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Mikoto
2024年6月23日 10:16
『ピンポーン』「はーい」 私は、インターホン呼び出され、扉を開けた。 「こんばんは」 その瞬間。ちくっと、おへその辺りから体中に冷たい何かが巡る。まるで氷水を流し込まれているかのような感覚。「どうしたの、お姉ちゃん」 私の弟の声が、背後から聞こえた。「……いァ……あぁ、か」 私の声は途切れ途切れで、言葉にならない。さっきまで冷たかった腹部は、今やマグマのように熱く、痛む。だから声
2024年3月23日 22:23
「プレゼントちょうだい」 君は言った。なんて厚かましいやつなのだろうか、プレゼントはお願いしてもらうものではないだろうに。「……は?」 そのあたりまえだ。夏樹は唇をぽかんと開けて漠然と君を見ている。急にこんなことを、娘の誕生日に言われたらビックリしてしまうに決まっているのだ。 カラフルな風船がにぎやかに飛び回っていた。夏樹は、はしゃいでいる娘を横目にしながら、君の言葉に目を通す。
2024年2月27日 23:58
和風屋敷に轟く足音が、荘厳な空間に重みを加えた。襖の奥には、鋭い眼差しを放っていて、威厳のあるお祖父様が居座っていた。その左右に合計十人がそそくさと綺麗に並んで、座布団に足をたたんだ。 僕は襖の外からその光景を見ていて、へそと膝の先がお祖父様に向いている。「みな、集まったな」その声を聞いて背筋がすんと伸びる。「今日、皆を集めたのは、他でもない良行のことだ」いきなり、ここにいる人間の視線
2024年2月18日 14:31
空虚のみがその場にあった。 どこを見ても暗闇が広がっている。体の感覚はなく、歩いているのかすらわからない。手探りで辺りを探索するが、何もなく、もはや自分という存在がこの場にあるのか不安になった。 しかし次の瞬間、僕は眩い光に包まれた。* 20〇〇年1月1日、月曜日。午前5時52分10.00秒。時間は セットされた。 草木はとても寒そうに揺れていて、至る所から美味しそうな匂いがした。
2024年2月9日 19:18
第二章 貝殻※この小説は第二章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!第一章のリンクはこちらです↓_________本編_________ 今朝、彼女から再び連絡があった。 務所から解放されたのは三日前のことだ。それっきり一葉から連絡はなかった。僕は牢獄で初めて会った一葉から、娘の存在を知った。一葉は僕の遠い親戚だと言った。確かに名
2024年2月8日 23:07
春はまだ先。今年の初詣におみくじを引いた。すると、恋愛の箇所にそう書かれてあった。 かなり、私はシュンとした。がっかりしてしまった。私には去年からずっと同じ「好きな人」がいて、その人に自分を見てもらおうと努力していた。でも、上手くいかなくて、常日頃ドキドキで心を痛めていた。 勉強に誘ってみた。ダメだった。話題を振ってみた。いつも私から。全部LINEで会話する。実際に会って目を合わせると、
2024年2月7日 23:19
ガヤガヤ音が聞こえた。 手先がこそばかった。 耳元が小刻みに揺れて、彼を待っていた。 大きなあくびをして毛を逆立てた。 うるさかったけど、居心地が良いい。
2024年2月6日 23:51
_________本編_________第一章 僕の面倒なところ、勤勉なところ 僕には娘が二人いる。しかしそれをついさっき伝えられた。今まで伝えられなかったのは、僕が罪人だからだろう。僕はたくさんの人を殺した。守れなかったんだ。 そんな僕に、今更娘の存在を明かして来たということは、何か困ったことが起きたのだろう。正直面倒ごとはごめんだ。できることならこのまま牢獄の中で一生を終えたい。誰
2024年2月3日 15:22
耳を劈く悲鳴が聞こえる。「僕の出番だ!」 エンジンがかかり、ガレージのメカニカルな扉が開く。チカっと日の光が反射して、ゴーグルが光った。真っ白の歯が弧を描く。その表情は自信に満ちていた。 ハンドルに力を込めて、アクセルを思いっきり踏み込んだ。 車体は弓で射た矢の如く、車道を縫って進む。鮮やかな赤に染っているボディーは長い白線を映した。 現場に到着し、車を勢いよくおりた。そして僕は
2024年2月2日 23:56
冬のひりついた空気を肌身で感じる。日は次第に短くなって、仕事場へ向かう道はもうすでに暗い。やっぱり風も冷たくて隙間を通って首筋をスウっと、通った。 「バイト、憂鬱だなー」と僕は心の中でボヤついた。僕は店に入ると、店長と挨拶を交わし、早速仕事に取り掛かった。 僕の仕事はというと主に接客だ。 今日はお店に、一人もお客さんが来てなくて、僕は無意識につま先と踵が交互に上下してた。いつにも増し
2024年2月1日 23:57
「私だけを見ていて」真剣な眼差しでそう言われた。「絶対にひとりにしないでね」 それが彼女の僕が最後に聞いた言葉だ。 その人は自分のことをよく話す人だった。自慢ばかりするというわけではない。「昨日、お風呂に入らないで寝た」とか「昨日と同じ服を着ているとか」本来隠しておくべきことをよく話してくる。何が目的なのか、僕にはわからない。でも、彼女は何か別のことを伝えようとしているように感じた。
2024年1月31日 23:44
[1200] カビと生ゴミが混じった匂いが、喉の方で痞えているように臭った。これは私が小学校に入学して半月してからの話だ。 凍りつくほど冷たい何かが足先から腰まで、腰から手の先まで登ってきた。 祖母に買ってもらった赤いランドセルはその時すでに鮮やかさを失っていた。 視線をほんの少し下に落とすと、赤と白のボーダー柄の子供用テーブルに置かれた、三百円が目に入った。ジリジリになっている
2024年1月30日 17:59
[1200] 特殊能力を持っている人間は全人口の半数を超えた。 人の持つ力が増して、世界の均衡が崩壊されるものの、能力者が増えてきたことによって落ち着いてきた頃。何の前触れもなく最強の能力者が現れる。 その能力の名は、「コピー」他者の能力を完璧に真似て、使用することができる。ストック数は無限。 現時点での弱点は、コピーするためには相手に触れなければならない。そして、真似た能力の有効
2024年1月29日 23:32
お腹がすいた。甘いものでも食べたい気分だった。「パフェでも食べたいな」 家を出ると外は真っ暗だった。深夜の冷たい空気を肌に感じる。体が凍りそうだった。それでもパフェが食べたかった。パフェの口になってしまっていた。 私はよく深夜に目が覚める。3時とか4時がほとんど。 そしてよく、この時間に起きると甘いものが食べたくなってしまう。 しかし、こんな時間だからか、店はどこもかしこも閉まってい