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天神中央郵便局前交差点の柿の実を取る人は誰もいない

曲がり角に
木があり 建物があって人がすれ違う

バスの群れが進む道の先に
それぞれの家はある

山のなかの虫
家のなかの猫
車のなかの人

歩いている
コートのなかの体が
少しずつ冷えていくのは
建物のなかから出て
ひとりずつになったせいだろうし

またあたたまってくるのは
ひとりずつになった体のなかで
透明に光る細胞が
水を燃やしているせいだ

きみの王国のなかには
誰にも所有されないひとつの森があって
湿った喉をくぐりぬける
白い息も
燃えている

生きている ということは
どうしてそんなに裸なの

天神中央郵便局前交差点
信号を待つ人たちの隣で
大きな柿の木をみつけるとき
ぼくは
その実をついばむ
一羽の鳥を幻視する

落下する太陽と
大きく広がる羽根の下で 街は
どこまでも続く
ひとつの森

 

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