陳言 ‐ 日本企業(中国)研究院 執行院長

1998年慶応大学経済学研究科博士課程修了。現在、北京で文筆やコンサルなどの活動をして…

陳言 ‐ 日本企業(中国)研究院 執行院長

1998年慶応大学経済学研究科博士課程修了。現在、北京で文筆やコンサルなどの活動をしています。

記事一覧

伝統的な日本のシルバー産業企業は中国で成功せず、成功の見込みがあるのは「新勢力」

研究院专稿 中国の巨大な人口と次第に加速する高齢化のトレンドのため、中国のシルバー産業はずっと巨大な潜在力を秘めた市場であり、これはとても確実な未来である。その…

日本家電がまた戻ってきた

JPINS/文日本ブランドは前世紀の中国家電市場の主役だったが、2000年以降、中国家電の台頭につれて“総崩れ”になった。現在、中国人の所得レベルの向上にともない、消費の…

水素エネルギーの共同発展、中日双方に存在する強い補完性

JPINS/文 閉幕したばかりの北京冬季オリンピックでは、水素エネルギーが最も際立ったシーンの一つとなった。冬季オリンピックのトーチに初めて水素ガスが燃料として採用さ…

ギャランツと象印の争点についての私見 

2022年2月17日午前10時、象印マホービン株式会社(象印)の株主総会が開催される前に、同社と中国企業のギャランツとの間に見られる経営理念の大きな違いが、中日両国メデ…

中国勤務18年の私が語る、人々が注目するキヤノンの問題

キヤノン珠海の補償プランが中国の世論から注目されてから、中国においてキヤノンに対する民衆の好感度が急上昇した。日本企業(中国)研究院も2月15日、公式サイトに中日…

日本でも新型コロナウイルス服用薬が開発されているのに、どうして米ファイザーしか知られていないのか

新型コロナウイルスが流行して2年余り、全世界が特効薬を待ち望んでいる。少し前の2月12日、中国は米ファイザー社が開発した新型コロナ治療薬「パキロビッドパック」の中…

ユニクロは他の海外ブランドよりも際立っているが、警戒すべきなのは……

JPINS/文 ユニクロは中国市場で最も成功した日本ブランドの一つと言える。しかし、同社は今試練に直面している。同社を成功に導いた幾つかの要素を、中国国内ブランドが用…

マツダは中国市場で持ちこたえられるのか?

2021年、中国の自動車市場全体の業績が芳しくなかったが、日本車も例外ではなく、大半の自動車メーカーが販売台数を落としている。前年比8.2%増だったトヨタを除いて、中…

旧時代は終わるも中国の「日系時代」は終わらず

JPINS/文 先日、日本の飲料大手のキリンホールディングスは、中国企業の華潤集団と合弁した華潤麒麟飲料(China Resources Kirin Beverages)の40%の株式を約10億元で中国…

日本がいまだ競争力をもつのはどの産業で、その理由は?

清源 また日本人が一人、ノーベル賞を受賞した。今年10月、米国籍日本人科学者の真鍋淑郎さんがドイツの科学者クラウス・ハッセルマンさんと共に2021年のノーベル物理学賞…

中国・新型コロナウイルス禍 サービス産業デジタル化は巨大市場

オンライン教育に殺到 中国江蘇省丹陽市の中学2年生、周玉玥さんは今年の春節(1月25日)の後、家でオンライン教育を受けることになるとは夢にも思っていなかった。春…

「中所得国の罠」という言説に惑わされるな

 習近平主席は元旦の祝辞で「中国の国内総生産(GDP)は100兆元に近づき、国民1人あたり総所得(GNI)の平均は1万米ドルの大台に進みつつある」と語った。それを受け、G…

中国がテスラを必要としているのはなぜか?

2020年の初日、テスラはウィーチャットのパブリックアカウント上に、中国語で「2020年、頑張りましょう!」という新年のあいさつを公開した。 この新年のあいさつに続いて…

EU商会の調査から見る華南の企業

新型コロナウイルス感染症の流行によって世界経済が鈍化し、国際企業の経営負担が激増した。だが中国EU商会の華南分会の調査によると、華南分会の大部分のメンバー企業はサ…

伝統的な日本のシルバー産業企業は中国で成功せず、成功の見込みがあるのは「新勢力」

伝統的な日本のシルバー産業企業は中国で成功せず、成功の見込みがあるのは「新勢力」

研究院专稿 中国の巨大な人口と次第に加速する高齢化のトレンドのため、中国のシルバー産業はずっと巨大な潜在力を秘めた市場であり、これはとても確実な未来である。そのため早くも20年前から、外資は中国のシルバー市場に進出を始め、中でも日本の企業が最も活発であった。しかし今日になっても、中国のシルバー市場で金脈を掘り当てた日本企業は多くない。

伝統的シルバー企業の模索は成功せず

日本は年季の入った高齢

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日本家電がまた戻ってきた

日本家電がまた戻ってきた

JPINS/文日本ブランドは前世紀の中国家電市場の主役だったが、2000年以降、中国家電の台頭につれて“総崩れ”になった。現在、中国人の所得レベルの向上にともない、消費の高度化が長期的なトレンドとなっている。価格ではなく品質で勝負する日本の家電は再び多くの消費者の支持を得られるだろうか。

日本企業は中国人の消費の高度化にすぐに気づくべきだ。2014年前後、中国の婦人らが日本のホテルに入った時に、

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水素エネルギーの共同発展、中日双方に存在する強い補完性

水素エネルギーの共同発展、中日双方に存在する強い補完性

JPINS/文 閉幕したばかりの北京冬季オリンピックでは、水素エネルギーが最も際立ったシーンの一つとなった。冬季オリンピックのトーチに初めて水素ガスが燃料として採用され、冬季オリンピックの期間中、816台の水素エネルギー電池自動車が輸送サービスの主力として活躍した。冬季オリンピックは中国における水素エネルギー発展の里程標であり、中国において水素エネルギーの発展が本格的に加速し始めたことを意味してい

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ギャランツと象印の争点についての私見 

ギャランツと象印の争点についての私見 

2022年2月17日午前10時、象印マホービン株式会社(象印)の株主総会が開催される前に、同社と中国企業のギャランツとの間に見られる経営理念の大きな違いが、中日両国メディアの注目を集め、多くの中国語および日本語の記事が新聞紙面やネット上を賑わせた。

日本の世論の理解を勝ち得たギャランツ

日本の資本市場、世論の動向から見ると、ギャランツは多くの理解と支持を得た。
日本経済新聞の報道によると、ギャ

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中国勤務18年の私が語る、人々が注目するキヤノンの問題

中国勤務18年の私が語る、人々が注目するキヤノンの問題

キヤノン珠海の補償プランが中国の世論から注目されてから、中国においてキヤノンに対する民衆の好感度が急上昇した。日本企業(中国)研究院も2月15日、公式サイトに中日二カ国語で「中国世論を驚かせたキヤノン珠海の補償プラン」と題する記事を掲載し、キヤノン珠海の補償プランが及ぼした影響に対して分析を行った。

小沢秀樹氏は2005年にキヤノン(中国)有限公司の社長兼CEOに就任してから、小沢氏と同じ大学の

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日本でも新型コロナウイルス服用薬が開発されているのに、どうして米ファイザーしか知られていないのか

日本でも新型コロナウイルス服用薬が開発されているのに、どうして米ファイザーしか知られていないのか

新型コロナウイルスが流行して2年余り、全世界が特効薬を待ち望んでいる。少し前の2月12日、中国は米ファイザー社が開発した新型コロナ治療薬「パキロビッドパック」の中国での使用を許可したという情報がたちまち広まり、一時各メディア上で現在開発済みの各種新型コロナウイルス治療薬の名が溢れかえり、人々はその舌をかみそうな覚えにくい薬品名ではなく、ファーザー、MSD、メルク・アンド・カンパニー,ギリアド・サイ

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ユニクロは他の海外ブランドよりも際立っているが、警戒すべきなのは……

ユニクロは他の海外ブランドよりも際立っているが、警戒すべきなのは……

JPINS/文 ユニクロは中国市場で最も成功した日本ブランドの一つと言える。しかし、同社は今試練に直面している。同社を成功に導いた幾つかの要素を、中国国内ブランドが用いることによって同社よりも成功を収めているのだ。

2021年のTmallによる「ダブル11」で、ユニクロは初めて「ランク外」となった。ITIbや巴拉巴拉、Ubrasなど多数の中国ブランドがユニクロを上回り、それぞれレディースやキッズ

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マツダは中国市場で持ちこたえられるのか?

マツダは中国市場で持ちこたえられるのか?

2021年、中国の自動車市場全体の業績が芳しくなかったが、日本車も例外ではなく、大半の自動車メーカーが販売台数を落としている。前年比8.2%増だったトヨタを除いて、中国ではホンダの販売台数が前年比4%減、日産が5.2%減であり、日本車メーカーで最も苦戦しているマツダが前年比14.3%減で、わずか18万4000台しか売れなかった。これでマツダの販売台数は3年連続の大幅減であり、マツダは一体どうしたの

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旧時代は終わるも中国の「日系時代」は終わらず

旧時代は終わるも中国の「日系時代」は終わらず

JPINS/文 先日、日本の飲料大手のキリンホールディングスは、中国企業の華潤集団と合弁した華潤麒麟飲料(China Resources Kirin Beverages)の40%の株式を約10億元で中国の投資機関である普拓(プラトーコンシューマー)に売却すると発表した。
同様に日本のもう一つの飲料大手アサヒグループホールディングスも、しだいに中国の飲料業務から手を引きつつある。過去数年の間にアサヒ

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日本がいまだ競争力をもつのはどの産業で、その理由は?

清源

また日本人が一人、ノーベル賞を受賞した。今年10月、米国籍日本人科学者の真鍋淑郎さんがドイツの科学者クラウス・ハッセルマンさんと共に2021年のノーベル物理学賞を受賞した。これは2000~2021年の期間中、21人目の日本人(日系も含む)ノーベル賞受賞者 である。2001年には、日本は50年間で30個のノーベル賞を獲得するというスローガンを掲げている。

しかし、中国人の日本人に対するほと

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中国・新型コロナウイルス禍 サービス産業デジタル化は巨大市場

中国・新型コロナウイルス禍 サービス産業デジタル化は巨大市場

オンライン教育に殺到

中国江蘇省丹陽市の中学2年生、周玉玥さんは今年の春節(1月25日)の後、家でオンライン教育を受けることになるとは夢にも思っていなかった。春節休暇が終わったら、本来、2月10日から新学期が始まるはずだったが、3月下旬になっても学校側から具体的な新学期開始時期を指示して来ない。

江蘇省は8000万の人口を擁し、この外に他都市から出稼ぎに来ている人が1000万人前後いる。新型コ

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「中所得国の罠」という言説に惑わされるな

「中所得国の罠」という言説に惑わされるな

 習近平主席は元旦の祝辞で「中国の国内総生産(GDP)は100兆元に近づき、国民1人あたり総所得(GNI)の平均は1万米ドルの大台に進みつつある」と語った。それを受け、GNI平均1万米ドル突破がメディアの話題をさそい、そこには歓呼と憂慮があった。中国経済は「中所得国の罠」を突破して、高所得国レベルに到達できるのか否かの正念場をむかえている。
 「中所得国の罠」の概念は、世界銀行が2007年に「東ア

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中国がテスラを必要としているのはなぜか?

中国がテスラを必要としているのはなぜか?

2020年の初日、テスラはウィーチャットのパブリックアカウント上に、中国語で「2020年、頑張りましょう!」という新年のあいさつを公開した。

この新年のあいさつに続いて、1月3日にテスラは次世代の主力モデルであるModel 3の値下げを発表した。中国の工場で生産された標準航続距離アップグレードモデルのModel3(基本補助運転機能を含む)の販売価格を35万5800元から29万905元(補助金の加

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EU商会の調査から見る華南の企業

EU商会の調査から見る華南の企業

新型コロナウイルス感染症の流行によって世界経済が鈍化し、国際企業の経営負担が激増した。だが中国EU商会の華南分会の調査によると、華南分会の大部分のメンバー企業はサプライチェーンの移転に対し消極的で、中国市場から撤退する意思はないとのことだ。

中国EU商会が6月10日に発表した『2020年中国EU商会企業信頼感調査』によると、2020年に在中業務を拡大する考えがある企業は51%で、2019年から4

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