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アフタヌーンティーとの出会いは価値観との出会いだ

ー アフタヌーンティーの価値から考える「モノの価値」とは ー

品川区にある東京マリオットホテルのラウンジへ。

お目当ては期間限定の「桃アフタヌーンティー」だった。

(ちなみに私は生まれつきの桃好き。)


「せっかくのどこにも行けない夏休みだから贅沢をしたい!」

連れのその一言で、私の「人生初アフタヌーンティー」が決まった。


「女がすなるアフタヌーンティーというものを私もしてみんとてすなり。」

偉そうにこんなことを考えた。


アフタヌーンティーが数年前から巷で話題になっていることは知っていた。「ヌン活」なんて言葉もあるらしい。

未経験者の私のイメージでは、ホテルのラウンジで食べることができて、鳥かごみたいなラックに載せられていて、高級で見た目も華やかでおいしいスイーツがあって、セイボリーと呼ばれるお料理もあって、ドリンクは飲み放題、とまあこんな感じ。

以前からあるスイーツバイキングと比べたアフタヌーンティーの特徴は「優雅さ」にあると感じる。

バイキングとは違い、「元を取らなきゃ」という概念がない余裕のある空間で、時間に追われることもなく、綺麗に盛り付けられたかわいいスイーツたちがお上品に並べられている。


そんなラグジュアリー体験ができるアフタヌーンティーに、新しいグルメ好きな私が今まで足を運んでこなかった理由はその価値への疑問からだった。

「おやつに5000円とか高すぎじゃない?インスタ映えだから?」

「こんなにたくさん甘いもの食べられないし」

「家で好きなケーキ山ほど買えちゃうよ?」

「幸せになりたいなら150円のクリスピークリームドーナツで十分だし」

という感じ。


しかし記念すべき初アフタヌーンティーを終えた今、私はこの考え方が間違っていたことに気づいた。


真夏の太陽が照りつける8月の午後。

私は慣れないノースリーブのワンピースにハイヒールという格好で出かけた。

品川駅から無料送迎バスに乗ること5分でホテルに到着。

ラウンジに入ると眺めのいいゆったりしたソファ席に案内された。


ドリンクメニューを渡される。

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8種の紅茶や4種の中国茶、コーヒーの中から好きなものを選べる。

行き道の暑さにやられていた私たち、選択肢はアイスティーの一択。


迷った挙句、「アイスのフレンチアールグレイ」に決めてお姉さんを呼ぶと、

お姉さん、なんと桃の冷たいウェルカムドリンクを持って登場。

(「やばい、アイスが2つになっちゃう。」と思いつつ、思考が追いつかず、そのままアイスティーを注文してしまう。)


ほどなくしてアイスティーとセイボリー(おかず系のこと)が運ばれてきた。

アイスティー、香り高い、、。

私の知っているそこらへんの紅茶とは違う。

(先日フルーツパーラーで飲んだメロンの紅茶とかいうただのメロン味のお湯とは比べ物にならない、、。)


セイボリーがこちら

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ここで、デザートがのったいわゆる「鳥かご」が運ばれてくるのを待って全体写真を撮るのが一般的なんだろうけど、

インスタ映え目的の来店だと思われたくない私と、早く食べたくてしょうがない私の連れ。

なんと先にセイボリーだけ食べ始めてしまう。

(【悲報】)


するとすぐに「鳥かご」が運ばれてきた。

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きらっきら


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全体写真はこんな感じ(若干セイボリーが食べられちゃってるけど)

もうそれはそれは宝石箱のよう。

きらっきらのジュエリーたちが互いの輝きに乱反射しているかのよう。


目を奪われた私は、さっそく食べたいものから食べ始めた。

(〜ここからは1つ1つを食べた順に解説〜)


桃とホワイトコーンのコンポジション


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セイボリー中央のグラスに入っているのは桃のジュレとホワイトコーンムースみたいなもの。

ホワイトコーンの裏ごし大変そう。一点の曇りもないなめらかさ。

上に乗っているレッドペッパーのピリッとした刺激が「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」と言っていた。


桃のパートドフリュイ


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上段のドーナツ型をしたスイーツ。

高いお菓子屋さんにある感じのゼリー菓子っていうのかな。グミって言ったら怒られそう。

わざわざナイフとフォークを使って食べちゃったよ。

(だって気分はお姫様だもんね)


桃のショートケーキ


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上段の青いスプーンに入ったスイーツ。

食べようと思えばレンゲでラーメンをすするかのように食べられるんだろうけど、ここでは死んでもそんな真似はしない。フォークとナイフで食べたもんね。

シロップで煮た感じの桃と甘すぎないバター風味の生クリームが、街のケーキ屋さんには真似できない本気を感じさせる。


若桃のラスクサンド


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細長くて緑色の果実がのったもの。

若桃ってアボカドっぽい見た目とは裏腹にちゃんと甘い。「私、若くても桃なんですよ」って言われた気がする。

粗挽きのブラックペッパーがこれまた良い。

セイボリーのお皿に乗っているのにラスクも甘い。不意打ち。

白いクリームがいいアクセントになっている。(クリームチーズとレモンを混ぜた味だったような、そんな簡単な味ではなかったような。)


白桃のジュレと杏仁のブランマンジェ

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上段のグラスに入ったスイーツ

今回のアフタヌーンティーの中で一番生の桃っぽい桃が入っている。

ラズベリーとかめっちゃ酸っぱい木の実とかが入っていて油断できない。

(油断とは?)


ショコラミント


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下段の薄緑色のチョコレート。

やわらかめなホワイトチョコの甘さの中にミントの一筋の清涼感。でも甘い。

上に乗っているパールのようなアラザンとは、友チョコを量産していた小学生のバレンタイン以来のご対面。市販のアラザンって奥歯で噛み締めなきゃいけないくらい硬かったけど、これはやわらかくて格段においしかった。


ハッピーティーアワー

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クッキーとかタルトとかメレンゲとかが残ってきて、ホットティーが飲みたくなってきた。

4種類の中から私がチョイスしたのはフレンチスパイスが甘く香る「ハッピーティーアワー」という紅茶。

匂いを嗅いだ途端、ノスタルジーに襲われた。

「これは、、、ちっちゃい頃好きだったお菓子量り売りの店「CANDY A GO GO 」の店内の匂い!!!」

あの甘いお店の匂いと完全に一致した。

完全一致すぎて他の表現がまるで出てこない。


黄桃のタルト


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下段真ん中のぷっくりとしたタルト

タルト生地の塩気がほのかなんだけど、ほのかすぎてこっちから話しかけに行きたくなるレベル。

「塩気、おはよう〜!」


桃と生ハムのクレープロール


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トマトが刺さっているやつ

甘いものに舌がやられつつあった私、生ハムの塩気がきつくないと思えたのは初めて。

トマトの酸味も生ハムの塩気もいいアクセントですね。

(さっきからアクセントのことしか言ってない。でもそれがわりとアフタヌーンティーの本質なのでは。)


桃のムラングシャンティ


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上段の桃型のスイーツ

ムラングって、メレンゲのことか、って腑に落ちたのは帰宅後の話。

これ、めっちゃおいしかった。形がまずかわいいんだけど、その上メレンゲがチークでメイクされたみたいにほんのり桃色に色づいているのとか、キュート以外の何物でもない。

それでいてメレンゲがガーリック風味な気がして(気のせいかも)、ちっとも甘ったるくない。


そういえば静岡名物うなぎパイにもガーリックが入っているらしい。


桃と夏野菜のピクルス


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ハートの器

パプリカにキュウリにごぼうに桃に

アフタヌーンティーにピクルスって、、「斬新!!」

と言うには私のアフタヌーンティー経験値が足りていないから、せいぜい「良い!」としか言えないんだけど、

めっちゃ酸っぱくて、

塩気じゃなくて酸味をアクセントとして用いるあたりが他のセイボリーとはまた違うなってところ。

桃のピクルスは桃の甘さのおかげで完璧なおいしさ。でも家じゃもったいなくて絶対こんなことできない。


ピスタチオとハーブのクッキー


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下段の細長いやつ

私の大本命、一番おいしかった!

自分よりも連れが先に食べて、「料理じゃん!」っていう意味不明の食レポをキメてきたから「??」ってなったけど、一口食べてみて言いたいことは伝わった。

これ全然甘くなくて、なんならクッキーがしょっぱくて、ハーブがぐわっと香り立つ。

クッキーにバターがたっぷり使われている感じのところも好み。

ホットティーとの組み合わせがもう女王レベルに最高。

あの瞬間だけはマリーアントワーネットだった。


赤桃のクラフティ


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下段紫のスイーツ

いよいよ最後の1つ。

ココアでできたパリパリの羽っぽいやつがほろ苦い。

苦味という味変もありだなあ。

(アフタヌーンティーで紅茶とかコーヒーを飲むのって苦味があるからなんだろうな。)

「クラフティ」って今ググってみたら、カスタード生地にフルーツを入れたフランス伝統の焼き菓子らしい。

言われてみればフランスの田舎のおやつって感じの味だった。

(明らかにググった後に感じた感想でしかない。)


最後にホットカフェオレを頼む。

苦い。締めに持ってこいの苦さ。


まとめと考察


初アフタヌーンティーを味わってみた感想、

まず、量がジャストすぎる!

これ以上少ないと物足りなさを感じていたし、これ以上多いと苦しくなりながら食べていたと思う。

満腹一歩手前で終えられるこの多幸感よ。バイキングではほぼ不可能なことだ。


そして、アクセント案件が多発しすぎている!(褒め言葉)

アフタヌーンティーの脅威って一番は甘ったるさだと思うんだけど、ここのはちゃんと考えられていて。

タルト生地と生ハムの塩気とか、ラズベリーとピクルスの酸味とか、レッドペッパーの辛味とか、ココアとコーヒーの苦味とか、ミントとかハーブとか、、

ところどころに散りばめられたアクセント要素がいちいち輝くから眩しすぎる。


ああ、、

全てが細かくて、無理にでも一息つきたくなる。

本場イギリス人って普段からこんなことしてるの?してないよね?

その心の余裕の源が知りたいよ、、


ここで発表、このアフタヌーンティーのお値段、クーポン利用で

なんと4500円なんです!

(思ったより高いですか?安いですか?)


最初は正直「高いな。その価値あるの?」と疑っていた。


そもそも「モノの価値」って難しい。

サークルの安くておいしくもない居酒屋で飲み会するときの飲み代が3500円だとしたら、この4500円のアフタヌーンティーは安く感じるけど、

私をこの世で一番満たしてくれるクリスピークリームドーナツが一個150円で買えちゃうと考えると、高く感じる。


「モノの価値」って、結局は「自分にとっての幸せの対価」で、それを絶対的に評価することは不可能だから何かと相対的に評価せざるを得ないはずなんだけど、

そもそも比較対象になっているものだって価値に確かな基準は無いわけだから難しい。

しかもお金を払うとき、私たちはほとんどの場合「前払い」をしている。

(このアフタヌーンティーだって4500円払うことが決定してから食べている。)

つまり私たちは「期待値」に見合うお金を払っている。

そういう意味で「モノの価値」は「自分にとっての幸せの期待値への対価」だと言える。

だから私たちは、「その価値あるのかな?」という問いの答えを知る前からそのモノを買わざるを得ない。


結局「その値段に見合う価値あり!」と言い切れないなら、「その値段に近づける価値の創造」を自らしなければいけないんじゃないかと思う。

(例えばこのアフタヌーンティーだったら、真剣に味わって幸福感を増大させるとか、写真をいっぱい撮ってインスタのいいねを稼いで承認欲求を満たすとか、飲み物を死ぬほど飲んでお得感に浸るとか、価値の高め方は人それぞれ。)


つまり「モノの価値」はもともと決まっているものじゃなくて、自らの力で高めていくものなんじゃないかなって思うし、そう思っていた方が失敗を恐れず気楽に生きていける気がする。


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