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010 誰もが世界を変えることを考えるが、自分を変えることを考える人は誰もいない。【明石さんのスパイ飯大作戦ーモスクワ編
--誰もが世界を変えることを考えるが、自分を変えることを考える人は誰もいない。
と、使い古して二股に分かれたほうきみたいな白髭の男が言った。一見不機嫌そうなもさもさの長い眉の奥の瞳はつぶらで愛嬌がある。にんにくの塊みたいな大きな鼻を持つその人はレフ・トルストイ。彼は小説家で、キエフで神学を学ぶ瀬沼格三郎と文通しているのだと言った。
ニコラ通りに出版人やら小説家が仕事欲しさに集まる料理屋があ
【閑話休題】シドニーライリーの諜報飯
007 旅順より愛をこめて。
シドニーライリー。イギリスの諜報員だ。よく気が触れずにいるものだと思うほど変わり身立ち回りの早い男。数年前まではサンクトペテルブルグの英大使館にいたらしい。卵料理が本当に好きな男で、やつが日本に来たら京都にでも連れて行ってやろう。京都のだし巻きたまごをライリーに食わせたらどんな顔をするだろうか。ともかく、彼の作ったスクランブルエッグは完璧である。
あれは
明石元二郎の諜報飯【短編小説】
000 落花流水
母さんがふかしてくれた芋が好きだった。
兄さんと三人で頭がよくなるようにと天神様のとこに行って、一緒に食べた梅ヶ枝餅がうまかった。
でも、母さんが針仕事で忙しい中、正月に材料かきあつめて作ってくれた雑煮には敵わない。
今はもう母さんはいないけれど、みんなで食べたうまかもんを、僕は一生忘れない。
一九○二年九月某日
パリに来て一年弱が経った。今日の晩飯には何を食