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#小説
巨神の山(SFショートショート)
まだ幼かったミノルの記憶に、それはハッキリ焼きつけられた。彼が生まれ育った村から見える山の陰から、白い服を着た巨大な男が現れたのだ。
「ばあば。あれは一体なんじゃ」
身も凍る戦慄を感じながら、幼な子は祖母に問いかけた。遥かに望む山と同じ大きさの巨大な男が突然視界に現れたのだ。想像を超える事態である。が、それを見たばあばの顔は穏やかで、当然のように、その大いなる存在を受けとめていた。
「あれ
コロナのあとで(SFショートショート)
あらすじ
2020年に始まったコロナ禍にこりた未来の人類は引きこもりの生活を送るようになっていた。主人公の男性も、女性型の人造人間と一緒に暮らしていたが……。
2020年に始まったコロナ禍は、人類の方向性を一変させた。新たなワクチンを開発しても別の変異株が生まれるためいつまでたってもコロナ禍は収まらず、人類は室内に引きこもるようになったのだ。
一方テクノロジーの進歩は、人間を労働から解放
追われる男(SFショートショート)
あらすじ
「俺」はロボットに追われていた。なぜなら……。
俺はロボットに追われていた。追ってくるロボットは身長3メートルはある。当然だけど、俺よりもずっと身長が上なのだ。ロボットはラバーコーティングされた手にナイフを持ち息も切らせず、逃げる俺を追ってくる。
周囲には誰もいない。無人の荒野だ。俺を助けてくれそうな者は、どこにもいない。俺は汗まみれになって、走り続けた。すでに腿はパンパンに
人件費(SFショートショート)
あらすじ
未来の日本。会社の命令で中国勤務を命じられた男。が、現地工場の人権費が上がってしまい……。
私は会社の命令で、中国勤務を命じられた。日本から中国に移転した工場に行き、現地の従業員を指導する業務についたのだ。
そこで10年働いたが派遣先の人件費が上がったため、工場は中国より人件費の安いベトナムへの移転が決定し、私もベトナムに赴任した。
それからさらに10年が経過し、私はベトナ