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[掌編小説]恋の予感

 春はまだ先。今年の初詣におみくじを引いた。すると、恋愛の箇所にそう書かれてあった。

 かなり、私はシュンとした。がっかりしてしまった。私には去年からずっと同じ「好きな人」がいて、その人に自分を見てもらおうと努力していた。でも、上手くいかなくて、常日頃ドキドキで心を痛めていた。

 勉強に誘ってみた。ダメだった。話題を振ってみた。いつも私から。全部LINEで会話する。実際に会って目を合わせると、緊張で意味のわからない言葉が出てくる。

 誰かのためにしたいことが、不可能になろうとすることが怖い。

 やはり私に恋はまだ早いのだろうか。諦める。そんな選択肢が思考によぎる。最後の最後はその選択肢を選んでしまうんじゃないかって不安になる。諦めたくない。

 私はとことんわからないやつだ。本心は諦めたくないって思ってる、でも、現実が不可能と言って、「諦めろ」と告げてくる。

 私はその人に執着してしまっている。その人は私をみてくれているのかな。面倒臭いやつだと思われていないかな。そんなことを小一時間考えてる。

 実は、恋をしたのは初めてだった。どんな発言があっていて、何が間違っているのか私にはわからない。しかも、ずっと私は引きこもりだった。好きな人に限らず、人と目を合わせることすら怖いし、伝えたいことをうまく言葉にできない。私には無理なのかな。諦めるべきなのかな。

 ただただ、辛かった。相手を好きだとわかっているのに、行動にできない。自分の気持ちを伝えられないのは本当に苦しかった。

 そして毎日鏡を見ると友達の言葉を思い出す。

「今日という日は一度きり、恋だって同じだよ。若いうちに恋愛してないと後々ぜったい後悔する!そうでしょ?」

 無責任にも言った。その言葉で私がどれほど苦しんだか。でも、本当のことだ。本当のことだからこそ辛い。

 決心はできてない。でも後悔はしたくない。引きこもって無駄にしてしまった時間を取り戻したい。私は相手の気持ちを確かめる思いで、告白することに決めた。告白に特別な感情はいらない。今はただ好きな人が、自分をどう思っているのか知りたい。そんな思いで、その人に告白した。

 その人の答えは「のー」だった。本気であって、浅はかな告白だったはずなのに、涙が溢れる。こんなのなら、告白なんてしなければ良かった。家に帰っても泣いた。

 その人が私を好きじゃないって確定した。でも、すっきりした。心のモヤモヤは無くなったし、執着することもなくなった。たくさん泣いたから自身もついた。私は諦めなかった。だから強くなれたんだ。

 そして、告白した後の私には、いつだって感じるものがある。それはポカポカと、温かい春のような、「恋の予感」だった。

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