【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第26話-春、修学旅行1日目〜理美②
「ねえ、貴志くん。ひとつ聞いても良い?」 バスのエンジン音にかき消されないように、理美は貴志の耳元で囁いた。
「どうしたの?」
貴志も小声で返す。いくら街の騒音やバスの音にかき消されようとも、昔の口調に戻っているのだ。今の口調を、周りに聞かれたくはなかった。
「もし…もしもだよ」
理美はためらいながら言葉を選んだ。結局いい言葉が見つからなくて、かなり直接的な聞き方になる。
「もし坂木さんに偶然会えたとしたら、貴志くんはどうするの?」
思わぬ質問に貴志も驚きを隠せなかった