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「Zガンダム」で学ぶ、女性の生きづらさとは

「…エマ中尉分かってよ。男達は戦いばかりで、女を道具に使うことしか思いつかない…!もしくは、女を辱めることしか、知らないのよ!」

✔レコア・ロンドという女性

 Zガンダムでは、地球連邦軍のエリート組織でジオン残党を掃討するために出来た、ティターンズと主人公カミーユ(CV:飛田展男)が所属するエゥーゴ(ティターンズのやり方に反対している軍閥組織)と、の戦いが描かれています。

 そのエゥーゴにはレコア・ロンド少尉(CV:勝生真沙子)という女性士官がいるのですが、この女性、一見美人で性格も悪くはないし、仕事ができないわけでもないのに、ガンダム作品の男性ファンからとても嫌われています。

 主な理由としては、彼女が極めて私的な理由でエゥーゴを裏切って、ティターンズに寝返ったからなのですが、彼女は、作中でもあまり男性陣から大切に扱われていません。

 レコアは、戦災孤児から少年兵となり、その流れでエゥーゴに入隊しました。かなり過酷な生い立ちで、相当な苦労を重ねて生きて来たことは想像に難くありません。ですが、あまり荒んだ雰囲気はなく、知的な大人の女性に見えます。

✔居場所を失っていくレコア

 レコアの前に、敵ティターンズから寝返った美しい士官のエマ・シーン中尉(CV:岡本麻弥)が現れます。エマ自身正規軍の中のエリート部隊にいたのですが、元々厳格な軍人家庭で育っているので、レコアとは真反対の女性です。

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 エマは元が優秀なので、エゥーゴでも即戦力のMSパイロットとして活躍しますが、レコアはさらに、若くてカワイイ、ファ・ユイリィ(CV:松岡美幸)と、メタスを取り合う羽目になるなど、活躍の場を失っていきます。

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 さらにレコアは、ジャブロー(アマゾンにあるティターンズの基地)の偵察任務のため、単独で行動している時にあっけなくティターンズに捕らえられます。具体的な場面はありませんが、その時に「屈辱的な」目にあったことが示唆され、そのことが、多くの同胞にも知られることにもなりました。

✔自身の居場所を確立できなかったレコア

 プライベートでは、クワトロ・バジーナ(=シャアCV:池田秀一)と付き合っているように見えますが、クワトロ大尉はレコアに対して本気ではありません。そもそもシャア(クワトロ)は、ロリコン&マザコンですから、レコアのことは、完全に遊びだということは明白です。

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 エゥーゴにおいて、レコアは仕事でも確かな成果は残せず、自分の確固たる地位も確立できず、プライベートにおいては、男性から大切な女性として扱われることもありませんでした。

 対してエマ中尉は、それら全てを手に入れているので、表面的には何事もなさそうにふるまってはいましたが、レコアは恐らく、エマ中尉に対しては嫉妬していたと思います。

それは、最後の2人の「レコアさん!あなたは女でありすぎたわ!」「そうよ、私は女よ!だからここにいる!あなたの敵になった!」という、このやり取りからも分かります。

その時のレコアの「…エマ中尉分かってよ。男達は戦いばかりで、女を道具に使うことしか思いつかない…!もしくは、女を辱めることしか、知らないのよ!」という、セリフから、レコアがいかに男とういう存在に絶望していたかもわかります。

 結局、自分を利用するだけのエゥーゴの男たちに嫌気がさしていた時、自分を初めて一人の女性として扱ってくれる(事が期待できる)敵に出会います。パプテマス・シロッコ(CV:島田敏)です。

 そんなシロッコを信じて、ティターンズに寝返ったら、今度はサラという若くてかわいくて、シロッコに心酔している女の子がすでにいました。が、レコアももう後には引けません。どこまでも幸せから遠ざかってしまうレコア。

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✔女が男性社会で生きる辛さ

 みみのすけは、そんなレコアは嫌いではありません。それは、同じ女性として、レコアの気持ちがよく分かるからです。仕事において、それが特に男社会であるほど、女はその中で、自分の立ち位置にすごく戸惑ったり、悩むものです

 それは、男性性と女性性のバランスを取るのが難しいということでもあります。女を武器にしたくないし、だからといって、男に同化もできません。呪術廻戦の記事でも書いたように、女性が仕事をしていく上では、より多くを…完璧を求められる事が多いです。

 当然、セクハラにあうこともあります。女をモノのようにしか見ていない連中というは一定数いますから。そういうのを回避しながら、レコアのように、仕事で成果をだそうと頑張っても、空回りばかりすることもあります。

 そして仕事に邁進してると、だんだん、自分の心の泉が枯れてくるような、そんな気持ちになることがあります。少なくとも私はありました。だから、自分を「オンナ」ではなく、ただの同僚でもなく、1人の女性として大切に誠実に扱ってくれる男性を、渇望するようになるので、レコアの気持ちは理解できます。

✔いかにも「イイ男」風な男性を好む方はご注意を

 レコアにとっての最大の不幸は、カミーユが10代の少年だったことです。実は、レコアが望む形で大切にしてくれる可能性があった男は、実は、唯一カミーユだけでした。ですが、さすがに10代の少年をそういう対象にはできません。

 遊びでしか付き合わないロリコン&マザコンのズルい男か、女性としてはレコアには興味を持たない男しかいない中で、ヘンケン艦長は、レコアに、エマ中尉へのプレゼントを託します。レコアは、何とも思わないフリをしていましたが、内心、傷ついていたでしょう。「あー、私にはこんなことしてくれる男はいないなー。エマ中尉と何がちがうんだろう」と思ったのではないでしょうか。

 明確な違いは、エマ中尉はレコアほど、自分をオンナとして見てくれて、扱ってくれるということに、重きを置いていません。かつ、エマ中尉は、レコアが好きになるような男には、一切興味ありません。

 逆に、レコアもヘンケン艦長には全く興味ないですし、言い寄られても気持ちに応えることはないでしょう。レコアは、シャアとか、シロッコみたいな、いかにもイイ男風な大人の男が好きだからです。

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 実はこれが落とし穴です。現実社会でも、全くモテないわけじゃない、レコアみたいに、それなりにキレイなキャリアウーマン系の、経済的にも自立してる女性がよく陥っていますね。

 特に、不倫してる女性は、こういうタイプに惚れやすいから不倫をするのです。幸せと対極のズルい男(女を扱い慣れてる男)を好きになってしまいやすいんですね。

 こういう男はズルいので、自分を「オンナ」として求めてくる男を欲してる女を嗅ぎ取る嗅覚が鋭いです。シロッコはまさにそういう男です。しかも彼は、オンナだけでなく、レザンみたいな男まで手玉に取って、信頼させるのだから、本当に恐ろしい男です…。

✔相対評価でなく絶対評価で生きる

 レコアは女性として扱われることに固執しすぎて失敗しましたが、逆に、男性と張り合いすぎてうまくいかない人もいます。昨日、ジェンダーに関する記事を書きましたが、ジェンダーフリーを望むあまり、男性を敵視しているような方もいます。

 仕事を行う上で、女性は、女を武器にするか男と張り合うかの二択であるかような錯覚を持っている人は少なくないようですが、女性らしくありつつ男性と敵対もせず、しなやかに自分の居場所を確立させている方もいます。

 レコアと対局だったエマ中尉がまさにそうです。エマは、自分の責務を全うすることだけ考え、軍人ならではの厳しさはあるものの、姉のような優しさで接してもいました。

 エマ中尉とレコアの違いは、レコアは男からの評価を得る事が全てだったのに対して、エマ中尉は男はおろか、他人の評価など別に求めていなかったという点にあります。

 いつも書いている内容に帰結しますが、結局は、人は渇望するものほど得られないもので、他人の評価を基軸に生きるほどに、生きづらくなるものです。生きづらさから抜け出るには、男女の関係なく、結局は自分軸の絶対評価で生きるのが一番なのです。

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 Zガンダムは、シリーズの中で1番好きです。多様な女性が、最前線で戦いつつも、恋もします。この時代に、女性の社会進出と生きづらさを、巧く描いている作品なので、女性にもオススメの作品です。

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