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#ほぼ毎日note
ショートショート SF 『コロナゴノセカイ』
世界は完全にオフラインに支配されていた。
もう私たち、いや私はどこともつながることはできない。世界は悲しいまでに沈黙を強いられるようになってしまったのである。
私は、いつものように湖面に面した小さな山小屋風の建物で、朝日をまぶたに感じることで目を覚ました。
「アレクサ」
私はかすれる声で言った。可動式のアマゾンエコー第48世代、アレクサは、静かに私の方にやってきた。太陽電池で動くアレク
ショートショート『手袋』
仕事からの帰り道、私は駅の階段を上がっていた。目の前の大きな背中をした男性の後ろに、半分反り返るようにして歩いていると、ふとした拍子に後ろ向きに倒れてしまうのではないかという恐怖に駆られ、次の瞬間には、別に倒れてみるのも悪くないのかも、なんて思ったりした。
空気が氷のように冷たい。階段を上がりながら、私は階段の上に片方だけの黒い小さな手袋が落ちているのを見つけた。
このところ妙によく、私の
ショートショート「あ、」
私が勤める職場には、魅力的な女性がいる。
あどけなさが抜けきらない感じの女性だけれど、仕事はできて、何かを質問すると、きちんと理路整然と答えてくれるのだ。
そして、どことなく親しみやすい印象も持っている。
その、彼女の持っている親しみやすい印象については、誰に対しても出しているのか、はたまた私に対してだけ出してくれているのかは、わからない。
話しかけてくるときには、きちんと目を見てはなしてく
ショートショート『待つ人』
この話は、ある夜の夢をもとに、それを補正して書いたものです。なので、つじつまが合わなかったり、支離滅裂な点はあるかもしれませんが、とにかく夢の中で感じた感覚を形にしたくて書いてみました。
意味不明な内容の中に、何かを感じていただければうれしいです。
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小さな駅で、私は駅員をしていた。小学生のころから鉄道模型にはまり続け、その趣味が高じて鉄道員になったのだ。本当は運転手に