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アメリカン・ポップス・クロニクル 1960年代編 ch.3 (2)

A Sunday Kind of Love

アメリカ西海岸、ロサンゼルス辺りにはメキシコ系アメリカ人が多く住んでいて、彼らの好む伝統的なバラードやそのコーラスと同じく、ドゥーワップ、アカペラコーラスに共通点を感じ、魅了され、50年代中頃にはドゥーワップ・スタイルのグループが出てきていました。その流れもあってか、ニューヨークと同じように1958年頃から、白人のドゥーワップ・グループも登場し始めます。

前回紹介したサンディ・ネルソンの高校時代の後輩に、ジャン・ベリー、ディーン・トーレンス、お隣の高校にはアーニー・ギンズバーグがいました。彼らは高校が主催するタレント・コンテストに出場するために、バロンズというドゥーワップ・グループを結成して、ジャン・ベリーの家のガレージを練習場所にしていました。ガレージにはオープンリールのテープレコーダーとピアノがありました。

コンテストが終わるとバロンズは自然消滅、解散となりましたが、ジャン・ベリー、ディーン・トーレンス、アーニー・ギンズバーグは時間を見つけてはガレージに集まり、曲を作り始め、その曲をテープレコーダーに録音して、その部分部分を繋ぎ、新しい曲を作るという実験を行っていました。2台のテープレコーダーを使ってテープエコー、ディレイ効果を作り出していたともいいます。

新曲の題材を提案してきたのは、アーニー・ギンズバーグでした。彼は街で見かけたバーレスク・ダンサーのJennie Leeのポスターからヒントを得て、そのダンサーの歌を作ろうと持ち掛けます。ジャン・ベリーとディーン・トーレンスはその話に乗ってきて、3人で曲を作っていきました。

"Jennie Lee"のアレンジやコーラス・パートも出来上がり、デモテープを作ろうとなった時に、ディーン・トーレンスは陸軍予備役として6か月の兵役に行かなくてはならなくなり、結果的にデモのヴォーカルは、ジャン・ベリーとアーニー・ギンズバーグがとることになりました。

ジャン・ベリーがデモをラジオ・レコーダーズでアセテート盤に移している時に、居合わせたアーウィン・レコードのA&Rジョー・ルービンがこれを聴き、気に入って、アーウィンとの契約を提案します。ベリーは契約に応じて、ルービンはこの曲にバンド・サウンドをオーバーダビングしていき、1958年4月、"Jennnie Lee"は"Gotta Getta Date"とのカップリングでリリースされ、レコード盤に刻まれたアーティスト名はジャン&アーニーでした。

その年の夏、この曲は全米8位まで駆け上がるヒット曲となり、『ディック・クラーク・ショー』にも出演し、さらにはペンシルヴァニア、マサチューセッツ、コネチカットなどアメリカ東海岸を演奏ツアーしました。しかし、2枚目のシングルは全米81位、3枚目のシングルはランク外で、秋にはギンズバーグは音楽活動に嫌気が差してきて、大学進学を理由にグループ脱退を決めました。丁度その頃、兵役を終えたディーン・トーレンスが帰ってきました。

ジャン・ベリーとディーン・トーレンスは再びコンビを組み、デビューを目指します。彼らはアーウィン・レコードのA&Rジョー・ルービンを通じて、その頃Dore Recordsのスタッフだった、ハーブ・アルパートとルー・アドラーと出会い、彼ら4人で何曲かデモを作り、59年5月、ジャン&ディーンは"Baby Talk"をDore Recordsからリリースしました。

"Baby Talk"は、その年の夏に全米10位を記録して、大ヒットとなりまして、この後61年までにDore Recordsに7枚のシングルと1枚のアルバムを残しました。Top100に入ってはいましたが、デビュー・シングルに並ぶような楽曲は生まれませんでした。この時期の彼らの特徴は、"Gee"などのように、R&Bハーモニーを陽気なカリフォルニア流に解釈した楽曲が売りで、サーフィン/ホットロッドの人気デュオとなるのは、もう少し先、この後リバディ・レコードと契約になります。

(2022/02/01)

ch.3

サーフビート・ゴーズ・オン (2022/01/29)

夜明け前の月光 (2022/02/03)

ch.2

1.シビレさせたのは誰 (2022/01/14)
2.ブロンクス・スタイル (2022/01/15)
3.ツイストが2度輝けば (2022/01/21)
4.太陽を探せ (2022/01/22)
5.1961年のNo.1 R&Bソング (2022/01/25)
6.Romancing the '60s (2022/01/27)

ch.1

1.1959年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
2,1960年のNo.1ヒットソング (2021/12/31)
3.1960年のヒットソング (2021/12/31)
4.インストゥルメンタル・ヒット (2022/01/04)
5.60'Sポップスの夜明け (2022/01/05)
6.R&B、ソウルミュージックの躍進 (2022/01/07)

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