ちよこ

はやくみうらじゅんになりたい🦭

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  • この味がいいねと君が言ったから

    サラダ記念日読んだことないです

  • マルクス・アウレリウス・アントニヌス

    自省録読んだことないです

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空が青いからに決まってるじゃない

よく晴れた伊豆の、8月の海を思い出す。 足早にバスを降りるなり、コンクリートの階段がわたしたちを砂浜へと導いた。ビーチサンダルを突っかけた素足にちいさな石ころのひとつずつが絡みついてくるのを感じながら、よいしょ。登り切るとそこには、藍染の桶をひっくり返したみたいな青空と、珊瑚の屑でできた目が痛くなるほどに白い砂浜が一面に広がっていて、視界はそのコントラストに圧倒される。 歓声を上げ、手に持っていたタオルやらサングラスやらを放り出して、一目散に海へ走っていく仲間たち。なおも

    • やうやう白くなり行く

      うすくオレンジの混じった白が優しく夜の紫を溶かしていく、その空の色がとても綺麗に感じる明け方には、寝ているのなんかもったいない気持ちにもなる。 というのは、眠れないだけなのだけれども。この時間まで眠れないのはいつぶりだろうか。すでに時刻は4時29分、けれど明日は土曜日だからいいのだ。いや明日じゃなくって今日か。 最近は紅茶を丁寧に淹れるのに凝っていて、貴族のティータイムよろしくきちんとタイマーで時間を測って蒸らしたら、冷凍庫から氷を取り出して、ぽとり。かき混ぜればりんりんり

      • 帰省に憧れがある話

        私たちはそのとき、並んで九州の山道を歩いていた。もうすぐいくと砂浜に面したレストランに突き当たる。日の入りの時間にはゆるやかに赤い陽射しが溶けていく海を眺めながら、彼はモヒートを、私はビールを飲むのだ。 2022年の夏休み、お盆のムードは真っ盛り。彼の帰省に付き合って、私ははじめての九州に、都会と自然が共生するアウフヘーベンに、酔いしれていた。 アクティビティの類は正直、苦手だけれど、アウトドアは好きだ。自然を感じるのは一瞬では終わらないし、そこには余白があるからして。ア

        • 白河夜船

          学生時代、現実に即したファンタジーSFみたいな夢ばかりみていた。三田線の終点にドラゴンが眠っていてみんなが三田線を使えないから目黒線を乗り継いでゼミの仲間と倒しに行ったり、裏にある山の頂上まで空飛ぶ絨毯で飛べたら奴隷が解放されるからと仲野太賀と若葉達也といっしょに絨毯に乗り込んだり。そもそも三田線の終点駅にドラゴンが眠れるスペースなどないし、裏にある山など標高が知れているから仲野太賀も若葉達也も歩いて行こうと提案するはずなのだが。 でも学生時代は終わり、全く現実に即したファ

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        空が青いからに決まってるじゃない

        マガジン

        • この味がいいねと君が言ったから
          2本
        • マルクス・アウレリウス・アントニヌス
          4本

        記事

          雑記として、油絵具

          月曜日。 界隈で有名らしいデザイナーさんとの打ち合わせでPOPEYEを読んでいるひとがいっぱい住んでいる街へ。そんな街を闊歩するときはなんだか違うスイッチが入ってもしまうから改札を降りたら速攻お手洗いに駆け込んで、いつもは顎のラインで内巻きに揃えているボブをワックスで遊ばせていたらこんな街で秋晴れの午前中にエアロスミスを聴いているべきなんかじゃないような気がしてきたからちょっと悩んで小沢健二を最大音量に、仕上げにはマスクのない世界だったらガムをクッチャクチャ言わせながら歩いて

          雑記として、油絵具

          本当の、わたしのあたまのなかの

          充満。今朝、電車を降りたら、笑うあなたは横顔で、君の香りがしたよと続ける。わたしの目はかつかつと歌うパンプスのつま先を眺めているようで本当のわたしのあたまのなかの目は、あなたの目尻に浮かぶ、その優しい笑い皺を視界いっぱいに捉えている。まだうら暖かい春先のなんでもない木曜日、木々が揺らす葉がやわらかにこすれ合う音を聴きながら、並んで歩く。 追憶。わたしの香り? わたしたちはふたりで歩いているのに、お互いがお互いを見あうことをしない。僕が覚えている限りの最初の記憶はね、あなたは

          本当の、わたしのあたまのなかの

          2月のピント

          なんだか今日はやけに解像度の高い夜空が広がっていたから、センチメンタルに引きずられることしきりだった。2月の夜空はいつも遠く澄んでいて、時折頬を撫ぜる冷たい風と寒さのせいか、広がる景色の輪郭もやけにくっきりして、目に映る全部が鮮やかに感じられる。 アスファルトの歩道を、タッセルのついた黒いローファーで踏みしめる。いつだったかは思い出せないけれどなんだか見たことのある景色で、視界には似たような賃貸マンションと等間隔でそびえ立つのっぽの電柱たちが映るだけ。けれど最近見た景色じゃ

          2月のピント

          外国語みたいだ

          外国語みたいだと思う。 あら外国語みたいかしら、そうかしら。外国語みたいだなというときどこの国あるいは地域から見た「外国」なのかしら、「外国」とはちょっと乱暴すぎるくくりなんじゃないかしらそもそも何かの比喩で外国語を使うときそれが何の比喩なのかによっては言語という概念を用いるのはその言語を母語とする人への冒涜なんじゃないかしらその概念の内側に入り込むことが絶対にないと断言できるのかしら何をもって外は外になるのかしらなどとコンビニのコーヒーばっかり飲んでいるのに意地でもドトー

          外国語みたいだ

          無傷な夜

          この街には、情報量が多すぎる。 昼間には、燦々と照りつける陽光を健気にも跳ね返さんとしていたアスファルトの歩道。もう、時刻は優に22時をまわっているというのに、いまだにアスファルトに居残った賞味期限切れの熱が馴れ馴れしく私の足を伝っている。思わず、履き慣れたコンバースもペタペタ、擬音語をつけてしまいたくなるくらい歩みがのろまだ。 時折、無機質な住宅街にポツリポツリたたずむ街灯がガッツポーズを作ったどこかの議員の育ちの良さそうな笑顔を照らし、なぜか道端に投げ出された三角コー

          無傷な夜

          娘さんたち気をつけな、コーヒーの飲み過ぎにゃ

          香ばしい香り薫れば、ほろ苦い恋にも似ていて。 大好きなサニーデイ・サービスを流しながら、いつか神戸の丘から見た街の光みたいな、キラキラのネイルを塗り終わった。キラキラの神戸の光を5本指に飼っているので、最強だが? という気分で、コミュニティを卒業するときに後輩たちがくれたプリザーブドフラワーの隣にかけられ、色彩で負けすぎたカレンダーに一瞥をくれる。毎日使うならシンプルが一番だと、祖父はよく言っていたっけ。明日は、連休最後の日だ。 朝、7時に起きよう。私の部屋は大きな出窓付

          娘さんたち気をつけな、コーヒーの飲み過ぎにゃ

          鳶色のコーヒーフロートからエフェクトを外した話

          あ、これ、私みたい。 iPhoneで撮った写真の彩度を上げて、コントラストを変えて、ストラクチャを強めて、フィルムカメラみたいな加工をして。あれ、こんなエフェクトあるんだ。そのアプリ──もっと高精度なレタッチするならパソコンで何かソフト入れなきゃなあ、でもその前にカメラを買うところから始めなくちゃなんて考えながらもアプリに甘んじているのだけれど──をスクロールしてみれば、「渦巻き」なんてエフェクトが端っこに、ちょこんと正座していた。 木漏れ日の森は新緑で、木々を揺らす風の

          鳶色のコーヒーフロートからエフェクトを外した話