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どっかのだれかのはなしが、あったかもしれないしなかったかもしれないけど、あって欲しかっ…

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どっかのだれかのはなしが、あったかもしれないしなかったかもしれないけど、あって欲しかったかもしれない ような話

記事一覧

遺書 或いはまた

1度死んだなと思うのは、筆を取れなくなった時。 自分でも驚くほどにゆっくりと、無意識のうちに、何も書けなくなっている。 久々に文章を書くと、自分がこの間まで信じて…

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9日前
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短歌3

日課

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4か月前
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短歌2

春は好きですか

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5か月前
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短歌1

絶妙な関係の境目

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5か月前
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思い通りにいかないのなら

思い通りにいかないのなら、死んじまいたいなー と、思うことが結構あります あの人と上手くいかないのなら 今日やる気が出ないのなら この気持ちが伝わらないのなら …

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5か月前
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2月某日、欠片

「次はー、〇〇ー、〇〇ー、」 1つ前の駅ではっと目を覚ます。 カードの残金を見た。 行先まで必要なのは1166円、入っていたのは1045円。 あー足りなかったか、と寝起きの…

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5か月前
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T先生【エッセイ】

いつもは短い創作小説を書いている私ですが、書き始めて気づいたらもう長いこと経っていて、よくよく考えたら教壇に立つ日もそう遠くないのではないか?とか考えまして、今…

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7か月前
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拝啓

拝啓貴方 いかがお過ごしですか。 最近の貴方はどんなものかと、まあ、知る由もないのですが、先程ふと思うことのありましたもので、 これから先のことは、ご内密にお願い…

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8か月前
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溢れるということ

愛が溢れるというのは、こういうことかもしれないと思った。 言葉を大事に生きている私たちが、言葉を使わないで愛を伝えることがあるのか、と思った。 永遠の沈黙の後に…

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9か月前
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現血

血というのは、ほかの何にも例えられない不思議な感じがする。 床に落ちた白い破片を拾って、それが親指の先に当たった後にふと床を触ったら、ぬるりと赤い液体が弾けた。…

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10か月前
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ワールド・ルーズリーフ

彼女はそこに世界を描く。 机の上に広げられたノート。 柔らかな筋肉が紙を滑る音と、世界を創る音。 教室には、彼女の音と教師の声が響いている。 彼女のノートは、まと…

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10か月前
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花を生ける。 この花は、要る。 この花は、要らない。 ここはちょっと、短く。 ここはこれじゃ、足らない。 彼の花器は、完成してるな、と思った。 いや、完成はしてない…

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11か月前
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空想トラベラー

「悪いことをしようか」 彼女はそう言って真直ぐ僕の目を見た。 「悪いこと?」 「そう、悪いこと。」 「例えば何を?」 「終電で帰るとか」 「帰るんだ」 「帰るよ、…

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11か月前
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「 」

『だって、自分だけは自分のこと、愛していたいじゃないですか。』 口から出た言葉に自分で驚いた。 こう考えている自分が不思議なのではない。 これを目の前にいる彼に言…

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11か月前
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パーフェクト・パフェ

好きな人をつくっているものは、全て知りたいと思った。 例えばそのメロンソーダ。 有線のイヤホンから流れている音楽。 度の弱い黒縁のメガネ。 「物語に何を求めている…

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1年前
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学生A

おはよう。 昨日は何をしたんだっけ。 今は何時だろう。 この部屋には時計がないからわからないな。 スマートフォンに電気を注ぐのもやめたんだ。 カーテンは閉めたままだ…

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1年前
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遺書 或いはまた

1度死んだなと思うのは、筆を取れなくなった時。
自分でも驚くほどにゆっくりと、無意識のうちに、何も書けなくなっている。
久々に文章を書くと、自分がこの間まで信じていた文章の形が全く分からなくなる。

言い訳は山ほどある。
でもそれを言ってしまうと、
「言葉にすることは現実逃避の手段だ」
と言っていることになるから言わない。

ふと、自分が生きていた頃のことを思い出して
そうしてゆっくり苦しくなる。

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思い通りにいかないのなら

思い通りにいかないのなら、死んじまいたいなー
と、思うことが結構あります

あの人と上手くいかないのなら

今日やる気が出ないのなら

この気持ちが伝わらないのなら

忘れ物をして怒られるのなら

いなくなってしまうのなら

だって思い通りにいかないのは辛いからさー
と、ボヤいています
どうもがいたって決まってる事だから、どんなに苦しんだって泣いたって無駄なんだから、と
そんなことが分からない子ど

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2月某日、欠片

「次はー、〇〇ー、〇〇ー、」
1つ前の駅ではっと目を覚ます。
カードの残金を見た。
行先まで必要なのは1166円、入っていたのは1045円。
あー足りなかったか、と寝起きの頭でぼんやり思った。
100円と少しの金額が足らなくて、私はたどり着けないのかーと思った。
いや、別に乗越でチャージすれば降りれるのだが。

多分そんな感じだ、私の人生。
せっかく前もって入れて置いたのに足りなかった交通ICカー

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T先生【エッセイ】

いつもは短い創作小説を書いている私ですが、書き始めて気づいたらもう長いこと経っていて、よくよく考えたら教壇に立つ日もそう遠くないのではないか?とか考えまして、今一度、教室に想いを馳せて、廊下側、後ろから三番目の席に着席してみようと思います。

起立 礼 お願いします

教壇に立つのはT先生。教科は国語です。
私が教員になりたい、と明確に考え始めたのは中学生のころですが、なったときのビジョンを想像す

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拝啓

拝啓貴方

いかがお過ごしですか。
最近の貴方はどんなものかと、まあ、知る由もないのですが、先程ふと思うことのありましたもので、
これから先のことは、ご内密にお願い致します。

…なんて、そんな堅い話はやめにして、私たちが大好きだったあの食べ物のお話をしましょう。
わたしね、今でもよく食べるんです。そう、コーヒーゼリー。

背の低い硝子の器にそれを取りだします。
元はひとつの固形だったのを、スプー

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溢れるということ

愛が溢れるというのは、こういうことかもしれないと思った。
言葉を大事に生きている私たちが、言葉を使わないで愛を伝えることがあるのか、と思った。

永遠の沈黙の後に、光の届かない部屋から更に深い暗闇になって、全ての神経があなたに繋がる。

ぷつん、と紙に針で穴を開けた。
またひとつ、もうひとつ、

光に透かして見てみると、それは私たちの星空だった。

そう、こんなふうに。

こんなふうに、私たちは光

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現血

血というのは、ほかの何にも例えられない不思議な感じがする。

床に落ちた白い破片を拾って、それが親指の先に当たった後にふと床を触ったら、ぬるりと赤い液体が弾けた。
どこから弾けたかと周りを見渡すとそれは自身の親指の爪の間で、気づいた途端に痛みがじくじくと現実になる。

おや、と思って人差し指で親指に伝う赤色をつまんだ。
やはりぬるりと人差し指に拡がった。
この「ぬるり」は、自分の血のみに感じる音だ

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ワールド・ルーズリーフ

彼女はそこに世界を描く。

机の上に広げられたノート。
柔らかな筋肉が紙を滑る音と、世界を創る音。
教室には、彼女の音と教師の声が響いている。

彼女のノートは、まとまっていて、見やすくて、なんなら黒板に書かれた手本よりも美しくて、僕の書くのよりもずっと色んなことが書かれていて、受けていたのは同じ授業なのかと疑いたくなるほどだ。

春からずっと隣の席で、僕は窓の外を眺めるふりをしてその手前の彼女の

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花を生ける。
この花は、要る。
この花は、要らない。
ここはちょっと、短く。
ここはこれじゃ、足らない。

彼の花器は、完成してるな、と思った。
いや、完成はしてないんだけれど、何を創ろうとしてるのかが見える。
横に置かれた色とりどりの花たちを、好きなだけ生けて、彩っていく。

私は、要らない花だな、と思った。

「そっか、就活だもんね」

簡単に未来のことを言ってのける。
私は来年の話をするのが

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空想トラベラー

「悪いことをしようか」

彼女はそう言って真直ぐ僕の目を見た。

「悪いこと?」

「そう、悪いこと。」

「例えば何を?」

「終電で帰るとか」

「帰るんだ」

「帰るよ、困るもん」

「まあそうだけど」

「これは終電なの。」

時刻は10時半。
終電には程遠い。

「そう、私はまだ未成年で、クラスの男の子とどこか遠くへ行こうって電車に乗るの。」

「どこへ」

「どこか遠くへよ。」

ふう

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「 」

『だって、自分だけは自分のこと、愛していたいじゃないですか。』

口から出た言葉に自分で驚いた。
こう考えている自分が不思議なのではない。
これを目の前にいる彼に言ったことが不思議だった。

毎日髪型を変えるのも、ピアスを忘れずつけるのも、褒められなくてもネイルをするのも、あれもこれも全部自分への愛だ。

「誰も私を一番にしてくれなくても、自分だけは一番だって、思ってあげたいじゃないですか。」

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パーフェクト・パフェ

好きな人をつくっているものは、全て知りたいと思った。

例えばそのメロンソーダ。
有線のイヤホンから流れている音楽。
度の弱い黒縁のメガネ。

「物語に何を求めているのかによって、面白さは変わってくるんだよ」

彼はいくつか好きな作品をあげた。
なるほど分かる、というものもあったし、分からんと思うものもあった。
たまにいじる箱庭ゲームが画面に通知を入れる。

彼は「創造」でつくられているんだな、と

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学生A

おはよう。
昨日は何をしたんだっけ。
今は何時だろう。
この部屋には時計がないからわからないな。

スマートフォンに電気を注ぐのもやめたんだ。
カーテンは閉めたままだけど開けたくない。
僕は何か解らないけど、たった一つのもののために、なにか、わからないけど、それをずたずたに切り裂かれて、遠く、遠くに投げ捨てられたような気がしたんだ。

いや、遠くに投げられたら良かったんだけど、そいつは僕のことをず

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