夏野雨

詩とエッセー。詩集「明け方の狙撃手」。何の役にも立たない話をします。 https://…

夏野雨

詩とエッセー。詩集「明け方の狙撃手」。何の役にも立たない話をします。 https://twitter.com/ame_natuno

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プロフィール

夏野雨 Natsuno Ame詩人。詩集「明け方の狙撃手」(2018年・思潮社)で福岡市文学賞・福岡県詩人賞受賞。「じゃんけんをしながら渡る歩道橋がいちばん好きだ」(2022年・私家…

夏野雨
3年前
5

クルミ市スワン町 久留米の詩2023

石橋文化センター アートフェスティバル2023で展示を行います 2023.11.3(金・祝)-11.19(日) 10:00-17:00 石橋文化センター園内全域 ※入場無料 福岡県久留米市野中町10…

夏野雨
5か月前
4

小学生 詩のワークショップ「ことばとことばをつなげて詩をつくろう」※参加者募集終了

小学生(3~6年生)対象 詩のワークショップ  ※参加者募集終了 講師 夏野雨 野島智司 中川たくま 開催日 2023年8月2日(水) 〜 2023年8月3日(木) 開催時間 午前9…

夏野雨
5か月前
5

天神中央郵便局前交差点の柿の実を取る人は誰もいない

曲がり角に 木があり 建物があって人がすれ違う バスの群れが進む道の先に それぞれの家はある 山のなかの虫 家のなかの猫 車のなかの人 歩いている コートのなかの体…

夏野雨
1年前
18

ベーカー街221Bの話

BBC制作のドラマ「SHERLOCK」にはまってしまい、シーズン1からシーズン4、劇場版まで立て続けに視聴する。二年くらい前、高校以来の友人につよくすすめられて、スマホのメ…

夏野雨
1年前
4

リズムトーン

音楽が鳴り続けている間 しゃべり続けることにして どこまでも続く午後のひざしのなかを 歩いていった 右足左足 舗装された7月の道を 歩き出すには 走りだすには 雨に…

夏野雨
1年前
12

トビウオの八月、誰かの光

八月が終わる。オリンピックは延期のまま、首相は辞任し、マスクのねだんは上下を繰り返しながらもいちおうの水平線をみつけたように思える。そんな夏を、ほとんど溺れるよ…

夏野雨
3年前
12

くるくる回る電話をとって

くるくる寿司、という言葉がある。正式な言葉かは知らないが、うちの父がたまに使う。たとえば電話がかかってきて「久しぶりやけん、食べに行こうっち言いよーとよ。くるく…

夏野雨
3年前
12

名前を知らない花の話

夏が来た。ついきのうまで、冬が終わらないとか、春のしっぽはつかまったのかとか、ぶつぶつ言っていたけれど、いきなり夏が来た。起きたら、日差しが違うのだ。空気がくっ…

夏野雨
4年前
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窓を開けてお風呂に入った話

お風呂につかって、外の景色を見るのが好きだ。建物に挟まれて、すこしだけしか見えない空にも、その時間、そのお天気、その季節ならではの、独自の色がある。そして多くの…

夏野雨
4年前
21

ごあいさつ

こんにちは。夏野雨です。noteを始めます。どうぞよろしくお願いします。 コンセプトといえるかどうかわかりませんが、ここでは、何の役にも立たない話をします。読んでい…

夏野雨
4年前
18
プロフィール

プロフィール

夏野雨 Natsuno Ame詩人。詩集「明け方の狙撃手」(2018年・思潮社)で福岡市文学賞・福岡県詩人賞受賞。「じゃんけんをしながら渡る歩道橋がいちばん好きだ」(2022年・私家版)で第73回H氏賞候補。ポエトリーフェス「福岡ポエイチ」主宰(2012年-2017年)。電子書籍出版レーベル「惑星と口笛ブックス」によるエッセイアンソロジー「コドモクロニクル」等に参加。合唱譜「くまのはなし」作詩(2

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クルミ市スワン町 久留米の詩2023

クルミ市スワン町 久留米の詩2023

石橋文化センター アートフェスティバル2023で展示を行います
2023.11.3(金・祝)-11.19(日) 10:00-17:00
石橋文化センター園内全域 ※入場無料
福岡県久留米市野中町1015

夏に子どもたちと石橋文化センター内を散策し、植物や生き物などを観察して、感じたことを「ことば」にし、それをつなげて詩をつくるワークショップを行いました。展示にあたっては、白鳥の羽根をモチーフに、

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小学生 詩のワークショップ「ことばとことばをつなげて詩をつくろう」※参加者募集終了

小学生 詩のワークショップ「ことばとことばをつなげて詩をつくろう」※参加者募集終了

小学生(3~6年生)対象 詩のワークショップ  ※参加者募集終了
講師 夏野雨 野島智司 中川たくま

開催日 2023年8月2日(水) 〜 2023年8月3日(木)
開催時間 午前9時半~正午、午後1時半~4時 全4回
開催場所 久留米市美術館1階(制作場所)
     福岡県久留米市野中町1015

3人のアーティストと一緒に、石橋文化センター内を散策し、植物や生き物などを観察して、感じたこと

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天神中央郵便局前交差点の柿の実を取る人は誰もいない

天神中央郵便局前交差点の柿の実を取る人は誰もいない

曲がり角に
木があり 建物があって人がすれ違う

バスの群れが進む道の先に
それぞれの家はある

山のなかの虫
家のなかの猫
車のなかの人

歩いている
コートのなかの体が
少しずつ冷えていくのは
建物のなかから出て
ひとりずつになったせいだろうし

またあたたまってくるのは
ひとりずつになった体のなかで
透明に光る細胞が
水を燃やしているせいだ

きみの王国のなかには
誰にも所有されないひとつの

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ベーカー街221Bの話

ベーカー街221Bの話

BBC制作のドラマ「SHERLOCK」にはまってしまい、シーズン1からシーズン4、劇場版まで立て続けに視聴する。二年くらい前、高校以来の友人につよくすすめられて、スマホのメモにタイトルを書いたものの、すっかり忘れていたのだが、機会があって1話を観てしまったのが運のつき。止まらなかった。教えてくれた友人、ありがとう。

ベーカー街221Bには、実は行ったことがある。大学の卒業記念に一人でイギリスを旅

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リズムトーン

リズムトーン

音楽が鳴り続けている間
しゃべり続けることにして
どこまでも続く午後のひざしのなかを
歩いていった
右足左足

舗装された7月の道を
歩き出すには
走りだすには
雨に濡れた空白が必要で

うまれるまえから
きこえるまえから
はかられつづける
心拍数と心臓の音

波のかたちをえがくには
どこまでも空白が必要で

こんにちはとポストにとどけられる
宅急便の不在通知にさえも
いくつもの波が交差して

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トビウオの八月、誰かの光

トビウオの八月、誰かの光

八月が終わる。オリンピックは延期のまま、首相は辞任し、マスクのねだんは上下を繰り返しながらもいちおうの水平線をみつけたように思える。そんな夏を、ほとんど溺れるようなかんじで泳いでいる。Spotifyでよく知らない音楽を聴きながら考えることは、たとえば、トビウオだったらいいのに。怒涛のニュースや日々の暮らしや仕事やあれこれを波として、ヒュッとそれを俯瞰してみたい。

どこに出すあてもないのに風景や気

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くるくる回る電話をとって

くるくる回る電話をとって

くるくる寿司、という言葉がある。正式な言葉かは知らないが、うちの父がたまに使う。たとえば電話がかかってきて「久しぶりやけん、食べに行こうっち言いよーとよ。くるくる寿司」こんなかんじである。ちなみにこれを訳すと、「久しぶりだから回転寿司を食べに行こうと言っている」となる。

さらに言うなら「食べに行こうっち言いよーとよ。」の部分は、他に同行するであろう人(たとえば母とか弟など)がいれば「こちらで相談

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名前を知らない花の話

名前を知らない花の話

夏が来た。ついきのうまで、冬が終わらないとか、春のしっぽはつかまったのかとか、ぶつぶつ言っていたけれど、いきなり夏が来た。起きたら、日差しが違うのだ。空気がくっきりして、明るい。もうぜったいに上着はいらない。セーターもいらない。炬燵もたぶんいらないだろう。こうなると、ふらふらと散歩にでも出かけたくなる。とはいえこのご時世、おいそれと外に出るのは憚られる。というわけで、写真フォルダ内の散歩に出かける

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窓を開けてお風呂に入った話

窓を開けてお風呂に入った話

お風呂につかって、外の景色を見るのが好きだ。建物に挟まれて、すこしだけしか見えない空にも、その時間、そのお天気、その季節ならではの、独自の色がある。そして多くの場合、その色にはそのときの気分が混ざり込んでいる。

世界、窓、自分。お風呂に入るときはだいたい裸なので、ぼんやりと外を見ていると、世界と自分が同じぐらいの重さであるような気がする。または、世界の示す圧倒的な景色にやられて、自分のほうが一新

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ごあいさつ

ごあいさつ

こんにちは。夏野雨です。noteを始めます。どうぞよろしくお願いします。

コンセプトといえるかどうかわかりませんが、ここでは、何の役にも立たない話をします。読んでいて、もしかして役に立つのではと感じることもあるかもしれませんが、それは錯覚です。

しかし、まあ、ときには錯覚が有用な働きをすることもあります。たとえば、錯視の効果を利用したイメージハンプと呼ばれる道路標識は、路面に描かれた平面的な図

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