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散文

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#短文

散文 踏切の君に

散文 踏切の君に



私は明るく冷えた電車の中で、
君は猛暑の余韻の中、
私を探して踏切の向こうにいる。
君の硬い熱を掴んだ手でバイバイをする。

散文 ホームから飛び立てば、

散文 ホームから飛び立てば、

体がスっと吸い込まれるように、私はふわりと浮こうとした。

自殺なんて考えたことない、とは言わない。いつでも辛くて死にたくなるし、生きてる意味ってなんだろうと思うことの方が多い。だけど、小学生の時に死ねない人間だとわかってから、失敗したあとの地獄のような日々を思って死ぬ努力を辞めた。

だから、私は死なない。

死にたいけど死にたくない。

なのに、私はひとり駅のホームで立ち、電車が滑り込んでくる

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散文 テストなんてくそくらえだろ?

散文 テストなんてくそくらえだろ?

テスト会場はどこまでも静かでうるさかった。いつもは音で溢れる教室が、借りてきた猫みたいに、おすまししたとかげみたいに知らないものとなる。
今ここで私が暴れたらきっともっと別の空気が流れてくれるだろう。
1時間目のテスト監督はあいつだった。紫色のシャツを着た数学教諭。頭がいいのにこんな学校でルートを1から教えてる眼鏡だ。喋りやすいからみんなとよく喋るけど、どこか少し嫌われている。何故か近くにいるとゾ

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コピー集『花がある生活を』

コピー集『花がある生活を』

コピーライトの授業で提出した課題を投稿します!
お題『コロナ禍に花を売るためのコピー』

最後の写真以外は、大学の写真学科の友人の作品になります。

良き写真をありがとう。いい写真撮ってはるので良かったら!

最後のこの作品は、授業中に優秀作として選んでいただきました。「これはびっくりした……」と褒められたのが幸せでした。
初めの2作も先生に気に入って頂けたのでめっちゃ嬉しかった……。

散文 描けない感情はないも同然

散文 描けない感情はないも同然

嬉しい感情を描きたくても、私は言葉で遊べない。暗いことなら、色々な表現を思いつくのに……。
やはり、人の心は闇のことを強く保持しようとするのだろうな。
最近喜んだ記憶が無い。日々それなりに楽しくやっているのに、何故か沸き立つ思いが見当たらない。
だから、私はぐるぐると。
ぐるぐると、ただ一つの傷をぐるぐると。
いつのまにか
新たにできた傷を
ぐりぐりと。
忘れないうちにまたあの傷を、痛みを理

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散文 夏の終わりを思い出す

散文 夏の終わりを思い出す

夏の熱を帯びた青が薄い水色の空に変わっていた。そこに黒い点として動くカラスの鳴き声はどこかの工場の音に負けずに私の耳に届く。
あの痛い暑さはどこに行ったのだろう。
空気も涼やかで息がしやすい。
なのに、私の胸には重みがある。
水色の空に鳴くカラス。涼しい風に揺れるカーテン。いつかの何かの記憶と重なり、不安に駆られる。目をつぶると余計に風景がぐるぐる回る。この日々からは逃げ出せたはず。
なのに、その

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夕焼けに心惹かれすぎる人は西方浄土の住民なの【散文+短歌】

夕焼けに心惹かれすぎる人は西方浄土の住民なの【散文+短歌】



空から何かが変わった。
それは誰にとってのものではなく、ただ完全に変わった。
全ての変化は空から変わる。
変化は全てきれいなもの。
何もかもが変わるというのに、空を見上げていない人がいる。
世界中の何人がこの空を見上げているだろうか。多くの人がみているはずだ。
こんな世界はそうそうない。
そんなことはない。
これはいつもだ。
毎日、世界は変わっている。
このような変化を日々をこなっている。

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散文集 短文を集めたら世界が見える

散文集 短文を集めたら世界が見える

ただ細い道、怖くて振り向けない。足元だけを見つめて、歩いている。後ろの足音に怯えて少し歩みを早める。

頑張ってきた1日は人生のたった一コマで。

自分らしく生きることだけが、正義だと思わないで。人に合わせないといけない時があるんだし、自分がなんなのかわからなくなっている人には、逆に「悪」でそれに怯えるんだから。

自分以外の人になりたくて、でも、自分以外にはなれなくて。

後ろを見ている暇は僕ら

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散文 中学の僕のノート

散文 中学の僕のノート

この感情はきっと嘘なんだ。ただ楽しいふりをする。辛いという事に気付きたくないから、本当の感情が怖いから、ずっと嘘をついて、それが本当の感情だと信じた。
悲しいわけでも、泣きたい訳でもないのに涙を流すのは、人がそうしているから。悪い人に見られたくなくて、いい人に見られたいからだ。
こんな僕はずるいのだろう。でも、この生き方が間違っているとは思わない。この生き方で今まで上手いことやってきたのだから「間

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散文 電車は人になる

散文 電車は人になる

無性に泣き出してしまいそうな私は空を飛ぶ蛇のような電車に揺られる。
どこかの何かの赤い光を雨はかき消そうとする。
こんなに寂しい気持ちになるものなんだと、弱い自分を再発見する。
こんなに弱いのか、こんなに弱いのなんてダメだよ、と私は鞭打つことすら出来ない。
会えないことに涙が出そうになるなんて知らなかった。それほどに私はあの人のことが好きなのか。
それとも、ただの依存か。
愛情を注いでくれる人だか

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