パーフェクト・パフェ

好きな人をつくっているものは、全て知りたいと思った。

例えばそのメロンソーダ。
有線のイヤホンから流れている音楽。
度の弱い黒縁のメガネ。

「物語に何を求めているのかによって、面白さは変わってくるんだよ」

彼はいくつか好きな作品をあげた。
なるほど分かる、というものもあったし、分からんと思うものもあった。
たまにいじる箱庭ゲームが画面に通知を入れる。

彼は「創造」でつくられているんだな、と感じた。
みたことの無い世界をみるのが好きなんだな、と思った。
あげられた映画や小説は全て空想の世界だ。
もしくはもう体験できない時代の作品。

私は、私が好きなものをつくる彼を、つくっているもので、私をつくりたい。

美味しいと手を伸ばしていたお菓子。
行くべきだと言っていた美術館。
名前も知らなかったバンド。
私は心にスタンプカードを押すみたいに手に取って、そうして全部をたべる。

そうしたら、私も彼のようなものがつくれるかもしれない。
ううん、そうじゃない。
全部ぜんぶ取り込んで、あわよくば彼につくられたい。

彼のかいた歌詞に出てきたパフェの、1番上の生クリームをすくって口に運ぶ。
あまったりー。と思った。
でもまあ悪くないな。
パーフェクトとは言い過ぎだと思うけれど。

透明の底は見えてる。
私はまた何か別の世界を食べにいく。
ひっそり、でも貪欲に。
ちょっといただきますよ、と思いながら、人が知らず知らずに零している欠片を拾っては口にはこぶ。
それを噛んで、弾けた味と、目の前の姿を重ねるのが大好きだ。

最後のひとくちをぱくりと食べる。
綺麗に食べきる。
グラスに付いたコーンフレークもすくって食べる。

うん、ごちそうさまでした。
あなたの歌の、味がしました。

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