花を生ける。
この花は、要る。
この花は、要らない。
ここはちょっと、短く。
ここはこれじゃ、足らない。

彼の花器は、完成してるな、と思った。
いや、完成はしてないんだけれど、何を創ろうとしてるのかが見える。
横に置かれた色とりどりの花たちを、好きなだけ生けて、彩っていく。

私は、要らない花だな、と思った。

「そっか、就活だもんね」

簡単に未来のことを言ってのける。
私は来年の話をするのが、こんなに難しいのに。

「そうですね だからここにもいつまでいるか、って、思ってます」

私がいなくても完成したその世界は、見蕩れてしまうくらいに綺麗だった。

私の器がここにあるとして、彼をひとつ浮かべたら、何も置けなくなってしまうだろう。

逆に私をそこへ置いたら、ひとたび美しさは潰えるのかもしれない。

だったらもうこれでいいな、と思った。
隣に咲いた花を、わざわざ摘み取るようなことなんてしないで。
私もこのまま、このまま、ここに咲いて。

散っちゃえ、全部全部。
いっそこのまま散っちゃえ。
そしたら一瞬、見てくれるでしょう。

そしたら一生忘れられない景色になれるかもしれないでしょう。

「おやすみなさい」

なんて、そんなことも出来ずに、

「おやすみなさい」

多分ひっそり、萎んでいくだけ。

ぱちん。

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