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徒然

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#散文

写真詩『尽きた命の音』

写真詩『尽きた命の音』



尽きた命の音がした
カシャっと乾いた音
死んだ命を踏んだこの足に罪はある

【写真詩集『はみ出す青』のボツ作】
掲載するつもりで作ったけど、微妙だ!と思ったのでこちらで供養です。好きだけど!!ちょっと単語が無意味に繰り返されてる感じがします。純度が低い……

そしてこれもsampleで兄が作ってくれた表紙案です。
これもとても素敵ですが、ちょっと水色過ぎるかなと!思って!リテイク出したらより良

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散文 夏色に乞う

散文 夏色に乞う

進行方向に向かって座ったまま何キロで進んでいるかも分からないで、目的地に行こうとする。そんな私と同じようにスマホをいじるだけの乗客もみな、いつの間にか半袖に衣替えをしていた。

世界には黒と白しかないのかと思うぐらい彼らの服装は無彩色であった。色があるのは私だけなのか。多数に流される方がきっと楽だ。でも、私は色が好きだ。夏の毒々しいほどの名前の知らない赤い花とか、遊びに行くからと玄関に投げ捨てられ

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散文 なのはなはうそをつく

散文 なのはなはうそをつく

消えゆく私は赤の中。
明後日を泳いだあの子はもうずっと後ろに。
10年後に落ちる葉っぱの鋸歯を見た。
彼は振り返ることなく、落としたものになる。
揺れて揺れて巻き上がる。
夏の日に見た道路の蜃気楼なんてあいつの人生を語るよりずっとできっこない。
猫になる。
指が白く伸びていく。
黒にはなれずにいる影はもっと先を進む。
またあの日を懺悔する。
消えてなくなる。
消えたら存在がわかるもの。
大事な人な

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散文 今日の不安は明日の睡眠

散文 今日の不安は明日の睡眠

もうなにも考えられない。
日々睡魔に襲われて起きてる時間はほぼない。
生きているのか分からない。
じわじわと襲い来る不安感は何もしていないことへの罪悪感から起因する。

とはいえ、私たちは何も出来ない。
何も出来ないのに何かをしないと責められる社会に出ていかなければならない。
ないないばかりで心がおかしくなる。
もう、早くやめてしまいたい。
なにを?
なにも無いのに、何も無さすぎて息ができない。

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散文 ここにあるのは

散文 ここにあるのは

真っ暗になる。
視界から色が無くなる。
音が大きく鳴り響き、私の中を揺らす。
どくどくと脈が打つのがわかる。
その時、舞台の上に明かりが存在した。
彼らは天使だ。彼の歌声が私を包み、透き通る。あの人が出した音が私の身体を震わせる。
彼らは天使だ。だから4人組なのだ。
この場所に降臨しては、人々を浄化する。
私の両隣に空いた席はきっと、誰かが座っている。この満席の会場を埋める椅子の半分は空席。
そこ

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散文 オイスターソースは牡蠣なんだ?

散文 オイスターソースは牡蠣なんだ?

換気扇の音が響く。
足から伝わる冷気が私の足を重くする。
作った肉じゃがは、醤油を入れすぎた気がする。美味しそうだけどしょっぱいのかも。
なんてこともない日常。
平和な日々。
心が穏やかだ。
昨日までは何かに取り憑かれたように、鬱々とした思考がめぐり考えていないようで黒い霧が脳を覆っていた。
でも、何故か私の心は、頭は晴れやかで、生きているのが楽だと感じた。
私の日々のあれは、普通の人が抱えている

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散文 眼鏡と窓まで

散文 眼鏡と窓まで

点々と光る灯りを一面に
電車は走る

揺れる私と
揺れない街

生き急ぐスマホを眺め落ちる世界

私は孤独ではない
私は遠くではない

見慣れた路地の見慣れぬ猫は裏の天から落ちてきた

呆れた文字の読まれぬ音は今の瞬間現れた

赤いライトが走る
夜の昼間にただただと

散文 空の青さは敵わない

散文 空の青さは敵わない

踏切の青いライトには、自殺を抑制する意図があるらしい。青色は人の気持ちをおちつけるとのことだ。青色のご飯が食欲をそそらないのとなにか関係はあるのだろうか。多分ないだろうな。
ある有名な大学の最寄り駅には、青いライトが沢山あった。人身事故の多いその駅には、青いライトが沢山あった。
大学生の心を落ち着けることが、青いライトには出来るのだろうか。
自殺を本当に止めるのだろうか。
僕は知っている。その青い

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散文 街頭は無数に

散文 街頭は無数に

僕はマンションの前にいた。大量に同じドアが並ぶ。僕よりは当然大きくて、スカイツリーよりは圧倒的に小さい。まあリアルで見た事は無いのだけれど。
でも、僕の中ではこのマンションの方が存在感を放っている。
目の前のマンションにはなんの思い入れもない。ただただ、多くの人間が住む家が積んであるだけの建物。きっと、ファミリー向けの間取りになってたりするのだろう。
僕は何故か、恐怖を感じる。
僕にとってはなんの

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散文 炭酸水は溶け込まないで

私はリビングでスマホをいじる。Twitterで人との繋がりを求めて文字を打つ。
母も兄も同じ空間にいるというのに、私は埋まらない穴を見てしまい、その暗闇に慄いている。
だれかに私の心を知って欲しい。
でも、そもそも私が自分の穴を理解していない。
この穴はどこから、なんで、どうして、誰によって、作られたものなのかがわからない。
別に大した地獄は見てないし、この闇が人生の中心を占めてるとも思わない。明

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散文『都市は霧雨の中』

散文『都市は霧雨の中』

待合室の中、どこかの誰かがボランティアで作った座布団に座る。空は曇天。雨がザーッと降っては、止む。
電車に遅れると走った自分にまだ生きる気があるのだと感じた。別に1本電車を逃したところで、怒られることなどないというのに。急な疾走のせいで、足だけでなく肩もガタガタしてきた。運動不足の日々を悪いとは思わない。ただ。ただ、心にふわふわとした、けれど質量のある何かが舞い降りたように感じる。それは黒ではな

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散文『夜の底』

散文『夜の底』

眠れない時に感じるこの感覚はなんなのだろう。何か自分の中にぽっかりと穴が出来、それを必死に埋めようとしているような。
息もできている。心臓も動いている。脈だって。なのに自分はここにいないと感じる。
世界から音が消えたよう……、なんてロマンチック過ぎる。実際は家族の生きている音がする。虫の音がする。夜の音がする。
ひとりぼっちじゃないのに埋まらない穴は、朝になると存在自体忘れ去られる。忘

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散文『人に成る日のその前に』

散文『人に成る日のその前に』

通い慣れていたはずの路線はもう私には遠い過去のようで、右から左へと流れる景色は私の心象風景の如く霞に紛れていた。
指先は冷えきっている。感覚がない、という感覚を私は保持することが出来ていた。
生きるというのは実に滑稽で、なんて語ることも出来ない程度には私の人生は浅く美しいものではなかった。最もそんな語り草をする人間を私は信用するどころか、嘲笑うだろうけれど。
誰もが手の中の情報端末に夢中で、

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