職場カウンセラーにおすすめされたYouTuberの話(パーカーチャンネル)(1829字)

「××さん(僕)は、YouTube見とる?」

「はあ、まあ」

パーカーくんって、知ってる?」

「知らないです。YouTuberの方ですか?」

「そうそう。大学生で、友達が少ないなりに学生生活を楽しんでいる子なのよ


これが、YouTuber・パーカーさんとの出会いだった。


当時、僕はまだ以前の職場に勤めていた。障がい者枠で入職し、何かと配慮してもらいながら働いていた。でも、他人と働くという行為自体が、僕にとってアウトだったらしく、しょっちゅう体調を崩していた。


そんな時に、よくお世話になっていた人がいた。職場カウンセラーの先生だ。先生は心理士の資格を持っていて、初対面の人と目を合わせられない僕でも、すぐに打ち解けることができた。僕は、毎日15時になる度、先生のところへガス抜きしに行っていた。


先生は自分の母親と同年代なんだけど、20代の僕よりもSNSに詳しかった。YouTubeでリラックス効果のある動画を教えてくれたり、あとTikTokを勧められたりした。(TikTokは肌に合わなかったので、すぐアンインストールした。ごめん、先生)


そんな中、先生が特に推していたのが、『パーカーチャンネル』だった。
(正式なチャンネル名は、『パーカー/大学生の日常』)


大学生……。
大学生かあ……。


「何年も前に通り過ぎた道ですね」

「私なんか、何十年も前よ。あはは」

「あはは……(笑っていいのか?)」

「でもコレ、おすすめよ。人間関係に苦しんでいるなら、共感できるところがあると思うよ


今まで色んなカウンセラーに出会ってきたけど、YouTuberを勧められたのは、さすがに初めてだった。


「帰ったら見てみ」


という先生の言いつけ通りに、とりあえずチャンネル登録だけしておいた。「とりあえず」というのは、すぐに見なかったからだ。


僕が普段YouTubeで見ているのは、カテゴリでいえばゲームや音楽ばかりで、日常系は見たことがなかった。なんだか、他人の生活を覗き見するような気恥ずかしさがある。


それに、「大学生+YouTube=パリピ」という謎の方程式が出来上がっていたので、パリピが怖い僕はなかなか動画を開けなかった。


結局チャンネルを覗いたのは、先生におすすめされた一週間後だった。


考えなくてもわかることだったけど、動画を開かなくても、サムネイルを見るだけで、ある程度の雰囲気はわかる。サムネイルに映っていたのは、パリピとはほど遠い、素朴な感じのする青年だった。


とはいえ、『ぼっち』を自称しているけど、イケメンなので(?)実は『ぼっち』じゃないかもしれない。


自称なのか真性なのか……。自称だったら即ブラウザバックしてやるこの野郎、と謎の怒りに苛まれながら、僕は動画を開いた。


けれど、彼はたしかに『ぼっち』のようだった。


……いや、まだ動画が始まって1分しか経ってなかったけど。なんとなく、喋り方というか雰囲気というか、『ぼっち』を感じるものがあった。


そんなわけで、僕は『パーカーチャンネル』をチェックするようになった。年下とはいえ、彼のことばの端々には共感するものがあった。先生のいった通りだ。


僕は、人と群れるのが好きじゃない。というか、向いてない。体調を崩すほどに。でも一人でいると、バカにされたり心配されたりするから、時には吐き気をこらえて、加わりたくもない輪に混ざることもあった。


だから、「一人でいることが好きな自分は異端」だと、ずっと思っていた。「友達が欲しい」と口癖のようにいっていたし、実際長年思い込んでいた。(それが本心じゃないと知るまで、だいぶ時間がかかった。)


ちなみに僕は、色々な本を読んだことで「一人でいるのは悪いことじゃない」と知った。でも、学生のときにYouTuberが流行っていたら、かつ『パーカーチャンネル』があったら、もっと早く、大切なことに気付けたのかな、と思った。


ちなみに、最近パーカーさんが本を出したので、早速買ってみた。


文章全体に、ぼっち特有の自意識過剰っぷりが炸裂していて、「わかる……わかるぞぉ……!」となった。(ファンの方々、悪口じゃないので刺さないで下さい。)


そういえば、カウンセラーの先生に、まだ手紙を送っていなかった。働いていた頃に、たくさんお世話になったから、ほとぼりが冷めたら、お礼を言おうと思っていたんだ。


せっかくだから、お礼と一緒に、一言添えよう。


先生が勧めてくれた『パーカーチャンネル』見てますよ、って。
彼の本も読みましたよ、って。

パーカーチャンネル(パーカー/大学生の日常)

7/8更新

ひとりの時間が僕を救う/パーカー(2020年)

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