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日記

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愛と渾身のうらみ
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逆襲

とてもかわいいバスボムをプレゼントしてもらった。なんでもない日曜日にひとつだけ使った。湯船に浸けると、それはすぐにしゅわしゅわと音を立て、カラフルな紙のようなものを広げながら溶けていった。湯船に凛と浮かぶものの正体は花びらだった。そのバスボムの中にはたくさんのドライフラワーが詰まっていたみたい。しゅわしゅわ鳴りながら、湯船がみるみるうちにクリーム色に飲み込まれていく様子はまるでクリームソーダの逆襲

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やさしさとやさぐれ

「飯おかわり!二口!」と言ったおじさんに二口分くらいのご飯を持っていったら「多いわこれ」と文句を言われたけどほんっと馬鹿じゃね〜の!洗い物をしながら、二口分の感覚についてずっと考えていた。「あったかいお茶!」とだけ雑に言い放ったマダムの白髪はなんだかもやしの髭みたいだった。わたしは歳をとっても、髪がもやしの髭になっても、何かをしてくれる人に対して感謝の気持ちを忘れたくないな。一緒に働いていたパート

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✈︎

✈︎

最近気づいたこと 同じ教室で「みんな無邪気だな」と思っていたときにはわからなかったことだけど、それは自分ではない人たちが幼かったのではなく、抱えてる孤独の量が違いすぎるからだった だから、歳上の人とならまだテンションが合うだろうなんてこともないらしい きっと、同じくらい孤独な人や同じくらいの孤独を消化してきた人しか許せないんだと思う 大好きな人と二人で暮らせ

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11月24日火曜日

あっ!という間にすぐに沸くティファールが沸くのを待てずに、ぬるいインスタントスープを飲む。よく、本当によく、バイト先に傘を忘れるもんだから、二刀流で帰ることが本当によくある。今日もそれでいて強くなった気分でいた。プレミアム・ファンタとか言われるとどうしても欲しくなるし、やっぱりバイト仲間には打ち解けられないまま、まわりの楽しげな会話を聞きながら、わたしはわたしの内側に引きこもっていろいろなことを考

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二粒

土曜、久しぶりに行った家族旅行では、自分がいかに成長したか、変わったか、をつくづく思い知った。刹那的な幸せを許し、何かが終わっていくのを感じた。幸せで、切なくて、充実した時間だった。
日曜、高校生の頃大好きだったバンドのライブへ行った。メンバーが二人抜けるため、現体制では最後のライブ。死ぬほど好きだったバンド。生きてしまえるほど好きだったバンド。やっぱり、その節目は悲しいもので、さみしくて、いろん

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はじまりの日

はじまりの日

本日は、授業が再開した日、そして久しぶりのアルバイトの日でした。
わたしは地元のこじんまりとした用品店で働いています。中学の同級生のお父さんのお店。今日は、若ママさんとシフトが同じだったので、暇な店内にぽつんとあるたったひとつのレジを前にして、膝の力を抜きながら、ふたりでおしゃべりしていた。
若ママさんは「もうすぐ子どもの誕生日なんだ。12月25日が誕生日だから、クリスマスのお祝いは24日にして、

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バッドモーニング

叫び声で目が覚めた ボケてしまったおじいちゃんの奇行に飛び交う家族の声で、目を覚ました おじいちゃんは、むやみに電話をかけたがる 叫び声が止み「ブチっ」と聞こえた 電話の元線が引っこ抜かれていた やれやれと思いながら、自分のいちにちをなんとか始めようとする 自分のいちにちをなんとかこなそうとする 朝ごはんは食べずに、やっておかなかった宿題を急いで終わらせる 一限目、外国語の講師が、沈黙を五秒数えて

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おじいちゃんが徘徊した!

今日は一日中ひまだった。
お昼時に起きて、映画を二本観て、油絵にまた一色足したりした。
夕方、気づいたらおじいちゃんがいなくなってた。ちょうど帰ってきた母と父と、近所を探しにいった。足が悪いおじいちゃんは、もうまともには歩けないけど、庭にも近所の畑にもいなくて、困っていたところ、ご近所さんから電話がきた。近くのお寺にいるらしい。とっくに死んでしまったご先祖様のことばかり考えてるおじいちゃんを責める

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街と映画とアムール

街と映画とアムール

こころがやわらかすぎる日にゃ、街の雑踏は耳をツン裂いて、通りすがる人たちの笑い声は、これでもかってほど脳内に反響するね

駅地下、並んだ野菜に群がるひとたち、のそばで別れを惜しんで見つめ合う男女、口を開けたままベビーカーに乗ってる子ども、若い女の子たちのしょうもなく鋭い視線、地面の一点を見つめるだけの浮浪者、集まって何やら話し合う警察官、街の至るところが騒がしく、にぎやかで、なんだか不穏だ。ああ

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遺書

遺書ってきくと自殺を連想してしまうかもしれないけどそういうことではなくて、17才のとき、友達が急死した日から、わたしは遺書を携えてる 気に留まったら、わたしは遺書を更新する そこには主に、感謝や愛や、祈りたちがある 明日が来るか不安になれば、夜はひたすらに長い 瞼を閉じて、瞼に再びちからをいれるとき、生きていられたらいい 明日はアトリエにて、へやの家具を好きな色に塗りかえる アトリエと言ってもただ

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こたつのなかで、汗をかく

お部屋の模様替えをした クソつまんなかったはずの部屋が、すこし愛おしく感じた 
畑にたくさんの野菜を植えた お庭にもトマトと紫蘇を植えたよ はやく、芽が出てきてほしい
何も知らない子犬が家族になった 一週間が経ち、わたしは毎朝、ちいさなお鼻にキスをする
おじいちゃんが徘徊した ご近所さんが助けてくれて、慌てる母、参る父を前に、わたしは無言でいた
初恋の人が結婚していた どうでもいいのに切なくなった

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トイレ、ココア、愛と音

トイレ、ココア、愛と音

「あんたが使ったあと、水がちょろちょろ出っぱなしなのよ。レバーは軽く押してね。」

ここ最近、何度もそう言われてたのだけど、また水がちょろちょろ出っぱなしになっていた 軽く押したのになぁ…と思いながら用を足したあと、水を流してから数分間便器と向かい合った 水が止まるか確かめなければ、水が止まるのを見届けなければ、と思った それにしても水は一向に止まってくれないので暇つぶしに踊った トイレでひとり踊

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平日二日目らしさ

平日二日目らしさ

お昼休み、顔見知りの男の子とすれ違って声をかけてもらったのに、ごもってきょどって目を伏せてしまった すれ違ったあとの20歩目くらいまで後悔した 30歩目くらいまで反省した

日が暮れるまで、図書館で勉強した 今までの小テストの復習をしてたら、とある一枚にだけ教授からコメントが書かれていた めずらしいので気になって読んでみると、思い出すべきことを思い出した 小テストの欄外に、お気に入りの映画につい

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今日は、明日の練習日

今日は、明日の練習日

新しい服を着た 気分はるんるんだった それなのに、今朝の名城線一両目内はとてつもなく臭かった 300日目のおかずのにおいがした どうか、新しい服ににおいがつきませんように、とそっと手を合わせた 瞳の色も眉毛の濃さもわからないどっかの神さまに願った また、ぼちぼちな一日が始まり孤独は深まり資源は減りゆくのだ と、ぼんやり覚悟していた
 
 

 

イヤフォンで音楽を聴いていた帰り道 キ

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