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「働く細胞BLACK」で学ぶ、組織の在り方

✔「働く細胞BLACK」という作品

 今期は、本編と共に「働く細胞BLACK」もアニメ化されました。最初「BLACKって?」と思っていましたが、要は、体内環境が悪すぎて、細胞さんたちが働く環境がブラック企業化しているという状況です。

 本編と違い、そこかしこ荒れているし、汚いし、血小板ちゃんたちはやさぐれているし、ナレーションが「あの」津田健次郎さんで、ブラック感がいや増しています。また、白血球がきょぬーの女性戦士になっているのは、連載誌が「モーニング」ということで、セクシー要素強めになったのかな?と推測します。

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 アニメを見ていると、本体は、ブラック企業で働く、喫煙者で相当ストレス過多の生活習慣が乱れている40代くらいの男性かな?と推測できます。ちょうど、モーニングの読者年齢層でしょうか。

 この体、睡眠不足に加え、喫煙とアルコール大量摂取、エナジードリンク依存、EDに加えて性病にもかかり、抜け毛、血栓、血尿…と続き、毎回視聴するたびに、この本体の命が心配になるのと同時に、客観的に我が身を振り返えらせてくれて、健康に留意しようと思わせてくれる作品です。

✔企業の「組織」も体の「組織」も同じ

 この「はたらく細胞」(本編・BLACK共に)面白いのは、体内組織である細胞群が、会社組織、あるいは社会組織として描かれている点です。ブラック企業で働いていると思しき本体と、リンクしてその体内環境も同時にBLACK化していく様子が描かれているのが、この作品の秀逸な点です。

ちなみにWikipediaで「組織」と調べると「②生物でかたちや、働きの似た、細胞の集まり。③社会における同じ要素を持った構成物が団体として結合したもの」とあります。なので、②はまさに「働く細胞」たちのことであり、③は会社組織や社会組織のことです。

 そして実は1番目に「ある目的をもって、複数の構成物や構成者により、全体として、1つの働きをするまとまりを作ること、及びそのようにしてできたまとまり」とありますので、②と③の複合的な意味合いは、この①に集約されますから、結局のところ、体内組織も会社組織も同じことを意味していると考えて差し支えないでしょう。

 ちなみに、組織は英語で「Organization(オーガニゼーション)」と言い、組織だった効率性、秩序という意味もあるので、それが失われている集団は、企業だろうが、もはや「組織」とは呼べないと言えます。実際、ブラックな環境の企業は、もはや組織とは言い難いですし、ブラックな環境の体内でも、組織は壊れていきます。(ガラの悪い赤血球にパワハラされる、主人公赤血球CV:榎木淳弥)

パワハラ

✔明確な役割を持って、それを果たすモノの集合体が組織

 組織の定義が「ある目的をもって、複数の構成物や構成者により、全体として、1つの働きをするまとまりを作ること」ということですが、当然ながら、皆が同じことをしているわけではありません。と言うよりむしろ、皆が同じことをすると組織は機能しません。

 「はたらく細胞」でも分かるように、本来組織とは、それぞれに明確な役割が決まっていてそれをきっちり達成することで成り立っています。赤血球は酸素を運搬し、白血球は細菌を駆除することに特化しています。

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 だからこそ、それぞれが自分の役割を達成することに集中することができ、免疫細胞たちは、それぞれ自分の職務を全うすることで、その個体が健康に保たれ「生命を維持する」という目的を一丸となって達成させています。

 つまり、組織とは、共通の目的を果たすために、それぞれ特化した能力を持った者たちが、互いに補い合って機能させるものであって、なんでもできるオールラウンダーの集まりである必要はないのです。だからこそ、組織なのですから。

✔オールラウンダーを求める日本人

 ところが、多くの日本人は、特化させることではなく、一人の人間にオールラウンダーを求める事が多いです。これは他人から求められることもあれば、自分が自分自身に向かって求めることもあるし、その両方である場合もあります。

 以前も書きましたが、これは日本の教育方針が「各教科を等しくできること」を求めることに起因していると考えます。例えば「平均点を下げているのが数学だから、数学を頑張らなきゃ」とか「英語が苦手だから英語をなんとか克服しないと」とか、「体育だけイマイチで勉強しかできない自分がイヤだ」とか…できていることよりも、出来ない方に目が向いてしまい、自信をなくしたことはありませんか?

 本来人間は、何でも等しくできる存在ではなく、それそれに特化した能力があり、それを使って、人生の目標を達成するために生まれて来た存在であるはずなのです。

 決して、非理性的で横暴な他人の企業で他人のために、個性を殺して、苦手な事を死ぬ気で頑張り続けるために生まれてきてはいません。ましてや、自分の体をボロボロにしてまで、やらねばならないものでもありません。(↓血尿…コワイ)

血尿

 他人の期待に応えようとすることも、苦手を克服するために頑張ることも、ある程度は必要かもしれませんが、日本は、必要以上にその手の努力・忍耐を賛美する傾向があるように思います。

✔人材の特性を活かしていないと組織とは言えない

 得意な人に得意な事をさせずに、苦手な人に苦手なことをさせ続けてパフォーマンスが上がらない組織は驚くほど多いです。本人がやりたいから、長く会社にいるから、正社員じゃないから…様々な理由はあると思いますが、特性以外でその人の職務を決める企業が日本ではほとんどではないでしょうか。

 一番最悪なのは、マネジメント能力がない人間を管理職に据えてしまう事です。これこそ、年長だから、長く会社にいるから、というだけの理由でその職にいる人が多いですが、その管理職にいる人で自分の職務を理解している人はどれほどいらっしゃるのでしょう。

 日本企業の場合は「課長・部長」と言っても何をすればいいのか、その役職名からは分かりにくいです。ただの決裁者である場合も多いですが…。明確な目的が見えないまま仕事をしている管理職が多いと思います。

 そういう上司の元で働く部下は、当然自分の特性など理解してもら得ようはずもありません。上司が必ずしも仕事ができて、部下が仕事ができないと決まっているわけではないのですが、そういう状況下で苦しんでいる社員は決して少なくないでしょう。

 日本企業も、もう少し「人材の特性」を理解し、活かした人材配置をしないと、世界から、後れを取っていくだけになるのではないかと危惧しています。若い目を摘んでしまう社会は機能不全に陥ります。社内に癌細胞を作らないですむよう、健全な組織を運営できる企業が増えてくれることを願っています。

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