【詩】 グラス
乾いた空気が注がれる
グラスに並々と
浮き立つ気泡が
私を夢中にする
一杯のワインよりも赤く
ウイスキーよりも琥珀色で
余裕たっぷりに
透き通るような笑みで
私に微笑みかけてくる
季節の移ろいに合わせるように
その味は目を通り越し
肺に達して 鼻腔をすり抜ける
すり抜けた意識に
フラフラと浮かぶ
街の落陽の満ちた甘み
全ての通過点のように
湿り気を帯びたグラス
そのグラスに映る眩しいライトよりも
底に沈む香りに生きた心地がする
空気が飲み干されることを欲し
澄み切った濁りを隠さずに
グラスは全てを見つめている。
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