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淡園 織葉
2024年7月30日 05:25
どこか、遠くて近くて仄暗い場所に僕はいた。どうやらここでは、文字通りすべてが、文字になる前のすべてが、規則正しく生活していた。「例えば、あそこを見てみな」 ここに来て最初に出会った男。ふらふらと寄る辺なく立つ、湯気みたいな男が口を開く。彼が指差した方向に目を凝らすと、そこにはゆらぎがあった。本当に、ゆらぎという他ない、輪郭のぼやけた何かが中空を飛翔していた。泳ぐように、跳ねるように、全てから
2024年7月30日 04:17
嵐が来るよ、と君は眉尻を下げながら言う。それはそれとして、行かなければならない用事があったから、僕は制止を振り切って外へ出た。昨夜から降り続く雨は尚も地表を濡らし、もうこのまま乾くことなどないように思えた。そんなことはないと知っているから、それが悲しくて、傘を差さずに歩くことにした。 目的地は近くの小さな漁港。漁に出る船もなく、静かに水面を打つ雨の音が寂しく響く。開けた緑地の真ん中にぽつりと