ツクダテタクミ

都内でサラリーマンしてる。

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記事一覧

【後編】金髪で社会を生きると

前編はこちら 2023年6月26日にQからの内定のメールが届き、僕は悩んでいた。 ベンチャーか、中堅の広告代理店(Q)か。 実は、ベンチャーは正式に内定が出たわけではなく…

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【前編】金髪サラリーマンになった。

この春ついに社会人になった。僕は金髪だった。 初めて金髪にしたのは2017年。高校を卒業した後だった。 当時、僕はこれといった将来への目標もなく、なんとなく受験期間…

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暇な時間、その全てに意味があった

https://youtu.be/35Y6lwEffjc?si=Qc-Aa8tRlHG5Co7e 自主映画を作った。告知フライヤーを作ってもらう際にコピーを考えた。 「暇な時間、その全てに意味があった」 その…

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【断片】_2024年3月6日

20時ごろ インターホンが鳴った。 僕は自室でぼうっと過ごしていて、こんな時間に荷物?と疑問に思いながらモニターのもとへ向かう。でも、最近はとくに何も買っていない…

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【断片】_2024年3月5日

18時ごろ。 京急車内。僕は品川に向かう特急電車に揺られていた。横浜で人がたくさん降りて角の席が空いたので僕は角の席に移った。偶然なのか帰宅時間にも関わらず電車に…

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それぞれの。

トラックがブレーキを踏む。少し軋んだ音が響き、トラックが停車する。 僕の家は幹線道路から近く、さざなみのように車が走り抜ける音が聞こえてくる。幹線道路と僕の家は…

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僕のいる世界線と君のいる世界線

僕は、美容室やサロンでは会話をしないタイプだった。 今後関係は続かないと分かりきっている人間相手だと、逆になんでも話せてしまうなんてことはよくある。その日居酒…

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怒りは一番尊いものさ

「お前らマジうぜえ!こんなのやってられねえわ!」 友人はそう言って、手にしていたトランプをその場に叩きつけた。 確かに僕らにも問題はあった。でも、そんなことで?…

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まっすぐなものを。

2019年4月。 僕は大学生になった。 大学生になり、ものを作ることが増えた。いや、増えたというよりかは「大学生になってから、ものを作るようになった」というほうが正し…

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ゆるく点と点が繋がるとき

僕は奥山由之という人間が好きだ。 奥山由之さんは写真家、映像監督である。名前で検索をかければ誰しもが見たこと、聞いたことのある作品を見つけることができる。僕がそ…

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友だちを想う日々

今年で25歳になる。 ライフコースがいよいよ定まってくる年頃で友人にもたくさんの変化が訪れているような気がする。 札幌のキャバでトップに立つ友人、俳優になった友人…

僕はこれからどう生きていくか。

「君たちはどう生きるか」を観た。 観た。たぶん、僕は観ただけだ。 僕はただの傍観者だ。 僕はジブリファンでもなんでもないただのミーハーだ。僕が最後に劇場で観たジ…

友達が死ぬのなんてラッパーくらいだと思っていた。

友達が死んだ。 亡くなったと言うにはあまりにも突然すぎて、死んだという表現がしっくりくる。 友人からラインで知らされ、驚いた。焼香は二日後。少し予定を削れば地元…

SNSのお引っ越し

ある日、Instagramを開いたとき、にわかに寂しさを感じた。いや、じわじわと近寄ってきていた寂しさに遂に捕まってしまったといった感じだ。そして、Instagramもこれまでな…

熱と感情の行方

「マスク大丈夫ですか?」 3年ぶりに対面開催された、大学の文化祭。3年ぶりとあって、お祭りムードとなっている大学のキャンパスの入り口で僕は係の学生に捕まっていた。…

「SeekSeek」撮影を終えて

朝日が差し込み、水面がキラキラと光っている。12月の海は想像を遥かに超えて冷たく、足を浸しただけでも悲鳴をあげてしまう。そんな僕の目の前では一人の人間がびしょ濡れ…

【後編】金髪で社会を生きると

前編はこちら

2023年6月26日にQからの内定のメールが届き、僕は悩んでいた。

ベンチャーか、中堅の広告代理店(Q)か。
実は、ベンチャーは正式に内定が出たわけではなく、「ほぼ内定だけど、腹を括るまでは最終には来ないで欲しい」とのことで(どういうこと?)、最終面接を先送りにしていた。エージェントによると、そのベンチャーは内定者が採用人数に達しており、残すところは僕のみという話だった。採用枠を

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【前編】金髪サラリーマンになった。

この春ついに社会人になった。僕は金髪だった。

初めて金髪にしたのは2017年。高校を卒業した後だった。
当時、僕はこれといった将来への目標もなく、なんとなく受験期間を過ごし、なんとなく目標にしていた大学に落ち、なんとなく浪人することを決めて、高校を卒業した。そんな、「なんなく人間」の僕だったが、なぜか強く

心に決めていたことがあった。

「大学に入っても、僕は黒髪を貫くんだ!」と。

大学に入

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暇な時間、その全てに意味があった

暇な時間、その全てに意味があった

https://youtu.be/35Y6lwEffjc?si=Qc-Aa8tRlHG5Co7e

自主映画を作った。告知フライヤーを作ってもらう際にコピーを考えた。

「暇な時間、その全てに意味があった」

その言葉が僕の頭の中にスッと浮かんできた。割とありがちな言葉なのかもしれないが、この映画を作るにあたって見る人にもっとも伝えたかったことを一番わかりやすく表現しているように感じた。

映画を

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【断片】_2024年3月6日

【断片】_2024年3月6日

20時ごろ

インターホンが鳴った。
僕は自室でぼうっと過ごしていて、こんな時間に荷物?と疑問に思いながらモニターのもとへ向かう。でも、最近はとくに何も買っていない。しかし忘れっぽい僕にとってこういったことは日常茶飯事で、今回は一体何を買ったのだろうかと考えながらモニターを覗く。そこには若い大学生くらいの女性が立っていた。明らかに配達員ではない。宗教勧誘か?と考えるが、それにしてはさすがに若すぎる

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【断片】_2024年3月5日

【断片】_2024年3月5日

18時ごろ。

京急車内。僕は品川に向かう特急電車に揺られていた。横浜で人がたくさん降りて角の席が空いたので僕は角の席に移った。偶然なのか帰宅時間にも関わらず電車に乗っている人は少なく、席もまばらにしか埋まっていなくて僕の隣の席も空席だった。何駅か進んだところで、「すみません」と言いながら僕の脱いだ上着をよけてくれと頼みながら、僕の隣に男の人が座ってきた。歳は20代くらいだろうか。そのとき僕はKi

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それぞれの。

それぞれの。

トラックがブレーキを踏む。少し軋んだ音が響き、トラックが停車する。

僕の家は幹線道路から近く、さざなみのように車が走り抜ける音が聞こえてくる。幹線道路と僕の家は線路を挟んでいるものの、距離としてはそこそこ近い。そのはずだが、どこか遠く感じる。線路を挟んでこちら側は静かな住宅街で、線路によって世界が分断されているようにも感じられる。ここから幹線道路を眺めると、窓から外の世界を眺めているような感覚に

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僕のいる世界線と君のいる世界線

僕のいる世界線と君のいる世界線


僕は、美容室やサロンでは会話をしないタイプだった。

今後関係は続かないと分かりきっている人間相手だと、逆になんでも話せてしまうなんてことはよくある。その日居酒屋で知り合った人と深い恋愛話や将来の話ができてまう。だけど、僕は美容師などの施術スタッフに対しては会話をする気力がどうしても削がれてしまうたちだった。

(通うとなれば)なんとなく今後も関係は続くけれど頻繁に会うような仲でもないし、プレイ

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怒りは一番尊いものさ

怒りは一番尊いものさ

「お前らマジうぜえ!こんなのやってられねえわ!」

友人はそう言って、手にしていたトランプをその場に叩きつけた。

確かに僕らにも問題はあった。でも、そんなことで?と思ってしまうような状況ではあった。当時はそう思っていた。

2021年、コロナ禍の合間をぬって、友人数人でエアビーを借り、レンタカーで小旅行へと繰り出していた。その日、僕らは広々とした宿に歓声をあげ、コテージでBBQをした後、居間でト

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まっすぐなものを。

まっすぐなものを。

2019年4月。
僕は大学生になった。
大学生になり、ものを作ることが増えた。いや、増えたというよりかは「大学生になってから、ものを作るようになった」というほうが正しいか。大学生になった僕はこれまでまったく縁のなかった「ものづくり」にどっぷりとハマっていた。映像制作、写真撮影、デザイン制作、時には本を作ったり、イベントを開催したり。

どれもまっすぐな気持ちで向き合ってきたつもりだ。
いつもそばに

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ゆるく点と点が繋がるとき

ゆるく点と点が繋がるとき

僕は奥山由之という人間が好きだ。

奥山由之さんは写真家、映像監督である。名前で検索をかければ誰しもが見たこと、聞いたことのある作品を見つけることができる。僕がそんな彼を好きになったのはコロナ禍に入ってすぐのころだったように思う。

緊急事態宣言発令の文字通り緊急事態の最中、僕は自室にある無駄に大きなソファに寝っ転がり、無駄に高い天井を見つめていた。僕は「今のこの緊急事態の風景を写真で切り取って後

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友だちを想う日々

友だちを想う日々

今年で25歳になる。
ライフコースがいよいよ定まってくる年頃で友人にもたくさんの変化が訪れているような気がする。

札幌のキャバでトップに立つ友人、俳優になった友人、プロ野球選手になるためにBリーグで毎日野球をやっている友人、仕事の傍で野球をやる友人、結婚して子供が産まれた友人、大学を卒業した友人、命を絶った友人。

それぞれがそれぞれの想いを胸に今を生きたり、生きるのをやめたりしている。

みん

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僕はこれからどう生きていくか。

「君たちはどう生きるか」を観た。

観た。たぶん、僕は観ただけだ。

僕はただの傍観者だ。

僕はジブリファンでもなんでもないただのミーハーだ。僕が最後に劇場で観たジブリ映画は2013年公開の「風立ちぬ」だ(宮崎駿作品にこだわっているわけではない)。今作は僕にとって実に10年ぶりのジブリ映画となった。この10年の間にジブリ作品は4作品あったが、どれも観ていないところから僕のジブリ作品に対する関心の

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友達が死ぬのなんてラッパーくらいだと思っていた。

友達が死ぬのなんてラッパーくらいだと思っていた。

友達が死んだ。

亡くなったと言うにはあまりにも突然すぎて、死んだという表現がしっくりくる。

友人からラインで知らされ、驚いた。焼香は二日後。少し予定を削れば地元の北海道まで行けないこともなかった。

正直、迷った。僕なんかが行くべきなのか迷った。彼は高校時代の友人だったが、特別親しかったわけではなかった。高校卒業から今日までの6年間一度も顔を合わせることもなかった。もちろん、僕は彼の死を聞いて

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SNSのお引っ越し

ある日、Instagramを開いたとき、にわかに寂しさを感じた。いや、じわじわと近寄ってきていた寂しさに遂に捕まってしまったといった感じだ。そして、Instagramもこれまでなのかもしれない。僕はそう思ってしまった。

僕がInstagramを「楽しむためのSNS」のレギュラーとしておいたのはいつ頃だっただろうか。それは僕が浪人生をしていた2018年ごろだったように思う。Instagramがサー

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熱と感情の行方

「マスク大丈夫ですか?」

3年ぶりに対面開催された、大学の文化祭。3年ぶりとあって、お祭りムードとなっている大学のキャンパスの入り口で僕は係の学生に捕まっていた。キャンパスに足を踏み入れて早々、係の生徒が僕に駆け寄り「マスク大丈夫ですか」と僕との距離に見合わないほど大きな声で言った。僕はマスクをつけていなかった。僕はコンビニで買ったパック豆乳を飲んでいたのだ。僕が立ち止まると、係の彼は畳み掛ける

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「SeekSeek」撮影を終えて

「SeekSeek」撮影を終えて

朝日が差し込み、水面がキラキラと光っている。12月の海は想像を遥かに超えて冷たく、足を浸しただけでも悲鳴をあげてしまう。そんな僕の目の前では一人の人間がびしょ濡れになりながら、全身を動かし、水飛沫をあげていた。

北海道出身とはいえ、関東でも冬は寒いと感じる。12月下旬、早朝。僕は神奈川県横浜市にある「海の公園」という横浜で唯一海水浴場を持つ公園でMVの撮影を行っていた。

撮影の話があがったのは

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