未知なる文明(SFショートショート)
あらすじ
未知の生命体を求めて宇宙を旅するピュルルン星人だったが……。
私はピュルルン星人だ。未知の知的生命体との接触を求めて、恒星間宇宙船に乗っていた。異星人と交易し、見聞を広めるのが我々の目的だ。
今回の目的地は眼前に浮かぶ青い惑星だ。惑星は1つしかない恒星の周囲を回っており、内側から数えて3番目にある。
私の乗るスターシップは現在この惑星の軌道上に浮かんでいた。船の周囲に特殊な粒子を撒いているのでこの星の、哺乳類から進化した人類のレーダーには映らない。
また光学迷彩を使っているので視覚的にもかれらが船を観る事はできないのだ。
私の指示でこの星に、多数のドローンを飛ばしていた。それらも私の船同様レーダーには映らず、視覚的にも見えないのである。
一方この星の先住民はテレビやラジオの電波を飛ばしており、それらをこの宇宙船でも受信していた。
宇宙船に搭載されたAIには、異星の言語を翻訳する機能がある。そうして得られた情報によれば、この惑星の人類は現在79億人以上いた。かれらは所属する国家や民族によって多様な言語を使用している。
その中でも多くの者が話すイングリッシュという言葉ではこの星をアースと呼び、やはり多数の人が使用する中国語という言語では『地球(ディーチオ)』と名づけ、やはり広く話されるエスパニョールという言葉ではティエラと呼称されていた。
私はかれらと接触し交流するのを心待ちにしていたのだ。やがて様々な情報が入ってくるにつれ、この惑星について様々な状況が判明した。1つは未だにアース人は、戦争を行っているという事だ。
ウクライナ、アフガニスタン、シリア、トルコ、リビア、イエメン、イラク、パレスチナと呼ばれる地域が戦場になっていた。
しかも大量の核兵器を保有している国がいくつもあり、何かの拍子に核戦争になってもおかしくないのだ。またアース星には独裁国も多かった。民主的な投票で指導者を選べず、政治家の悪口を言うと投獄されたり拷問されたりするのである。
建前上では民主国家とされている国でも政府に批判的なニュース番組に与党から圧力がかかったり、政権に懐疑的なジャーナリストが暗殺されたりして、巧妙に言論や報道の自由を奪われているケースもあった。
また他にもテロや凶悪犯罪、人種差別、家庭内暴力、職場や学校でのいじめ、環境破壊……。あまりにも問題が多い種族である。私の落胆に気づいたらしく、副船長のチュルンナが声をかけてきた。
「船長お気持ちはわかりますが、アース人達の美質にも目を向けられてはいかがでしょう? かれらも我々と同じ知的生命体です。きっと分かり合えるはずです」
「いや、奴らは知的生命体などではない」
私はそう断定する。怒りのために自分の顔についた3つの目が、赤く発光するのがわかった。逆にチュルンナの3つの目は、驚きで青く光る。
「頭でっかちなだけの蛮族だ。きゃつらの知性は戦争やテロや暴力を扇動するために使われすぎている。ドローンを全て引き上げさせて、ここから去ろう」
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