見出し画像

アメリカン・ポップス・クロニクル Sunshine Pop

The Association

彼らは67年のモンタレー・ポップ・フェスティバルで、オープニング・アクトを務めていました。結成は1964年、元々は13人のフォークロックバンドThe Menが母体で、LAのナイトクラブのトルバドールのハウスバンドでしたが、そこから6人が残って作ったグループがアソシエーションでした。デビュー曲から2曲はパッとしませんでしたが、プロデューサーにカート・ベッチャーを迎えた3枚目のシングル"Along Comes Mary"は全米7位とヒットして、続くシングル"Cherish"は見事に全米1位を獲得しました。彼らはカート・ベッチャーをメンバーに誘いましたが断られ、次のプロデューサーにMFQのジェリー・イエスターを、さらにはボーンズ・ハウを迎えて、67年"Windy"で再びNo.1を獲得しました。68年のアルバム『Birthday』は当時流行りのトータル・アルバムで、彼らのコーラス・ワークも素晴らしく、グループとしてのピークに達しています。

Harpers Bizarre

1963年、カリフォルニア州サンタクルーズで、テッド・テンプルマンを中心に4人のバンドのティキスを結成して、65年Autumn Recordsと契約して、シングルを2枚リリースしましたが、この2枚はヒットに至りませんでした。67年、Warner Bros. Recordsに移籍、新しいグループ名をハーパース・ビザールとして、レニー・ワロンカーがプロデュースに当たり、デビュー・シングルはサイモン&ガーファンクルのカバー曲で、"The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)"をリリースしました。アレンジはレオン・ラッセルで、彼がピアノを弾き、グレン・キャンベル、キャロル・ケイ、ジム・ゴードンといったメンバーがバックを務めたこの曲は、全米13位のヒットになりました。次のシングル"Come To The Sunshine"はヴァン・ダイク・パークスの作で、ベリー・ポトキンJrがアレンジを担当して、アルバム『Feelin' Groovy』の1曲目に置かれ、サンシャインポップを飾るに相応しい名曲に仕上がっています。

The Yellow Balloon

このイエロー・バルーンはゲイリー・ゼクリーのプロジェクトで、67年これが唯一のアルバムです。ゲイリー・ゼクリーは1943年の生まれで、ロスアンゼルスで育ちました。中高生の頃にジャン・ベリーとディーン・トーレンスに出会い、後にジャン&ディーンのバッキングを担当したヴィック・ディアズにギターコードを教わって、音楽界に興味を持ち始めました。64年、ディーン・トーレンスの初プロデュースで、彼はシングル・デビューしました。

この頃の西海岸のポップ・ミュージシャン同様に、彼もフィル・スペクターやブライアン・ウィルソンに深く傾倒していて、彼の作る楽曲も彼らに影響された作風で、ダンヒル傘下の音楽出版社に勤めて、ジェリー・リオペルと組んで曲を提供していました。彼はディック&ディー・ディーのディック・セント・ジョンと共作することも多くなり、66年暮れには"Yellow Balloon"を書き上げていました。この曲を聴いたディーン・トーレンスは、ジャン&ディーンの曲としてリリースしようと録音、それに納得いかないゲイリー・ゼクリーは、カンタベリー・レコードと契約して、67年2月にイエロー・バルーン名義でシングル・リリースしました。ゲイリー・ゼクリーの方はインディ・レーベルから、片やジャン&ディーンはメジャーのコロンビア・レコードからのリリースでしたが、結果はイエロー・バルーンは最高位25位、一方は111位止まりと、イエロー・バルーンに軍配が上がりました。

The Millennium

カート・ベッチャーは1944年1月7日、ウィスコンシン州オークレアで生まれました。62年秋にミネソタ大学に入学して、翌63年にホルムバーグ姉妹とロン・ニールソンの4人でフォークカルテットのThe GoldeBriarsを結成しました。64年に2枚のアルバムをリリースした後、活動拠点を西海岸に移しましたが、グループは解散、カート・ベッチャーはプロデューサー、アレンジャーとして活動を始めます。66年、アソシエーションのファーストアルバムと、トミー・ロウの『It's Now Winter's Day』のプロデュースで、その実力が認められるようになり、業界での知名度も上がりました。

同66年、カート・ベッチャーは自らのバンドであるThe Ballroomを結成して、ゲイリー・アッシャーの誘いでコロンビア・レコードと契約しました。The Ballroomのメンバーは、サンディ・サルスベリー、ミシェル・オマリー、ジム・ベルとの4人で、アルバム1枚分のレコーディングをしていましたが、公式にはシングルを1枚残すのみで、新たなバンドに発展していきます。

軽やかなチェンバロの旋律から始まるアルバム『Begin』は、68年にリリースされました。The Millenniumの活動は、商業的には成功には至りませんでしたが、60年代後半のポップ・ミュージックの中でも突出した出来栄えであり、ハーモニー・ポップの金字塔となりました。

Eternity's Children

デルタ・カレッジの学生だったブルース・ブラックマンとロイ・ウィッタカーがファントムズを結成したのがその母体で、フォークシンガーのリンダ・ローリーを加えて、バンド名をエタニティーズ・チルドレンと改めました。67年、ロサンゼルスに移った彼らは、カート・ベッチャー、キース・オルセンのプロデュースで68年に"Mrs. Bluebird"をリリース、全米69位を記録しています。

Salt Water Taffy

舞台をニューヨークに移します。68年にニューヨークで結成された男女混成ハーモニー・ポップ・グループです。中心人物のロッド・マクブライアンは、イノセンスやトレイド・ウィンズのアルバム・エンジニアとして関わっていた人で、スタジオ・グループで"Finders Keepers"を録音、リリースすると好評だったので、メンバーを新たに集めて実際のSalt Water Taffyを結成したということです。

Margo Guryan

毎日が晴天という訳ではないように、サンシャイン・ポップにも曇天や雨天が似合う曲もあったりします。1937年、ニューヨーク生まれの彼女は、若い頃から作曲活動をしていて、60年代初頭にはジャズに傾倒し、ピアニストとしてジャズ畑での活動がメインとなっていましたが、彼女にポップスの世界へと誘ったアルバムがビーチボーイズのペット・サウンズでした。その彼女の唯一のアルバムが68年の『Take A Picture』。彼女のアンニュイな歌声は、ソフトサイケ、浮遊感を織り交ぜた、素晴らしいポップ・ドリームを感じさせる作品です。

The Vogues

ヴォーグスの出身はペンシルバニア州タートル・クリークです。結成は1958年、前身グループのヴァル・エアーズがスタートで、メンバーはビル・バーケット、ドン・ミラー、ヒュー・ガイヤー、チャック・ブラスコの4人です。ヴァル・エアーズ名義では、60年にコーラル・レコードから"Laurie, My Love"をシングル・リリースしていました。

彼らが注目を集めたのは、65年にヴォーグスとしてマイナーレーベルのブルースター・レコードから"You're The One"をリリースして、それがCo&Ceレーベルから全米リリースとなり、全米4位のビッグ・ヒットになりました。続く"Five O'Clock World"も全米4位と、スター・グループの仲間入りを果たし、66年の"Magic Town" (#21)、"The Land of Milk and Honey" (#29)とヒットが続きました。

67年にシングルを3枚出しましたが、全てランク外で、低迷して、心機一転リプリーズ・レコードに移籍しました。今までの溌剌としたサウンドから、リプリーズではプロデューサーにディック・グラッサーを迎え、アーニー・フリーマンのゴージャスなオーケストラ・サウンドのアレンジで、スタイルを変えたことが功を奏し、2枚目のシングル"Turn Around, Look at Me"は全米7位と見事復活を果たしました。次の3枚目のシングル"My Special Angel"も全米7位と、カバー曲の選曲眼の良さと、MOR路線を貫いたことが成功に繋がっています。

Honey Ltd.

今回のラストは、リー・ヘイゼルウッドのLHIレーベルから68年にリリースされた Honey Ltd. 唯一のアルバムを。この頃のリー・ヘイゼルウッドのプロデュース作同様にバックにはレッキング・クルーの面々が。ジャック・ニッチェの関係で、シングル曲の"Louie, Louie"にはライ・クーダーがスライド・ギターで参加しています。ベスト・トラックはソフトサイケなコーラスも美しい"Silk N' Honey"でしょうか。

(2022/05/05)

ch.6

1.Songwriters Series #01 (2022/03/19)
2.Songwriters Series #02 (2022/03/26)
3.Songwriters Series #03 (2022/03/31)
4.Songwriters Series #04 (2022/04/05)
5.A&M Records (2022/04/11)
6.Folk Rock 1965-69 (2022/04/17)

ch.5

1.The Boy I Love (2022/03/03)
2.Flip and Nitty (2022/03/06)
3.Tedesco and Pitman (2022/03/08)
4.Twilight Time (2022/03/10)
5.This Could Be The Night (2022/03/12)
6.1964年のNo.1ヒットソング (2022/03/15)

ch.4

1.ビートにしびれて (2022/02/13)
2.Power Blues & Sophisticated Soul (2022/02/18)
3.I'll Go Crazy (2022/02/20)
4.Do You Wanna Go With Me (2022/02/23)
5.I Got Lucky (2022/02/25)
6.The Lovin' Touch (2022/02/28)

ch.3

1.サーフビート・ゴーズ・オン (2022/01/29)
2.A Sunday Kind of Love (2022/02/01)
3.夜明け前の月光 (2022/02/03)
4.West Coast R&B (2022/02/05)
5.くよくよしないぜ (2022/02/06)
6.誰にも奪えぬこの想い (2022/02/10)

ch.2

1.シビレさせたのは誰 (2022/01/14)
2.ブロンクス・スタイル (2022/01/15)
3.ツイストが2度輝けば (2022/01/21)
4.太陽を探せ (2022/01/22)
5.1961年のNo.1 R&Bソング (2022/01/25)
6.Romancing the '60s (2022/01/27)

ch.1

1.1959年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
2,1960年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
3.1960年のヒットソング (2021/12/31)
4.インストゥルメンタル・ヒット (2022/01/04)
5.60'Sポップスの夜明け (2022/01/05)
6.R&B、ソウルミュージックの躍進 (2022/01/07)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?