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結び目理論超入門(凝縮系物理に関わる結び目理論)【論文紹介】#21
まず、結び目理論の入門として、ありそうな誤解を一つ解いておく(私がしばらく誤解していたことだが)。
結び目理論は、3次元空間中の結び目そのものを扱うのではない。結び目を2次元平面に描いた結び目図式とそれに対する操作のみを扱う(下図A)。一旦2次元に落とすために、やや回りくどいことをやっているようにも見えるが、2次元に落とすおかげで扱いやすくなっているという恩恵は大きい。
本記事では、結び目不変量(
群衆力学(Pedestrian dynamics)から見るヒトの形(ヒトは球とみなしてよいか?)【論文紹介】#19
人混みの振る舞いを大規模に調査するため、オランダで5番目に大きい駅であるアイントホーフェン(Eindhoven)中央駅の3,4番乗り場の階段とエスカレータの部分に次のような観測装置を置いた。
一日の利用者は約46,000人である(パンデミック前は約77,000人だったそうだが)。この装置によって2021年4月から2022年5月まで約1年間のデータを取り、従来の研究より3桁も多くの群衆の動きのデー
「これはスモウ」「スモウってこれか」言語集団におけるラベル付けの発生【論文紹介】#18
話し手(Speaker)側の画面に3つの図形が表示され、そのうち一つがランダムに選ばれて黒枠を付けられる(下図a)。顔の見えないところにいる聞き手(Hearer)にも同じ3つの図形が見えていて、どれか1つを選択できるようになっている(下図b)。その聞き手に同じ図形を選んでくれるように、話し手は黒枠で選ばれている図形の特徴をアルファベット6文字以内で伝える。並び順はランダムに変えられているため、左、
もっとみるあつまれブリッスルボットの平原(協調運動の発生起源)【論文紹介】#17
日本語資料がないのが不思議なほどだが、ブリッスルボット(bristlebot)というものすごくシンプルな仕組みで自走するロボットがある。
歯ブラシのブラシ部分だけを切り取って、スマホのバイブパーツと電池を付けただけのもので、ブラシの毛を足として振動によって前進する。あと、全く必要ないが目を付けてかわいくしてある(←重要!)。
今週紹介する論文はこちら。
A Mechanical Origin o
球の衝突と密度変化だけから起こる相転移(牛を球とみなして何が嬉しいのか)【論文紹介】#15
例えば、ペットボトルに小石を入れて振る。
この中で起こる現象をよく見ると実は未解明の現象がある。
パラメータとして、小石の数・大きさ、振る振幅・振動数を変えると、小石のほとんどがペットボトルの振動と同期して振動する状態と、同期せずばらばらの振動数でぶつかり合う状態があり、パラメータ空間中での状態の遷移が非常に普遍的な相転移を示すのである。
今週紹介する論文はこちら。
Interplay betw
カオス発見の第一報を読む【論文紹介】#12
前略(あけおめ)
新年っぽいネタということで、初モノで初心に還るという意味も込めて古典的名論文の紹介をしてみたい。
Edward N Lorenz著
Deterministic nonperiodic flow
決定論的で非周期な流れ
Lorenz63.pdf (bu.edu)
”カオス(chaos)”とは論文には書いてないが、現在カオスと呼ばれる概念を最初に科学的に記述し、その美しく深遠な数