yuon(ゆおん)

twitterで54字の物語を書いています。 noteではショートショートなどちょっと…

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twitterで54字の物語を書いています。 noteではショートショートなどちょっとした創作を行っています。

マガジン

  • 雑貨屋『このは』のお話。

    自宅への帰り道。森山里子は、偶然、不思議な雑貨屋『このは』に足を踏み入れる。棚には様々なお皿やカップが並ぶ。奥から現れたのは、とてもおどおどした店員さん。でも、この店員さん、実は……

記事一覧

「視える子」#怪異が本当に出る町 より

中学生時代の友人に『視える』女の子がいました。決して目立つタイプではありませんでしたが、時々ボソッと、「あの階段は霊がいるから別の階段を通ったほうがいい」とか「…

「切ってはいけない」#怪異が本当に出る町 より

去年の夏、駅前の放置自転車撤去のアルバイトをした。 普通の鍵なら、持ち上げてトラックに積めるのだけれど、中にはワイヤーロックで固定されているのもある。そんなとき…

8

「事故物件の思い出」『#怪異が本当に出る町』より

いわゆる事故物件に住んでいたことがありまして。それはもう、当然のように皿は棚から飛び出してくるし、ラップ音も酷くて。引っ越そうにも、ここより安く住める場所もなく…

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「真夜中の職質」〜140字小説『#怪異が本当に出る町』投稿作品より〜

SiDe.A 夜中に散歩していたら、警官が声かけて来たんです。 これが噂に聞く職質ってやつだなって思ったら、「ちょっと失礼」って言って、突然、粉を掛けられたんです。 驚…

12

吸血鬼の娘。

「吸血鬼たるもの、紳士、淑女たれ」 これが一族に伝わる家訓だ。 両親は、ことあるごとにこの言葉を持ち出しては、私を諭した。 でもさ、と私は思う。 それって時代錯誤じ…

13

#54字の宴 #ハロウィン

『おばけの子』

19

#54字の宴 #ハロウィン

『眼鏡 or トリート』

15

エレキギター、始めました。

 始めたのは1月の終わり。きっかけは『ぼっち・ざ・ろっく』。陰キャが主人公のアニメへのシンパシーが高い私。作品としても最高だったので、思わず手に取りました選択中…

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雑貨屋『このは』のお話。その8「特別な一日」

 それは突然のことだった。 私ともみじさんは、いつものように、棚の食器を並び替えていた。 ドアベルがカランカランと鳴った。 私ともみじさんは顔を見合わせる。 ーー…

yuon(ゆおん)
10か月前
4

雑貨屋『このは』のお話。その7「怪談?」

ーーあれは、深夜0時を廻った頃でした。  残業でくたくただった私は、駅前の商店街を抜けて、引っ越したばかりの自宅へと向かっていました。  人気のない帰り道。暗くな…

yuon(ゆおん)
10か月前
3

雑貨屋『このは』のお話。その6「ポスター」

「もみじさん、喜んでくれるかなぁ」  私は出来上がったポスターとお土産の入ったバスケットを手に、雑貨屋『このは』に向かう。  定休日の二日間と、私の本業の関係で都…

yuon(ゆおん)
11か月前
6

雑貨屋『このは』のお話。(その5) 「初めてのお茶会」

 雑貨屋『このは』宣伝ポスター大作戦は、作者一人(一匹?)につき一点という枠を作ったお陰で、どうにか作品を絞り込むことができた。  分類して気づいたのは、それぞ…

10

雑貨屋『このは』のお話。(その4)

 カウンターの上に個性豊かなお皿やカップが並ぶ。ポスターを作るために、私ともみじさんが選びだした逸品だ。どれも紹介したいものばかりで、なかなか絞り込むことができ…

雑貨屋『このは』のお話。(その3)「雨の土曜日」

「来ませんねぇ」と、私。 「来ませんねぇ」と、もみじさん。  ここは商店街からちょっと外れた場所にある雑貨屋『このは』。  今日は土曜日。  私と店長のもみじさんは…

10

雑貨屋『このは』のお話。その2

「お先に失礼します」 少し緊張しながら、私は部署を後にした。 「お、森山さん、今日は早いね」 休憩室の自販機の前にいた先輩が笑顔で言う。 「はい。ちょっと勉強を始め…

雑貨屋『このは』のお話

いつもの帰り道。 人通りもまばらになった駅前の商店街を抜けてアパートを目指す。就職してから5年目。通い慣れたいつもの道。 頭の中は仕事、仕事、仕事。その隙間に、…

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「視える子」#怪異が本当に出る町 より

「視える子」#怪異が本当に出る町 より

中学生時代の友人に『視える』女の子がいました。決して目立つタイプではありませんでしたが、時々ボソッと、「あの階段は霊がいるから別の階段を通ったほうがいい」とか「奥の空き部屋には悪いモノがいるから入ってはいけない」などと言うのです。
そんな彼女に、初めは興味本位で話しかける子もいたのですが、ある生徒が「アイツの話はでたらめだ」と言ったことをきっかけにして、みんな彼女を避けるようになりました。
彼女も

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「切ってはいけない」#怪異が本当に出る町 より

「切ってはいけない」#怪異が本当に出る町 より

去年の夏、駅前の放置自転車撤去のアルバイトをした。
普通の鍵なら、持ち上げてトラックに積めるのだけれど、中にはワイヤーロックで固定されているのもある。そんなときはボルトクリッパーで切ることになっていた。
それにしても暑い。
休憩中、老婆から
「お兄さん、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なんですか?」
「ここの裏の神社に、放置自転車があってね。御社の柱にワイヤーで繋がれてて困ってるの」
なんと、罰

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「事故物件の思い出」『#怪異が本当に出る町』より

「事故物件の思い出」『#怪異が本当に出る町』より

いわゆる事故物件に住んでいたことがありまして。それはもう、当然のように皿は棚から飛び出してくるし、ラップ音も酷くて。引っ越そうにも、ここより安く住める場所もなくて。

で、考えたんです。
幽霊、じゃなくて、シェアハウスの同居人として扱おうって。
まず最初にやったのは、名前をつけることでした。生前の名前を不動産屋に聞くのも面倒だったんで、レイさんとつけました。

で、レイさんの行動(?)を見ながら、

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「真夜中の職質」〜140字小説『#怪異が本当に出る町』投稿作品より〜

「真夜中の職質」〜140字小説『#怪異が本当に出る町』投稿作品より〜

SiDe.A

夜中に散歩していたら、警官が声かけて来たんです。
これが噂に聞く職質ってやつだなって思ったら、「ちょっと失礼」って言って、突然、粉を掛けられたんです。
驚いていると「もういいですよ」って。
帰宅後に服についた粉を確認したら、塩でした。
正体がバレなくて良かった。

SiDe.B

夜のパトロール中、散歩中の女性を発見。こんな時間にこの道を歩いているのは怪異の者の可能性が高い。私は呼

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吸血鬼の娘。

吸血鬼の娘。

「吸血鬼たるもの、紳士、淑女たれ」
これが一族に伝わる家訓だ。
両親は、ことあるごとにこの言葉を持ち出しては、私を諭した。
でもさ、と私は思う。
それって時代錯誤じゃない?
サービス残業で過労死寸前の父や、パートを掛け持ちして休みなく働く母を見てると、どこをどうすれば紳士、淑女なんていえるのか、甚だ疑問だ。
確かに、両親はいつだって礼儀正しくて、お人好し過ぎないかと思うほどの善人だ。地域のボランテ

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エレキギター、始めました。

 始めたのは1月の終わり。きっかけは『ぼっち・ざ・ろっく』。陰キャが主人公のアニメへのシンパシーが高い私。作品としても最高だったので、思わず手に取りました選択中、同年代ではレアかも?
 最初はベース志望だったのです。これは同漫画のリョウの影響ではなく、PEDOROのアユニの影響(今なら、ぼっちざろっくの泥酔ベーシストのきくりさんも影響を受けたかも)。弦が4本だから、不器用な自分にも行けるのでは? 

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雑貨屋『このは』のお話。その8「特別な一日」

雑貨屋『このは』のお話。その8「特別な一日」

 それは突然のことだった。
私ともみじさんは、いつものように、棚の食器を並び替えていた。
ドアベルがカランカランと鳴った。
私ともみじさんは顔を見合わせる。

ーーもしかして? もしかすると?

 期待と緊張で胸が高鳴る。
「いっ、いらっしゃいませ」
ひっくり返りそうになる声をなんとか抑えて、私は言った。
ドアの向こうからやってきたのは、紺色のブレザー姿の女の子。高校の制服だろうか。電車の中で見か

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雑貨屋『このは』のお話。その7「怪談?」

雑貨屋『このは』のお話。その7「怪談?」

ーーあれは、深夜0時を廻った頃でした。
 残業でくたくただった私は、駅前の商店街を抜けて、引っ越したばかりの自宅へと向かっていました。
 人気のない帰り道。暗くなり、疲れていたこともあるのでしょう。私はいつもと違う角を曲がってしまったようでした。気がつくと見知らぬ場所に立っていました。
 しまった、と思い引き返そうとしましたが、自分がどちらから来たのかも分かりません。
 スマホを取り出し、地図で確

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雑貨屋『このは』のお話。その6「ポスター」

雑貨屋『このは』のお話。その6「ポスター」

「もみじさん、喜んでくれるかなぁ」
 私は出来上がったポスターとお土産の入ったバスケットを手に、雑貨屋『このは』に向かう。
 定休日の二日間と、私の本業の関係で都合がつかなかった二日間の、合わせて四日ぶりの『このは』。なんだかすごく久しぶりに感じてしまう。

ーーもみじさん、私のこと忘れてないよね?

 夏休み明けの登校日のような気分。ドキドキしながら、店の扉を開ける。いつものドアベルの音が響く。

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雑貨屋『このは』のお話。(その5) 「初めてのお茶会」

雑貨屋『このは』のお話。(その5) 「初めてのお茶会」

 雑貨屋『このは』宣伝ポスター大作戦は、作者一人(一匹?)につき一点という枠を作ったお陰で、どうにか作品を絞り込むことができた。
 分類して気づいたのは、それぞれに持ち味があるということ。あなぐまくんは几帳面、うさぎさんはポップ、きじさんは上品、おさるさんは真面目。そしてもみじさんはどこか懐かしくて温かみがある。
 私はスマホで何枚かずつ写真を撮ると、家のパソコンで、それを元に簡単なポスターを作っ

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雑貨屋『このは』のお話。(その4)

雑貨屋『このは』のお話。(その4)

 カウンターの上に個性豊かなお皿やカップが並ぶ。ポスターを作るために、私ともみじさんが選びだした逸品だ。どれも紹介したいものばかりで、なかなか絞り込むことができない。本当は全部ポスターに載せたいと思うほど、魅力的だ。けれど数が多いと、その分、写真も小さくなってしまい、魅力が伝わらない。
「どうしたものでしょうか……」
 もみじさんも腕組みをして悩んでいる様子。自分と友達とで一生懸命作ったものであれ

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雑貨屋『このは』のお話。(その3)「雨の土曜日」

雑貨屋『このは』のお話。(その3)「雨の土曜日」

「来ませんねぇ」と、私。
「来ませんねぇ」と、もみじさん。
 ここは商店街からちょっと外れた場所にある雑貨屋『このは』。
 今日は土曜日。
 私と店長のもみじさんは、お店のカウンターで二人並んで窓の外を見つめていた。お客のいない店内には、雨が奏でるBGMが静かに流れている。
 本業が休みだった私は、いつお客さんが来ても大丈夫なように、朝からもみじさんと店の掃除をし、レイアウトを整え、接客の練習をし

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雑貨屋『このは』のお話。その2

「お先に失礼します」
少し緊張しながら、私は部署を後にした。
「お、森山さん、今日は早いね」
休憩室の自販機の前にいた先輩が笑顔で言う。
「はい。ちょっと勉強を始めたので」
ーー嘘ではない。一瞬、「ボランティアをすることになった」と言おうかと思ったけれど、雑貨屋『このは』で働く事は、もみじさんのためというより、私のためだ。そこで出てきたのが「勉強」という言葉だった。
「森山さんは偉いなぁ。真面目だ

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雑貨屋『このは』のお話

雑貨屋『このは』のお話

いつもの帰り道。

人通りもまばらになった駅前の商店街を抜けてアパートを目指す。就職してから5年目。通い慣れたいつもの道。

頭の中は仕事、仕事、仕事。その隙間に、申し訳程度に、推しの新曲と今日の夕飯の心配が浮かぶ。

別に仕事が嫌いというわけではないが(かといって一生をかけたいと思うほどの情熱もない)、ここまで仕事中心の日々が続くと、ふと心にすきま風を感じてしまう。

ーー私、ずっとこのまま、仕

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