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詩の集まりみたいなもの

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詩、詩みたいなものをまとめてみました。
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【詩】 真夜中

【詩】 真夜中

真夜中をくすぐる思考の端くれ達 

泡のように浮かんでは消えて
泡のように浮かんでは消えて…

音も無くはじけては
深まる夜に合わせて
その強度は増していく

泡沫の時を楽しむかのように

間断なく立ち上る気泡

音を立てては消えていき
再び浮き上がる

時間を経て発酵された

シードルの甘美な果実味のように

豊満で脆弱な魔力が

意識の隙間をくまなく波立てる

自我に対して無遠慮な思考に
抗う

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【詩】 Bluesのように

【詩】 Bluesのように

見知らぬ土地の雑踏

ほんやりと浮かぶ街灯達

見知らぬ花の香り

見知らぬ人が流れた髪に手をやり

季節を婉然とつま弾いた

サクラはとうに散ることを止めて

宵の時を静々と迎えていた

月は明るく 注意深く  

その時を迎える

急いでいたはずの光の出口から

聞こえてくる…

闇夜に囁く銀飾の不可思議な音色

存在を主張し得ない強さをはらみ

異国の情緒を体に組み込んでいく…

エキゾチッ

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【詩】 赤提灯

【詩】 赤提灯

夜の帳が下りる頃

己とも思えない影に乗り

情けにも似た夜風を浴びる

堰を切ったかのようにさんざめくノイズ

やりきれない自らを投影しているような

滑らかに軋む窓辺の景色

無粋で情緒のカケラもない欠けた満月

  
その曖昧さが

時に心をなぐさめる

 
明かりが灯る道すがら

自然と背中は押されてゆく

不思議だ

秋風の功名

導かれたかのように

目の前を煌々と照らす

ぬくもりを

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【詩】 ブルージーに

【詩】 ブルージーに

文字にも起こせないつまずきを与えたのは一体何?

それとも一体誰?

俺には見えやしない

感じやしない

想像もつかない祈りは

時に冷たさをはらみ

黄金色の陶酔感を紡ぐ

ヒリヒリした頭痛は

孤独の原点を咀嚼する

浮き上がる視線には

虚空を睨む情念をはらんでいる

聴こえる…

力のこもった歌声

それは一杯のカクテルのような

不滅の調和に似た哀しみと罪

その響きに嘘はない

その

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【詩】 グラス

【詩】 グラス

乾いた空気が注がれる

グラスに並々と

浮き立つ気泡が

私を夢中にする

一杯のワインよりも赤く
ウイスキーよりも琥珀色で

余裕たっぷりに
透き通るような笑みで
私に微笑みかけてくる

季節の移ろいに合わせるように

その味は目を通り越し
肺に達して 鼻腔をすり抜ける

すり抜けた意識に
フラフラと浮かぶ
街の落陽の満ちた甘み

全ての通過点のように
湿り気を帯びたグラス

そのグラスに映る

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