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ショートショート集(note創作大賞2023に応募)

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すぐ読み終わる自作ショートショートを掲載。可能なら感想や「スキ」もいただけると幸いです。批判的な感想も歓迎します。
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#小説

巨神の山(SFショートショート)

巨神の山(SFショートショート)

まだ幼かったミノルの記憶に、それはハッキリ焼きつけられた。彼が生まれ育った村から見える山の陰から、白い服を着た巨大な男が現れたのだ。
「ばあば。あれは一体なんじゃ」
 身も凍る戦慄を感じながら、幼な子は祖母に問いかけた。遥かに望む山と同じ大きさの巨大な男が突然視界に現れたのだ。想像を超える事態である。が、それを見たばあばの顔は穏やかで、当然のように、その大いなる存在を受けとめていた。
「あれ

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クールな方程式(SFショートショート)

クールな方程式(SFショートショート)

  あらすじ

 アメリカのSF作家トム・ゴドウィンの短編小説に「冷たい方程式」という作品があります。これに着想を得て「方程式物」と呼ばれるSF作品のバリエーションが数多く書かれてきました。今回私も微力ながら、挑戦しました。
 舞台は未来の宇宙。ぎりぎりの燃料しか乗せていない緊急艇に密航者がいました。この密航者を宇宙空間に遺棄しないと緊急艇は墜落しかねないのですが……。

 ロウは宇宙を突き進む緊

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救い(SFショートショート)

救い(SFショートショート)

 あらすじ
 未来の日本。新興宗教の教祖は、ある女性信者を気にいるが……。

「これが、その花瓶です。こちらの花瓶に水を入れ、花をさして部屋に飾っていただければ、どんな悩みもたちどころに去るでしょう」
 菱田幸男(ひしだ ゆきお)は眼前の若い女性に、箱に入った陶器の花瓶を見せて話した。まだ20代後半ぐらいで、ストレートの長い黒髪に、大粒の宝石のような黒い目をした綺麗な女だ。菱田の好みだった。
「あ

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コロナのあとで(SFショートショート)

コロナのあとで(SFショートショート)

 あらすじ
 2020年に始まったコロナ禍にこりた未来の人類は引きこもりの生活を送るようになっていた。主人公の男性も、女性型の人造人間と一緒に暮らしていたが……。

 2020年に始まったコロナ禍は、人類の方向性を一変させた。新たなワクチンを開発しても別の変異株が生まれるためいつまでたってもコロナ禍は収まらず、人類は室内に引きこもるようになったのだ。
 一方テクノロジーの進歩は、人間を労働から解放

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追われる男(SFショートショート)

追われる男(SFショートショート)

  あらすじ
 「俺」はロボットに追われていた。なぜなら……。

 俺はロボットに追われていた。追ってくるロボットは身長3メートルはある。当然だけど、俺よりもずっと身長が上なのだ。ロボットはラバーコーティングされた手にナイフを持ち息も切らせず、逃げる俺を追ってくる。
 周囲には誰もいない。無人の荒野だ。俺を助けてくれそうな者は、どこにもいない。俺は汗まみれになって、走り続けた。すでに腿はパンパンに

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未知なる文明(SFショートショート)

未知なる文明(SFショートショート)

 あらすじ
 未知の生命体を求めて宇宙を旅するピュルルン星人だったが……。

 私はピュルルン星人だ。未知の知的生命体との接触を求めて、恒星間宇宙船に乗っていた。異星人と交易し、見聞を広めるのが我々の目的だ。
 今回の目的地は眼前に浮かぶ青い惑星だ。惑星は1つしかない恒星の周囲を回っており、内側から数えて3番目にある。
 私の乗るスターシップは現在この惑星の軌道上に浮かんでいた。船の周囲に特殊な粒

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青い惑星(SFショートショート)

青い惑星(SFショートショート)

あらすじ
 宇宙艦隊を率いる「私」は、青い惑星を侵略しようとしていたのだが……。

 私の率いる宇宙艦隊の前方に、青い惑星が浮かんでいた。この星は、恒星に近い側から3番目の惑星だ。
 コバルトブルーの宝石のようなその姿は、私の生まれ育った赤茶けた母星とは何もかもが違っていた。
 すでにこの青い星には以前から秘かにドローンを潜入させ、調査している。
 文明はそれなりに発展しており、都市部には高層

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人件費(SFショートショート)

人件費(SFショートショート)

  あらすじ
 未来の日本。会社の命令で中国勤務を命じられた男。が、現地工場の人権費が上がってしまい……。

 私は会社の命令で、中国勤務を命じられた。日本から中国に移転した工場に行き、現地の従業員を指導する業務についたのだ。
 そこで10年働いたが派遣先の人件費が上がったため、工場は中国より人件費の安いベトナムへの移転が決定し、私もベトナムに赴任した。
 それからさらに10年が経過し、私はベトナ

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