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【掌編】遅れてきたバス
「くそっ、十分前かよ!」と、私は毒づいた。
バスの話だ。ほんの十分の差で、最終バスに間に合わなかった。
そこは陸の孤島めいた高台の住宅街で、時刻を考えると、タクシーは簡単には捕まりそうもない。だめもとで愛用の配車アプリを開くと、到着まで三十分という表示が出た。
三十分もここで無為に待つくらいなら、駅まで歩くか。コロナ禍で運動不足が極まっているし、ちょうどいい機会だ。
そう腹を決めて駅の方向
【掌編】穴があったら入りたい
またやってしまった。しくじった。
穴があったら入りたい。
そしたら目の前にあった。穴が。岩壁にぽっかりと。これぞ渡りに船。とりあえず入ってみる。もぞもぞ。
うなぎの寝床のような穴のなかを這い進んでいく。闇が深い。手探りで辺りに触れてみる。ごつ。岩だ。ちょっとひんやりする。
そうだ、ライト。
私はあまりの穿き心地のよさに同じものを三つ買ってローテしている、寝巻き代わりのジャージのポケットに