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ユニクロは他の海外ブランドよりも際立っているが、警戒すべきなのは……

JPINS/文 ユニクロは中国市場で最も成功した日本ブランドの一つと言える。しかし、同社は今試練に直面している。同社を成功に導いた幾つかの要素を、中国国内ブランドが用いることによって同社よりも成功を収めているのだ。

2021年のTmallによる「ダブル11」で、ユニクロは初めて「ランク外」となった。ITIbや巴拉巴拉、Ubrasなど多数の中国ブランドがユニクロを上回り、それぞれレディースやキッズ、インナーウェアのジャンルでトップに立ったが、これらのポジションはかつて長年にわたってユニクロが占めていたものだ。ユニクロはメンズでは今でも存在感を示しているが、太平鳥や波司登などの中国ブランドも差を詰めて来ており、予断を許さない状況になっている。

中国の国産ブランドはデジタル化によって急速に台頭しており、これらの企業のやり方は大胆かつ新進気鋭で、継続的にビジネスモデルを革新している。他の欧米のファストファッションブランドと比べると、ユニクロのデジタルトランスフォーメーションは一歩先を行っており、海外ブランドの中ではずば抜けているが、一部の中国国産ブランドと比べると、ユニクロはマンネリ化しており、反応も遅いため、創造性に乏しく、いくつかの分野ではすでに追い越されているが、それも決して意外なことではない。

しばらく前に、ユニクロの母体企業であるファストリテイリンググループが発表した最新の四半期(2021年9月-12月)の業績報告によると、ユニクロの中華圏の業務における売上と利潤はいずれもマイナスだったが、中華圏は同社が海外市場で業績を落とした唯一の市場だった。

2002年、「ファストファッション」を特色とするユニクロが中国市場に参入し、2012年より、同社は9年間連続でTmallによるダブル11のアパレルランキングで首位をキープし、他の国際ブランドを寄せ付けない存在だった。

ユニクロと鮮明な対照を成しているのが、中国市場における他の「ファストファッション」の国際ブランドが直面している状況だ。スペインの有名ファストファッションのZaraの母体であるInditexグループは2021年初に、傘下にあるBershka、Pull&BearおよびStradivariusの3つのブランドが中国の全ての実店舗から撤退し、公式サイトとTmall店で引き続き販売すると発表した。米国のファストファッションブランドUrban OutfittersとEverlaneは、2021年前後に中国市場を撤退した。かつてファストファッションの王者だったGapグループ傘下のブランドのOld Navyも、2020年に中国市場の全ての販売チャネルを閉鎖することを正式に発表し、Gapも中国業務を売却することを検討している。

なぜユニクロはずば抜けているのか?それは、中国の消費市場が世界でもデジタル化が最も早い市場だからであり、オンライン消費の習慣も次第に定着しており、新世代の消費者のよるカスタマイズされたニーズが次第に顕著になる中で、アパレルファストファッションブランドは販売チャネルやサプライチェーン体制において全面的なデジタルトランスフォーメーションを行う必要があり、そうしなければ市場のペースについて行くことができない。特に新型コロナによるオフライン販売への打撃が続いており、この傾向が加速している。しかし、これらの海外ブランドの中で、市場のペースについて行くことができているのはユニクロなどのわずかな企業だけだ。

ユニクロは2008年にインターネット旗艦店を出店し、新たな小売発展モデルに着手した。後に、同社はミニプログラム(小程序)へと手を広げ、そしてオフライン店のデジタル化を推進し、2019年に、ファストリテイリンググループはEコマースとチェーン店の在庫情報の一体化を実現し、実店舗をEコマースの倉庫として補えるようにし、顧客がネット上で商品を購入した後、チェーン店から出荷することも、顧客が店舗で商品を受け取ることもできるようにした。これにより、ユニクロは新型コロナの流行期間中に実店舗の売上が影響を受けたとはいえ、Eコマース業務では顕著な好調ぶりを示した。2021年にユニクロはさらにデジタルサービス「StyleHint」をリリースした。同グループは最新の財務報告で、「グローバルなEコマースの開拓に力を注ぎ」、「ネットショップとチェーン店の業務統合を中心に、関連するシステムの構築を加速する」必要があるという考えを示した。しばらく前に、同グループは2022年8月までに、上海に1000億円(約55億元)を投じて自動化倉庫を設けることを発表したが、その目的は配送速度を大幅に向上させ、現在成長を続けているEコマース分野によりよく融け込むことだ。

ユニクロの手腕は際立っているが、問題なのは、新たに台頭してきた中国ブランドの方がもっと優れていることだ。

ITIbを例に挙げると、2020年10月17日にデビューしてから、ITIBはわずか18カ月で無名の存在から一気にTmallのトップにのし上がった。ちなみにユニクロはトップになるまでに6年かかっている。

ITIbはどうやって一足飛びに他を追い抜くことができたのか?ITIbの創始者は10年以上ブランドのEコマース業務に携わった経験があり、Eコマースの思考はITIbのビジネスロジックを貫くものであり、その中で最も強力な手段は、インフルエンサーによるライブによって速やかに超大型の販売チャネルを作り上げることだ。ライブコマースは中国で近年急速に流行している新たなタイプの販売方式で、2021年10月20日、タオバオでは李佳琦と薇婭の二大ライバーによるライブの取引額が約200億元に達した。中国小売大手のRTマートが発表した2021年の半年間(4-9月)の売上は45億3400万元だった。

ITIbと薇婭はライブによるコラボを行っており、薇婭はタオバオのスーパーライバーであり、9200万ものフォロワーを有しているが、それがITIbにとってネット全体の販売効果が最も好ましいチャネルとなっている。薇婭はさらに商品やマーケティングなどの方面でも全面的にITIbを後押ししており、ネット全体においてダントツのアクセス数をもたらすと同時に、消費者から直接寄せられるフィードバックによる商品の改良提案を提供している。

この他に、ITIbはさらにインターネットによってオープンなエコシステムを作り出しており、現在ITIbには300を超える国内外の有名なデザイナーおよびデザイナーブランドが集まっているが、その目的は国際的かつ革新的なデザインが集結したプラットフォームを構築することだ。デザイナーの製品は薇婭のライブの間、直接消費者に紹介され、そして「消費者の目が注がれ、彼らによってコメントされ、認められる」のだ。ITIbは、「中国は多くの優秀なデザイナーを有しており、彼らがより消費者に注目されることを望んでいる」とした。ITIbはもはや従来の意味でのアパレル企業ではなく、むしろアクセス数やソーシャルメディア、Eコマース、ファッションを掛け合わせた新しいタイプの事業体だ。

もう一つの対比できる例はUbrasであり、同社は元々ユニクロの看板商品の「跡がつかないノンワイヤーフリーサイズインナー」によって、ダブル11の商戦でユニクロを負かした。UbrasはKOL(キーオピニオンリーダー)によるレコメンドやネットワークライブでの販売促進などの方法で徐々に消費者に影響を及ぼして新商品を認知させているが、これより前、ユニクロの「跡がつかないノンワイヤーインナー」はあまり注目されていなかった。

それゆえ、ネットワークライブの出現とその流行は従来の販売モデルに対して破壊的な衝撃を与えたという声がある。なぜならライブの形式は、アパレルのオンラインショッピングでは直感的な効果を示せないという欠点をある程度補っているだけでなく、さらに肝要な点として、ファストファッションは流行をいち早く取り入れており、おしゃれとはいえ決して安くはないが、ライブ配信ルームでは最低価格が主要な競争力であり、ファストファッションに対して大きな衝撃を与えている。明らかにライブというこの新たな形式はまだユニクロの注意を引いていないが、現在の中国では、ユニクロのコストパフォーマンスは以前ほど良くないと不平をこぼす消費者が増えている。

サプライチェーン体制の方面で、ユニクロが保ってきた優位性が試練に直面している。一部の中国ブランドはサプライチェーンの敏捷性の面でより先進的な能力を有しており、その代表格と言えるのは中国のファストファッションの越境Eコマース企業であるSheInだ。同社は「小单快返(少量から注文可能で、対応が早い)」というフレキシブルなサプライチェーンを構築しており、衣服の1回の最小注文ロットは100枚で、サンプル作製から生産までのフローはわずか7日間だ。同社はこの方式により、品がよくて値段も安く、商品の出荷が非常に早く、デザインも豊富というサービスを展開している。現在、同社は8年連続で100%以上の売上増加を実現しており、Euromonitorのデータは、自社ブランド製品の販売額で評価すると同社はすでに世界最大のオンラインファッション小売会社になっていることを示している。それに比べてユニクロの製品サイクルは18週間だ。

ユニクロの過去の成功は、同社が常に変革を追求する道筋を歩んできたことが要因だが、同社が今直面している試練はその同じ道筋を走る速度が不足していることだ。

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