『癒盗』

「アボカドはねぇ、ヘタが緩いのが食べ頃よ」

横を見ると、知らないおばさんが微笑んでいた。

「そうなんですか。初めて知りました」

「若いのに肌荒れてるわねぇ。忙しいのかしら。

アボカドは栄養満点よ」優しく肩を叩かれた。

田舎の母親を思い出す。はらりと涙が流れた。

おばさんは励ましながら、肩をさすってくれた。

お礼を言ってレジへ向かい、財布を出す。出す?

出せない。無い。財布が無い。ふと見た壁の

掲示板に、常習スリと書かれたおばさんがいた。


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