そう言って裕と貴志が早足で去っていく。 「あのさ、班行動!」  瑞穂の叫びも虚しく二人の姿はあっという間に見えなくなった。早足で、というよりは競歩の勢いだった。  追いかけようとしたのを止めたのは…。 「あの二人が、二人で何かする時は、絶対に間に入っちゃダメ!」  強い口調で理美が瑞穂を静止する。表情も固い。こんな理美の姿は初めてだったので、瑞穂も呆気にとられて動けなくなる。  静かに隼人も頷いていた。彼も置いていかれた側だった。 「カピバラもオカピ

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第24話-春、修学旅行1日目〜瑞穂①

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第23話-春、修学旅行1日目〜紗霧①

           修学旅行で訪れたよこはま動物園ズーラシア。そのシロフクロウの柵の前で、紗霧は班から離脱した。 「ごめんなさい、フクロウ大好きで…。集合時間には合流するから」  あまり話さず、自己主張もしない坂木紗霧からの申し出。班員もどう絡んで良いのかわからない彼女は、彼らにとってもいないほうが楽らしい。反対する者は一人しかいなかった。 「何言ってるんだよ、班行動だろ。どうしてもって言うなら、一人はいけないから僕も残るよ」  男子が一人食い下がる。他の生徒は苦笑いを浮かべてため息を漏らして

          【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第23話-春、修学旅行1日目〜紗霧①