学生A

おはよう。
昨日は何をしたんだっけ。
今は何時だろう。
この部屋には時計がないからわからないな。

スマートフォンに電気を注ぐのもやめたんだ。
カーテンは閉めたままだけど開けたくない。
僕は何か解らないけど、たった一つのもののために、なにか、わからないけど、それをずたずたに切り裂かれて、遠く、遠くに投げ捨てられたような気がしたんだ。

いや、遠くに投げられたら良かったんだけど、そいつは僕のことをずたずたに切り裂いたくせに、静かに、それを、置いたんだ。
僕らが出会った時よりずっと、壊れちゃいそうなくらいの優しさで。

僕は見つめることしか出来ない。
もう何か言うことは許されない。
僕は君に同じことをしたくないんだ。
まあ、出来ないんだけれど。

本当に、本当に、僕は、僕は彼女を、好きで、好きで、好きで、好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで堪らなくていつか壊れてしまいそうでもう壊れている気もするんだけれど、深い沼の中に片足突っ込んで、気づいたら抜けなくなってて、決して気持ちのいいものでは無いのに、温かくて、だけど。
きっと、君もそうだったんだろう。
僕だけが知っている、不快と温もりではなかったんだろう。

君は僕よりずっと、勇敢だったんだ。
僕よりずっと迷いなく、自分が突っ込んだ足元のその泥を抱き締めて顔をうずめて呼吸を捨てたんだ。
数パーセントの毒のせいにするなよ。
とっくに身体から抜けてた癖に。

「普段はね、この道は通らないの。」

僕だけだったらいいのに。
僕だけが知っていたら良かったのに。
君は知ってるのかい、僕等だけの道を。
知ってるだろうな。
つまりは僕等だけの道じゃ、もう無いんだろうな。
彼女はそういう子だから。
そういう子だって解らないほど、僕らも馬鹿じゃないから。

黙っておくよ。
お前等だけの道にしてやるよ。
だから今日だけ、僕に何も言わないで。
明日からは演り切るから。
馬鹿になった君を、本心から、そう、本当に心から、応援しているんだよ。

僕だって、馬鹿になりたかったさ。

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