【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】不眠症と東洋医学
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
読者のみなさまはいつ、どのくらい眠っていますか?
多くの方が毎晩眠っているはずです。
睡眠時間は人によって差があると思いますが、だいたい1日6~10時間くらいではないでしょうか。
睡眠がなぜ必要で、どのような効果があるのかは、本当の意味ではまだ完全に解明されていないそうですが、睡眠によって体力を回復したり、健康を維持したり、また、仕事や勉強の作業効率が回復することを実感していると思います。
逆に睡眠不足や眠りの浅い状況が続くと、疲れがたまったり、日中に眠気を感じるようになりますよね。
特に夏は夜間の気温が下がらず寝不足になりがちですので、日中の不調を訴える方も増えてきますが、なかには季節を問わず不眠が続いて悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。
そこで、今回は睡眠不足の原因となる「不眠症」について、その症状や原因、治療方法、食養生について、西洋医学・東洋医学の両面からみていくことにしましょう。
では、どうぞ最後までお付き合いください。
1.「不眠症」とは
「不眠症」とは、寝つきが悪かったり、深い眠りにつけずに睡眠の途中で何度も目が覚めてしまったり、朝早く目が覚めたり、あるいは、睡眠の質が悪くて寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする.ことが原因となり日中にさまざまな心身の不調が現れる状態のことをいいます。
ただ眠れない、睡眠時間が少ないというだけでなく、日中に不調が出現することが問題となります。
「不眠症」と診断されなくても睡眠不足を訴える方は多く、不眠はとても身近な問題であるといえます。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を有しており、特に女性に多いと報告されています。
実際のところ、普段の睡眠は問題ないが、「心配事があるとき」や「大事な行事の前日」などに眠ろうとしても眠れななかったという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
このような明らかな原因がある不眠の場合には、しばらく経つと自然に改善してまた眠れるようになります。
眠りが浅くても日常生活に支障がない場合には、睡眠時間の短さや夜間の目覚めの回数を気にしすぎないことが大切です。
一方で、不眠が一向に改善せず、長期間にわたって続いてしまう場合があります。
不眠が長く続くために眠ろうと努力すると、かえって緊張や不安が高まり逆に眠れなくなってしまうこともあります。
さらに、睡眠不足から日中に眠気が高まり生活の質が低下するだけでなく、昼間の眠気によって夜に寝られないという悪循環に陥いると、回復には適切な治療が必要となります。
医療機関では、不眠と日中の不調が週に3日以上あって、それが3ヶ月以上続く場合に『慢性不眠症』と診断されるようです。
また、慢性的な不眠の中には睡眠障害を引き起こす病気が隠れている場合もありますので、長期に渡って不眠に関する悩みをお持ちの方で、不眠への対処を試みても効果が出ないという方は、一度、医療機関に相談してみるのもよいでしょう。
2.「不眠症」の原因
「不眠症」には、それ自体が単独で起きる場合と他の心身の疾患に伴って起きる場合があり、代表的な原因としては以下のようなものがあります。
①生活習慣:
夜更かしや休日の朝寝坊のように生活のリズムが乱れると、心身に悪影響を与えます。
その結果、j自律神経が乱れ、体内時計が狂い、睡眠にも影響が現れます。
また、睡眠時の環境(周囲の音、明るさ、温度など)も不眠の原因となります。
ベッドに横になってからスマホやタブレットを見ると、画面の明るさで脳が昼間と錯覚するために眠れなくなってしまいますので注意しましょう。
②精神的ストレス:
不安や心配事、楽しみに対する強い興奮などは眠りを妨げます。
特に、性格的に繊細でストレスを感じやすく不眠にこだわりやすい方は、不眠の悪循環を招きやすいことから注意が必要です。
③身体の状態:
病気や怪我によって痛みやかゆみ、せきなどの症状があるために寝付けなくなることがあります。
睡眠障害の原因となる代表的な疾患である睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中の呼吸異常によって十分な睡眠を得ることができなくなります。
また、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)では、下肢に不快感を感じて寝付けなかったり眠りが浅くなったりします。
④飲食物の影響や薬の副作用:
コーヒーやお茶に含まれるカフェイン、たばこに含まれるニコチンなどは眠気を覚ます作用があります。
アルコールも睡眠を妨げます。お酒を飲むと眠気を催すこともありますが、睡眠の質が低下して途中で目が覚めたりするため、結果的には悪影響を及ぼしています。
また、病院で処方される薬や市販薬が不眠の原因となることもあります。
⑤精神的な病気:
神経症やうつ病などの精神的な病気では睡眠障害を併発することが多く、うつ病では77~90%に不眠症状が現れるという報告もある一方、過眠傾向を示すこともあります。
3.西洋医学における治療
「不眠症」で医療機関を受診すると、問診のほかには、睡眠の質・呼吸の問題・睡眠中の異常行動などを評価する終夜睡眠ポリグラフ検査、日中の眠気を測定する睡眠潜時反復検査、などの検査が必要に応じて行われます。
また、治療法としては、薬物療法や非薬物療法があります。
睡眠薬による治療は広く行われていて、脳の活動を抑制する働きを促す薬や自然な眠気を強くする薬などが使われています。
睡眠薬は、睡眠習慣や対処法の見直しを行った後に、短期的・補助的に用いられることが望ましいと考えられており、主治医の判断に従って、決められた使用法・使用量を守って使用を継続する必要があります。
また、睡眠薬以外にも必要に応じて抗うつ薬などが処方されることもあります。
非薬物療法として、生活習慣や睡眠環境に対する指導が行われることもあります。
4.鍼灸におけるアプローチ
「不眠症は鍼灸による治療が可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、不眠症も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
鍼灸による不眠症の治し方は「症状が起こっている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、不眠症状を取り除くとともに、不眠を再度おこさないような身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「ストレス・体質・食事・疲労等、何らかの原因で、精神的に安定しない状態(=心神が不安定な状態)になることにより、不眠の症状はひきおこされる」と考えて、治療にあたります。
なお、鍼灸の施術をする前には、問診で詳細に話をお聞きします。
その際、不眠はいつから始まったのか、不眠が始まった頃に何か特別な出来事はなかったか、精神的なストレスにさらされていなかったか、不眠以外の体調面はどうだったか等、不眠の症状について自分なりに記録をしておくと、診断の参考となります。
また、月経の変化に伴って不眠が悪化するケースの場合には、月経の状態(月経周期、月経量、月経の色、血塊の有無、月経痛の有無、その他月経に伴う不定愁訴)を記録しておくのもよいでしょう。
5.東洋医学における原因分類と治療方針
東洋医学的にみる、不眠の原因は、次のように分類されます。
5-1.肝鬱化火(かんうつかか)
精神的ストレス(過度の憂鬱状態、考えすぎ、我慢、怒りなど)により、心身が緊張した状態が続くと、体内の気血の巡りが停滞し、身体の中が熱くなりなり、熱を帯びやすくなります。
この体内の熱により心神(=心・精神)が安定しない状態となることから、不眠症の症状をひきおこします。
このタイプの場合、身体は熱傾向になりやすいことから、口渴・食欲不振・イライラ・口苦・目の充血などの症状を伴いやすくなります。
治療方針は、疎肝瀉熱(そかんしゃねつ)といい、身体の気血の巡りを良くして、過剰な熱を身体の外へ出すようにします。
5-2.痰熱内擾(たんねつないじょう)
食べすぎ、飲みすぎ、油っこいもの、辛いもの、アルコールの過剰摂取など、食事の不摂生は消化吸収の負担となり、身体のなかに未消化物を停滞させやすくなります。
この未消化物が身体の中に滞ると、痰熱(湿痰と熱が結びついたもの)と呼ぶ体内老廃物がつくられやすくなり、それがちょうど身体の真ん中あたり(臍の上、腹部のあたり)を塞いでしまうことから、上半身のほうへ気血が上手く巡らなくなり、心神(=心・精神)が安定せず、不眠症をひきおこします。
このタイプの場合、痰が多く、胸苦しい、頭重感、食欲不振、げっぷ、胃酸の上逆、悪心、心煩、口苦、めまいなどの症状を伴いやすくなります。
治療方針は、化痰精熱(けたんせいねつ)といい、身体の中の痰を取り除き、過剰な熱を身体の外へ出すようにします。
5-3.陰虚火旺(いんきょかおう)
虚弱体質や長患いをした後は、身体を濡養・潤わせる・沈静化させる、これらの作用が低下しがちになります。
それにより、相対的に身体の中が熱くなりやすく、熱を帯びやすくなることから心神(=心・精神)が昂った状態となり、不眠症の症状をひきおこします。
このタイプの場合、頭が空虚な感じがする、腰や膝がだるく力が入らない、疲労感がある、忘れっぽい、めまい、耳鳴り、目のかすみ、無気力感などの症状を伴いやすくなります。
治療方針は、滋陰降火(じいんこうか)・養心安神(ようじんあんしん)といい、身体の潤いを補って熱を冷まし、心身の昂りを沈静化するようにします。
5-4.心脾両虚(しんぴりょうきょ)
心配し過ぎ、考え込み過ぎ、思い悩み過ぎなどが行為が長期間に渡ると、東洋医学では心血を暗耗するといいます。
これはいいかえると、過度な精神的ストレス状態は心神(=心・精神)を安定させるための営養(=血)不足の状態をまねく、ということです。
また、胃腸が弱かったり、消化吸収能力が低下した場合には、身体の中で栄養(=血)を十分に作り出すことができず、心神(=心・精神)を安定させるための営養が足りなくなります。
上記の結果、心神(=心・精神)が安定しなくなることから、不眠症の症状がひきおこされます。
このタイプの場合、多夢、動悸、健忘、めまい、四肢がだるい、顔色が悪い、食欲がない、などの症状を伴いやすくなります。
治療方針は、補陽心脾(ほようしんぴ)といい、血を養い、胃腸の働きを回復させて、精神的に安定した状態にするようにします。
5-5.心胆気虚(しんたんききょ)
もともと虚弱体質であり身体が弱く、精神的にも不安定になりがちな場合、常日頃からびくびくしやすかったり驚きやすかったりします。
また、体質的な問題はなくても、激しく驚かされて緊張が続いたり、いつもびくびくして何かに怯えているような状態が長期にわたり続いたりすると、精神的な安定さを欠いた状態が癖となってしまい、常に精神的に安定しにくい状態を作り出してしまいます。
上記の結果、心神(=心・精神)が安定しなくなることから、不眠症の症状がひきおこされます。
このタイプの場合、多夢、驚きやすい、びくびくして動悸がある、息切れ、倦怠感がある、などの症状を伴いやすくなります。
治療方針は、益気鎮驚(えききちんきょう)といい、身体機能の弱りを回復するとともに不安感を解消するようにします。
6.一般的な「不眠」への対処法
ここで、不眠を改善するために役立つ、一般的な対処法をご紹介します。
①規則正しい生活リズムを心がける
不眠を改善するには体内時計を整えることが重要です。できる限り平日・休日にかかわらず同じ時刻に起床し、就寝するように心がけましょう。
②太陽の光を浴びる
特に朝、陽の光を浴びると体内時計がリセットされ、約14~16時間後には眠気を誘発するメラトニンが分泌されるため、自然と眠りにつきやすくなります。まずは朝、起きたらすぐカーテンを開けるようにしましょう。
③適度の運動を心がける
からだがほどよく疲れている時は心地よく眠ることができます。ストレッチやウォーキング、軽いランニングなどを生活習慣として取り入れてみましょう。仕事や学校などで平日の運動が難しい場合は、休日に積極的にからだを動かすだけでも不眠の解消を期待できます。ただし、激しい運動は興奮によって寝つきが悪くなり逆効果です。
④寝る前にはリラックスする
心地よい眠りにつくためには、寝る1~2時間前から脳をリラックスさせることが大切です。ぬるめのお風呂に入ったり、好きな音楽や読書などで心身の緊張をほぐすと眠りやすくなります。また、軽いストレッチや呼吸法を行ったり、心地よく感じるアロマの香りで部屋を満たすのもよいでしょう。
⑤寝室の環境
「枕がかわると寝られない」という人もいるように、就寝時の環境は大切です。ベッドや布団、枕などは自分に合ったものを選びましょう。照明の明るさや室温、湿度にも注意が必要です。
慢性的な不眠に対しては、「今夜もまた眠れないのでは?」とか、「眠れないけれど早く眠らないといけない」と不安が高まって逆に目が冴えてしまうこともあります。そんな時は考えすぎないように、少し割り切って、「どうせいつかは眠くなるだろう」くらいに思っていた方がいいかもしれません。
最近では、ドラッグストアで購入できる市販の睡眠改善薬もありますが、あくまでも一時的な不眠症状に対する使用に限られていますし、耐性ができてしまい効かなくなってしまうということもありますので、医師、薬剤師、鍼灸師などの専門家に相談をしましょう。
7.不眠のための東洋医学的食養生
東洋医学からみた不眠に効果のある食材をいくつかご紹介します。
①たまねぎ
【性質と味】辛(生)・甘(加熱)、温性
【関連する臓腑経絡】肺・大腸・胃経
【東洋医学的効能】
●温中理気(うんちゅうりき):胃腸を温め、気の巡りを改善する
●通陽(つうよう):気を巡らせ、からだをあたためる
からだを温めるとともに気の巡りをよくし、気の滞りによって起こるイライラ感や不安を鎮める作用があります。
生食では辛み成分によってからだに熱がこもりやすいので、食べ過ぎには注意が必要です。
食用以外で昔から伝わる家庭療法では、たまねぎの輪切りを枕元に置くと寝つきが良くなると言われています。
②セロリ
【性質と味】甘・辛・微苦、涼性
【関連する臓腑経絡】肝・胃・肺経
【東洋医学的効能】
●平肝清熱(へいかんせいねつ):肝にこもった余分な熱を収め、機能を正常に回復する
●祛風利湿(きょふうりしつ):からだの余分な水分を除くなどの作用で、からだの重い症状を解消する
気を降ろす効果があり、イライラや不安を鎮める作用が期待できます。
また、栄養学的にも、特に葉の部分にストレスを解消する成分やビタミン、ミネラルが多く含まれることがわかっています。また、独特の香りにも精神安定や疲労回復に効果のある成分が含まれています。
③豚肉
【性質と味】甘・䶢、微寒性
【関連する臓腑経絡】脾・胃・腎経
【東洋医学的効能】
●滋陰潤燥(じいんじゅんそう):身体に潤いを与え、臓腑の水分を補う
●補血(ほけつ):血を補い、血虚を改善する
疲労や精神的ストレスからの回復を助けます。また、血を補う作用もあります。不眠の原因となっている心・肝・脾のバランスを整える効果があり、不眠解消を期待できます。
玉ねぎ、セロリ、豚肉は手に入りやすい食材ですので、炒め物やスープなど工夫して食事に取り入れるとよいでしょう。
ただし、夕食の食べ過ぎは胃に負担がかかり不眠の原因となります。
夕飯は食材をやわらかめに調理し、少し物足りないくらいでとどめておくと、その晩の眠りが得られやすくなります。
8.まとめ
今回は「不眠症」について、原因や対処法、予防方法について解説をしました。
なお、「不眠」はWHO(世界保健機構)においても鍼灸治療が 適応可能であるとされている疾患のひとつとなっていますので、西洋医学の治療を試してみてもなかなか症状が改善していかない場合には、鍼灸治療をぜひ一度試してみるのもよいでしょう。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
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参考資料:MSDマニュアル家庭版WEBページ、厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト、東方栄養新書、食材効能大事典、東洋医学の教科書
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