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マルクス・アウレリウス・アントニヌス

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自省録読んだことないです
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無傷な夜

無傷な夜

この街には、情報量が多すぎる。

昼間には、燦々と照りつける陽光を健気にも跳ね返さんとしていたアスファルトの歩道。もう、時刻は優に22時をまわっているというのに、いまだにアスファルトに居残った賞味期限切れの熱が馴れ馴れしく私の足を伝っている。思わず、履き慣れたコンバースもペタペタ、擬音語をつけてしまいたくなるくらい歩みがのろまだ。

時折、無機質な住宅街にポツリポツリたたずむ街灯がガッツポーズを作

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空が青いからに決まってるじゃない

よく晴れた伊豆の、8月の海を思い出す。

足早にバスを降りるなり、コンクリートの階段がわたしたちを砂浜へと導いた。ビーチサンダルを突っかけた素足にちいさな石ころのひとつずつが絡みついてくるのを感じながら、よいしょ。登り切るとそこには、藍染の桶をひっくり返したみたいな青空と、珊瑚の屑でできた目が痛くなるほどに白い砂浜が一面に広がっていて、視界はそのコントラストに圧倒される。

歓声を上げ、手に持って

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外国語みたいだ

外国語みたいだ

外国語みたいだと思う。

あら外国語みたいかしら、そうかしら。外国語みたいだなというときどこの国あるいは地域から見た「外国」なのかしら、「外国」とはちょっと乱暴すぎるくくりなんじゃないかしらそもそも何かの比喩で外国語を使うときそれが何の比喩なのかによっては言語という概念を用いるのはその言語を母語とする人への冒涜なんじゃないかしらその概念の内側に入り込むことが絶対にないと断言できるのかしら何をもって

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鳶色のコーヒーフロートからエフェクトを外した話

鳶色のコーヒーフロートからエフェクトを外した話

あ、これ、私みたい。

iPhoneで撮った写真の彩度を上げて、コントラストを変えて、ストラクチャを強めて、フィルムカメラみたいな加工をして。あれ、こんなエフェクトあるんだ。そのアプリ──もっと高精度なレタッチするならパソコンで何かソフト入れなきゃなあ、でもその前にカメラを買うところから始めなくちゃなんて考えながらもアプリに甘んじているのだけれど──をスクロールしてみれば、「渦巻き」なんてエフェク

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