見出し画像

タイサル!第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」

昨日、ようやくワクチン2回目の接種を終えた豊田です。

タイは当初の予定を半月ズラして10月中旬から外国人の受け入れを開始する方向で動き出していますね。ようやく待ちに待った調査再開の時が...と期待はするのですが、問題がもう一つ。日本の外務省が指定する感染症危険レベルが「3」のままでは、調査に行けないということです。正確に言うと「研究業務として海外出張が許可されない」です。なので、せっかくタイが国境を開けてくれても、感染症危険レベルが2に下がらないと、渡航できません。休暇を利用し私費で調査に行くならなんとかなるのですが、科研費等は使えないので、私のお財布が死にます。

まぁいつものことなので一応貯金も貯めつつ準備はしているのですが、どうなることやら...悶々とする日々です。一日も早く、タイに行けるようになってほしいものです。

さて、タイトルから既にやばい雰囲気を醸し出している今週のタイサルですが...


【!注意!】
今週のタイサルは虫注意報が発令されています。

虫が嫌いな方は、ご注意ください。


虫の写真は見たくないけど、お話は読みたい!という方は、以下を御覧ください。
虫の集合体が苦手なはなさわさんが、私の写真を見て「ひいっ」と言いながら、頑張ってイラスト化してくださった力作です!すべての虫写真がイラストに変換されておりますので、マイルドになっています!
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3ef0950ca348


調査基地にやってくる虫たち

私の調査部屋がある建物は、保護区エリア内、裏手はもう山という、自然の中に建っています。新しい建物ではないため、一応窓もドアもあるもののあちこち隙間だらけ、ひび割れだらけ。おまけに、エアコンという文明の利器もないため、建物に籠もった熱気を排気するため窓という窓は常に全開。部屋の中は外と大差ありません。

というわけで、特に夜は灯りにつられてたくさんの虫たちがやってきます。

画像1

気がついたら部屋の外壁がアリたちに占領されていたり...

画像3

森林棲のゴキブリがやってきたり...

画像4

ナナフシが飛んできたり...

画像5

季節によってはホタルが迷い込んでくることも。

画像6

こんな玉虫色のコメツキムシまでやってきます。


細かい虫もたくさん飛んでくるため、コップには蓋が必須です。

画像6

机の上も気がつけばこの有り様。そして、この小さな虫を狙って、机の横やPCモニターの裏など、あらゆる場所にヤモリたちが陣取っています。

虫が苦手な人は私の調査地では生活できないと思います。虫は排除するものではなく、もはや部屋の中で共存すべき存在です。

これらの虫は、特に気にしなければなんてことありません。たまに刺す虫がいたりするので厄介ですが、基本は無視するか、気づいたらホウキでサッサッと外に掃き出せばおしまいです。

ところが、雨季にやってくるある虫だけは、対処法が異なります。



雨季恒例の大量襲来

ある虫とは、これです。

画像8

羽化したシロアリです。タイ語ではแมลงเม่า(マレーンマオ)といいます。

彼らはシロアリですが、家の軒下などに巣を作っているわけではなく、だいたい森の中に住んでいます。土がモコモコと盛り上がった塚の中にいます。

そして季節の変わり目、特に雨季の初めの頃の、夕方にザーーっと土砂降りになった日の夜、一斉に羽化して巣から飛んでいきます。

とにかく、ものすごい数の羽アリが発生します。そして外灯という外灯に群がります。羽は次々と取れて、地面にはまるまる太ったシロアリたちがひしめき蠢いています。虫嫌いな人にとっては、これ以上ない地獄です。

タイの田舎、周りに民家もない森の中にポツンとある我が調査基地。

森の中からシロアリが一斉に羽化したら、飛翔先は...そう、我が部屋です!

画像17


気づいたときには手遅れ

たとえこのシロアリたちが羽化して飛んできたとしても、音がするわけではありません。彼らは何の前触れもなくやってきます。部屋の明かりが無数の羽アリを引きつけ、気がついた時にはもう手遅れなのです。

最初に書いたとおり、普段は窓をあけっぱなしの我が調査部屋。

なんか電気がチラチラするな...と思った時にはもう...


画像7

部屋はあっという間にシロアリたちに占領されてしまいます。


コップやお皿、棚の隙間、かばんや掛けてある服の隙間、おまけにシャワー用のお水を溜めてあるタンクまで、あたり一面がシロアリで埋め尽くされます。

画像18

こうなった時の対処法は唯一つ。

玄関のドア以外の窓を閉め、部屋の電気をすべて消し、外の玄関先の灯りだけにします。

そうするとみんなそっちにつられて部屋から出ていくので、タイミングを見てドアを締めます。そして隙間を養生テープでカバーします。

部屋のあちこちでウネウネしている羽の取れたシロアリたちは、ホウキでさっさっと掃いてご退出いただきます。シャワー用の水タンクの水面に浮かぶシロアリを掃除したら、おしまいです。

その日の晩は、熱のこもった風通しの悪い部屋の中で、汗をダラダラかきながら寝ることになります。


翌朝のサルたち

サルたちは、どうやらシロアリが一斉羽化したことを察知するようです。

羽化があった翌日は、朝イチから真っ先に外灯周辺に集まり、地面でうごめいているシロアリたちをどんどん食べます。

とにかくすごい数のシロアリが発生するので、サルたちも手で掬うようにしてシロアリを頬張ります。

画像9

若干閲覧注意気味の現場なので、写真はマイルドなものを選んでいます。

とにかく美味しそうに、我先にと頬張ります。

まだ羽が残っているシロアリたちが飛び回り、捕まったものは次々と食べられ...

辺りはあっという間にきれいさっぱり、シロアリは食べつくされ、大量の羽だけが残されます。

部屋の中が一瞬で大惨事になる大規模な一斉羽化に出会ったのは1度だけですが、その後何度も遭遇した小規模な一斉羽化の翌日も、サルたちは決まって外灯付近にやってきて、シロアリを美味しそうに食べるのでした。きっと季節限定の貴重なタンパク源なんですね。


タイの昆虫食文化

画像19

サルたちのシロアリ食で思い出すのは、タイの屋台で売られている虫の素揚げです。

画像10

日本ではゲテモノ食いの印象がある昆虫食ですが、タイでは普通に昆虫の素揚げが売られています。セブンイレブンでもお菓子コーナーにコオロギやカイコの素揚げスナックが売られています。

画像11

山盛りカイコ。コレをつまみに頬張りながらビールを飲む様子は、サルたちが嬉しそうにシロアリを掬いながら頬張る様子に似ています。

画像12

山盛りコオロギ。これくらいのサイズだとサクッとしていて、まぁ食べられなくはないです。

画像13

サソリの串焼き。これはペットとして「アジアンフォレストスコーピオン」の流通名で知られるチャグロサソリだと思います。調査地にいる小さめのヤバいサソリではありません。

画像14

タガメ。オスは潰すといい香りがするそうで、調味料に使われるそう。重量あたりの単価は他の虫と比べて結構お高い。

個人的に、タガメといえばゲンゴロウと並ぶ憧れの水生昆虫。飼いたいと思いつつ、なかなかお目にかかれないレア昆虫でもあります。タイの屋台でタガメを売っているお店を見つけては「死んでないタガメはありますか?」と聞いて回るんですが、お店の人に変な目で見られ苦笑いされるばかり。どうやら養殖場から出荷される時点で冷凍されてしまう模様...悔しい...

画像15

日本では見たことないようなデカいコオロギ。これくらいデカいと、素揚げにされていてもムニュッとしか食感が残るので、食べるには勇気がいります。




画像16

うーん、こうして見ると、このベニガオさん、路上で昆虫スナックを売っているようにも、見えなくもないような気が、しないでもないような...?


というわけで、最初に虫注意報を発令したため、エイヤッと勢いでまとめて虫ネタ関連で昆虫食の話題を放出してしまった今週のタイサル。

実は他にも虫警報が必要なレベルのヤバめの虫のお話があるので、懲りずに次回も立て続けに「調査地で出会った憧れの奇蟲スペシャル」とかやりたいのですが、ちょっと自重します。虫が嫌いな人にとって、立て続けに虫の話を配信されたら即ブロックされてしまいそうです。なので、しばらく間を空けます。


次回は、私が調査地で買った一番大きな、そして一番高価な家電、冷蔵庫のお話です!

***********

タイサル!シリーズ過去の配信アーカイブはこちらから↓

連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n28a1dc0c9402
第1話「海外調査の生活拠点」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n985accf6fef3
第2話「調査地で楽しむタイ料理!食事編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5444528ab0bb
第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nf5bcd9a17bc1
第4話「シャワーも命がけ!?お水事情その②」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7c4f68bf12d1
第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n56d26d529251
第6話「泥水との激戦を終えて」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n375ca4ab7be2
第7話「調査生活のオトモ!タイの犬たち」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n7968f75aea75
第8話「その日のことはその日のうちに!調査の1日のルーティンワーク」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfdac8fac1ec6
第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n4fef7eb2e320
第10話「写真へのこだわり」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na4da37e13e8d
第11話「誰だ誰だかわからない!個体識別の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1648bde20bab
第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n24c3478ea661
第13話「サルたちの名前の付け方の話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nb6a8e6119ced
第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n9a7a6814730d
第15話「タンブン行為で私が心配していること」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nd1360f5568af
第16話「タイ生活の必需品、プラクルアンとは?」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n6bcc5b875bb5

タイ南北調査特集はこちらから↓
第17話「南北調査シリーズ開始&YouTubeチャンネル開設のお知らせ」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ncab1c13b6bf9
第18話「南部調査その①:Puckerを拝みに...キタブタオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n5d3df0969439
第19話「南部調査その②:白いメガネが印象的!ダスキールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/na32091a5b055
第20話「南部調査その③:見慣れたサルのはずなのに...ベニガオザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n3488e5942c1a
第21話「南部調査その④:アナタどこにでもいるわね!カニクイザル編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n219720155be3
第22話「北部調査その①:黄金の赤ちゃんを求めて〜ファイヤールトン編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ndeb079c8825c
第23話「北部調査その②:ガイコツの隣でうんち拾い...アッサムモンキー編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/naf23f701a677
第24話「南北調査おまけ:噂のココナッツモンキーを求めて−モンキースクール編」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/nfb50e551aa1a

第25話から調査地シリーズに戻ります↓
第25話「年に一度の風物詩!コウモリ集団飛翔の撮影秘話」
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n0b4911b372e2

番外編の過去の配信アーカイブはこちらから↓
私論:「ココナッツモンキー」は動物虐待なのか?
https://note.com/arctoidestoyoda/n/ne6add28fc064
遺跡の街ロッブリーに住むカニクイザルの歴史
https://note.com/arctoidestoyoda/n/n1679cb4029b2

***********
個人ホームページを開設しました。こちらからどうぞ。
Twitterはこちらです。ベニガオザルのみならず、これまで撮影してきたサルたちの写真を載せています。

イラストレーターのはなさわさんのサイトはこちらです。
こちらもあわせて御覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?