やさしさとやさぐれ

「飯おかわり!二口!」と言ったおじさんに二口分くらいのご飯を持っていったら「多いわこれ」と文句を言われたけどほんっと馬鹿じゃね〜の!洗い物をしながら、二口分の感覚についてずっと考えていた。「あったかいお茶!」とだけ雑に言い放ったマダムの白髪はなんだかもやしの髭みたいだった。わたしは歳をとっても、髪がもやしの髭になっても、何かをしてくれる人に対して感謝の気持ちを忘れたくないな。一緒に働いていたパートのおばさんがとってもやさしくて、物腰のやわらかすぎるところが母親に似ていて、どうしようもなく労りたかった。「変わります!やります!」と言っても「いいのよ。大丈夫よ。」と言ってくださって、たくさんのことを優しく教えてくださった。和食料理店だから、和柄の割烹着を着て働くのだけど、前髪までくるんくるんのパーマをかけたわたしは割烹着がとことん似合わなくてあーあ、残念!うんざりするほどへんてこりんで、むしろ気に入っている。本日三組目にやってきたおばあさんは、どこかのショッピングカートを押したままやってきた。たしかに歩行機がわりにもなるよね。スーツを着た若い男性ふたりが、お会計を終え店を出る際、「ありがとうございました!美味しかったです。またお願いしますね。」と目を見て伝えてくださり、とっても嬉しい気持ちになった。着替えようとしたら、女子更衣室のわたしのロッカーに蜘蛛がいて、閉店後の商業施設内に響くほど叫んだ。コートには蜘蛛の巣が張られていた。まいった、匠の技だ!帰り道の半月は力強く光っていて、そのまわりだけ夜空がグレーだった。あの子より優しくいられたら、あの子より女の子らしくいられたら、と思っていたけどもうきっぱりやめた。こたつで寝落ちする日が続いている。最近は元気がないのだけど、日々にはユーモアがあって、更衣室には蜘蛛がいる!今日はベッドで寝る。

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