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或る若者の思索

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私が日常生活の中で感じた何気ないことを、日記よりちょっとだけ推敲して書いてます。
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2022年4月の記事一覧

ノン・アルコール・キッチンドランカー

ノン・アルコール・キッチンドランカー

 毎日、仕事から帰って、ご飯を作っている。冷蔵庫にある食材と調味料を適当に品定めして、ときにはネットでレシピとかを調べて何を作るか決める。作る、といっても大概は、手軽にできる名もなき炒め物なんだけれど、手間の割に大きな満足感が得られる。休みの日には、少し本腰を入れた料理を作ることもあるが、平日はやっぱり効率と保存重視の作り置きを念頭に置いた料理になりがちだ。

 料理を作ったり、お昼の弁当を作るこ

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迷子人と雨のルート

迷子人と雨のルート

 新居に越してきて2度目の日曜日。役所に行く用事があったので、朝起きて午前中に買い物を済まそうとしたらなんと雨。通りで朝から部屋が暗いと思ったんだ。とりあえず洗濯物を部屋干しにして、小さな折り畳み傘を持って近所のスーパーへ駆けた。
 12時まで雨の様子をうかがうことにした。役所まではここから電車で2駅。そこから10分ほど歩かなければならないので、雨が降っていないに越したことはない。それにしても、慣

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ご飯が炊けるまで

ご飯が炊けるまで

 23時前になって、明日のお弁当に詰める白米を炊くのを忘れていた。慌ててお米を計量し釜に水を張り、炊飯器をセットする。
 無洗米なので研ぐ必要は無い。それなら世の中のコメ全てが無洗米でもいい気がするのだが、米は研ぐべきものなのだろうか。米研ぎ過激派でもいるのだろうか。

 一人暮らしを再スタートさせて最初の平日。仕事終わりにドラッグストアやらスーパーやらに寄って、家に帰ってからご飯を食べて皿を洗っ

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流れのない川のように

流れのない川のように

 転職して昨日で丁度1年経った。特に深く考えずに前の仕事を辞め、特に深く考えずに今の職場に就職し、特に深く考えずに仕事をしていたら、いつのまにか2度目の桜が散る季節になっていた。

 1年も仕事をしていると、職場でのポジションはある程度確立できたし、取り引き先のお客さんたちとも軽いジョークを交えられるようにもなり、微弱ながらも信頼関係のようなものは築けた。「なつきぐあい」で言うところの、やつあたり

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揺れて思い出す

揺れて思い出す

 揺られたくなってきた。ときどき思う。「ワンマン」と表示された1両だけのディーゼルカーに乗って、終着駅まで揺られたい。あるいは、寂れた地方の港から出ている船に乗って、名前も歴史も知らない島まで揺られたい。「揺られたい」にもたくさんある。色あせつつある少し昔のことを、ぼんやり思い出すための"揺れ"が欲しい。

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 電車の中で一瞬だけお茶を飲むこともはばかられる。腕と腕、脚と脚が絡みつくこの空間で

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