マガジンのカバー画像

目目、耳耳

168
感想文。
運営しているクリエイター

2020年7月の記事一覧

宙の裏側で、君を見ている。(100年後 あなたもわたしもいない日に/土門蘭、寺田マユミ)

時々、てのひらに違和感が出る。てのひらの皮膚の表面を、軽く電気が流れるような感覚がする。しびれというにはかすかすぎる感覚(後略)

――『拓けども拓けどもまだ』より引用

この歌集を読んでいたとき、自分の「てのひらに違和感が出」た。痙攣というほどではないけど、かたかた震えている。よく見ると、特に右の方が震えている。なぜか、人さし指だけ前の方に出ていて、そして最も震えている。

「何を主張しているの

もっとみる

ぼく の (8ヶ月)じゆうけんきゅう(水温集/古本屋 弐拾dB)

先日、理想的なバケツを見つけた。

見つけた瞬間、「コレだ」と思った。ので、その場でお買い上げした。

何に対する理想かといえば、『水温集』に対する理想だ。

これは世にも珍しい水に溶けてしまう一冊の本。

――BOOTH商品紹介より引用

『水温集』をお買い上げし、早8ヶ月。

8ヶ月前、僕は尾道を訪れた。旅の目的に、「古本屋 弐拾dBを訪れること」そして「『水温集』を手に入れること」があった。

もっとみる

恐ろしいから、美しい(きつねのはなし/森見登美彦)

「強いから美しい」

ヒメユリの花言葉。

「そういうこともあるのか」と思った。ソレが美しいことに、「~だから」と理由を付けることが出来るのか。

それなら、『きつねのはなし』は、こういえるだろう。

「恐ろしいから美しい」



「可哀想にね」
彼はそう言って、痩せ細った首を垂れる。

――『きつねのはなし』p83より引用

可哀想にね。
可哀想にね。

ああ。
何度読んでも、身の毛がよだつ。

もっとみる

職場カウンセラーにおすすめされたYouTuberの話(パーカーチャンネル)(1829字)

「××さん(僕)は、YouTube見とる?」

「はあ、まあ」

「パーカーくんって、知ってる?」

「知らないです。YouTuberの方ですか?」

「そうそう。大学生で、友達が少ないなりに学生生活を楽しんでいる子なのよ」

これが、YouTuber・パーカーさんとの出会いだった。

当時、僕はまだ以前の職場に勤めていた。障がい者枠で入職し、何かと配慮してもらいながら働いていた。でも、他人と働く

もっとみる

その静寂を、泳いでゆけ(Afterimage/Takaaki Izumi)(1636字)

註:本文は、ライナーノーツではない。筆者が本作を通して目にした光景だ。

眠っていないのに、夢を見ることがある。

「アレは、現実に起こったのだ」と思っていたのに、そうではなかったことが、時々ある。あれは、夢だったのか現だったのか。どれだけ現実離れしていようと、判断しかねることがある。

例えば、海の上に立っているとき。

ヒトは海の上に立てないので、やはり夢なのだと思う。けれど、足の裏が水を掴む

もっとみる