対流圏という乱流の花園【時候コラム】#3

地面が太陽に照らされる。
地表付近の水蒸気の多い空気が暖められて上昇し、積雲が湧きたつ。
水蒸気を含む空気が露点高度より高くまで断熱膨張することで乱流が可視化されている。
なんと美しい光景だろう。

現代の気象予報技術では、数十km程度の解像度の一定範囲で積雲が湧きたちそうだということは予想できる(天気予報で「大気の状態が不安定になる」というのがそれ)。しかし、積雲1個1個の発生位置や形や規模は全く予測不能で、せいぜい1時間くらい前にわかるのが関の山だ。

地球が太陽に照らされる。
赤道付近はほぼ垂直に日差しが当たるが高緯度は斜めにしか当たらない。
その差によって低緯度と高緯度で温度差はでき、そのせめぎあいが温帯低気圧となって次々と日本付近を通過している。
なんと美しい光景だろう。

現代の気象学の知見では、大陸の東側の緯度35度付近なら年間数十個の温帯低気圧が通過するだろうというのはわかる。しかし、1年間でどこに温帯低気圧が来るか(1号が○月○日、2号が○月○日……とかの年間スケジュール)は全くわからない、せいぜい1週間くらい前にわかるのが関の山だ。

地球は水に覆われた天体、それだけでない、水が気体にも液体にも固体にもなる、絶妙な温度と厚さの大気に覆われている。そのおかげで美しい乱流の展開があちこちで繰り広げられ、しかもそれが、空中で凝結する水(雲)によって可視化されている。そして人類はまだその振る舞いを全然理解できていない。空を見上げる、それだけで宇宙の神秘に気付かされるような乱流の花園に囲まれて生きている。

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