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書評・「科学的」は武器になる 〜世界を生き抜くための思考法〜
あまり身の上の話は得意ではないのだが、きょうはしてみようと思う。
七年ほど前、毎日ホールで行われたトークイベントで、早野龍五先生とお会いした。Twitterでは散々一方的にお世話になっていたのだが、お会いするのは初めてだった。
ツイートに滲み出る、実直で飾らないお人柄そのままの和装紳士に、初対面という気があまりしなかったのは、SNS特有の距離感のせいだろうか。
イベント後の交流会で、以前か
書評・チェイサーゲーム
江戸後期の歌人にして僧侶、良寛和尚には嫌いなものが三つあった。ひとつは歌詠みの歌。ひとつは書家の書。ひとつは料理屋の料理、と。
のちに芸術家、北大路魯山人が『料理芝居』と題した文の中でこれを引用し
「料理人の料理とか書家の書というようなものが、いずれもヨソユキの虚飾そのものであって、真実がないからいかんといっているに違いない。つまり、作りものはいけないということだ」
と説いた。
しかし同時
書評・エンターテインメントという薬
シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』の終幕、悪戯好きの妖精パックが観客に告げる口上は有名である。
われら役者は影法師、皆様がたのお目がもし
お気に召さずばただ夢を、見たと思ってお許しを。
つたない芝居でありますが、夢にすぎないものですが、
皆様がたが大目に見、おとがめなくば身のはげみ。
私パックは正直者、さいわいにして皆様の
お叱りなくば私もはげみますゆえ、
皆様も見ていてやってくださいまし。
書評・白暮のクロニクル
二十世紀初頭。イギリスの推理作家ロナルド・ノックスが、その著書『探偵小説十戒』に記した、推理小説のルールというものがある。
・犯人は物語の当初に登場していなければならない。
・探偵方法に超自然能力を用いてはならない。
・犯行現場に秘密の抜け穴、通路が二つ以上あってはならない。
・未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない。
・中国人(超常的な怪人)を登場させてはならない。
書評・背すじをピン!と
まず白状する。私が本作に最も惹かれた点。それは、いわゆる『嫌な奴と嫌なこと』が登場しないことだ。
ストーリーを盛り上げるコツのひとつは、起きて欲しくないことが起きることだと思う。悪役であったり天変地異であったり事故や怪我であったり、形態は様々だがおよそ主人公の進行を阻害するものだ。
題が競技ダンスなのだから、起きて欲しくないことなど多々あるだろう。誰かが膝に爆弾抱えていたり、敵対キャラが靴紐
書評・SKET DANCE
学園ものである。が、ラブコメ色は皆無である。
部活が中心である。が、全国を目指すようなこともない。
ドタバタギャグである。が、時には胸の奥を覆うようなシリアスな話もある。
どないやねん!と突っ込みが来そうな紹介だが、残念ながらすべて事実なのだ。本作はこれらをまぜこぜにしつつ、しかと一本の作品にまとめあげた、青春SFギャグストーリーの痛快な成功例なのだ。
ちょいと自由すぎやしないか?とい
書評・ナナのリテラシー
まず身の上話を一席。
私がゲーム業界に興味を抱くようになったきっかけは、本書の作者が週刊ファミ通誌で連載していた『あんたっちゃぶる』という漫画だった。
作者自らの取材や体験を綴るルポスタイルが主体であり、業界のきわどい話が聞けたり、ゲームと縁も所縁もないような内容であったり。とにかく思春期の私に、知らない世界を存分に垣間見せてくれた。
そして本書を読み終えて思う。これはルポ漫画なのではない