逆襲

とてもかわいいバスボムをプレゼントしてもらった。なんでもない日曜日にひとつだけ使った。湯船に浸けると、それはすぐにしゅわしゅわと音を立て、カラフルな紙のようなものを広げながら溶けていった。湯船に凛と浮かぶものの正体は花びらだった。そのバスボムの中にはたくさんのドライフラワーが詰まっていたみたい。しゅわしゅわ鳴りながら、湯船がみるみるうちにクリーム色に飲み込まれていく様子はまるでクリームソーダの逆襲だった。かわいくて、すてきで、間違えて飲んでしまいそうだったし、もういっそ間違えて飲み込んでしまおうかとも考えた。
湯船から立ち上がると、黄色い花びらと小さなキラキラがやさしく肌にくっついていて、甘いバニラのにおいが鼻の奥にあって、もう何も要らなかった。次にまばたきをするまではそう思っていた。十五分間、バスボムにだけ全てを許されている気がしていた。


こぼればなし:

のぼせた。紫色の小さな花びらが、ぎゅっと萎れた状態で胸にくっついているのを見たとき、虫の死骸かと思って焦った。終わりがけ、のぼせて立ちくらみながらも、下着姿で金網を片手に花びらを掬うわたしは滑稽かもしれなかったが、それすらも愛おしい時間だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?