yuon(ゆおん)

twitterで54字の物語を書いています。 noteではショートショートなどちょっと…

yuon(ゆおん)

twitterで54字の物語を書いています。 noteではショートショートなどちょっとした創作を行っています。

マガジン

  • 雑貨屋『このは』のお話。

    自宅への帰り道。森山里子は、偶然、不思議な雑貨屋『このは』に足を踏み入れる。棚には様々なお皿やカップが並ぶ。奥から現れたのは、とてもおどおどした店員さん。でも、この店員さん、実は……

最近の記事

「視える子」#怪異が本当に出る町 より

中学生時代の友人に『視える』女の子がいました。決して目立つタイプではありませんでしたが、時々ボソッと、「あの階段は霊がいるから別の階段を通ったほうがいい」とか「奥の空き部屋には悪いモノがいるから入ってはいけない」などと言うのです。 そんな彼女に、初めは興味本位で話しかける子もいたのですが、ある生徒が「アイツの話はでたらめだ」と言ったことをきっかけにして、みんな彼女を避けるようになりました。 彼女もそれ以上、自分から周囲に話しかけることはなく、休み時間には一人で過ごすようになり

    • 「切ってはいけない」#怪異が本当に出る町 より

      去年の夏、駅前の放置自転車撤去のアルバイトをした。 普通の鍵なら、持ち上げてトラックに積めるのだけれど、中にはワイヤーロックで固定されているのもある。そんなときはボルトクリッパーで切ることになっていた。 それにしても暑い。 休憩中、老婆から 「お兄さん、ちょっとお願いがあるんだけど」 「なんですか?」 「ここの裏の神社に、放置自転車があってね。御社の柱にワイヤーで繋がれてて困ってるの」 なんと、罰当たりな輩もいたものだ。 僕は仲間に声を掛けると、ボルトクリッパーを持って、老婆

      • 「事故物件の思い出」『#怪異が本当に出る町』より

        いわゆる事故物件に住んでいたことがありまして。それはもう、当然のように皿は棚から飛び出してくるし、ラップ音も酷くて。引っ越そうにも、ここより安く住める場所もなくて。 で、考えたんです。 幽霊、じゃなくて、シェアハウスの同居人として扱おうって。 まず最初にやったのは、名前をつけることでした。生前の名前を不動産屋に聞くのも面倒だったんで、レイさんとつけました。 で、レイさんの行動(?)を見ながら、反応を返したんです。 皿を落とした時は、「あ、皿出そうとしてくれたの? ありがと

        • 「真夜中の職質」〜140字小説『#怪異が本当に出る町』投稿作品より〜

          SiDe.A 夜中に散歩していたら、警官が声かけて来たんです。 これが噂に聞く職質ってやつだなって思ったら、「ちょっと失礼」って言って、突然、粉を掛けられたんです。 驚いていると「もういいですよ」って。 帰宅後に服についた粉を確認したら、塩でした。 正体がバレなくて良かった。 SiDe.B 夜のパトロール中、散歩中の女性を発見。こんな時間にこの道を歩いているのは怪異の者の可能性が高い。私は呼び止め、携帯していた塩をかける。 彼女は少し驚いた様子で、姿が揺らいだが、抵抗は

        「視える子」#怪異が本当に出る町 より

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        • 雑貨屋『このは』のお話。
          4本

        記事

          吸血鬼の娘。

          「吸血鬼たるもの、紳士、淑女たれ」 これが一族に伝わる家訓だ。 両親は、ことあるごとにこの言葉を持ち出しては、私を諭した。 でもさ、と私は思う。 それって時代錯誤じゃない? サービス残業で過労死寸前の父や、パートを掛け持ちして休みなく働く母を見てると、どこをどうすれば紳士、淑女なんていえるのか、甚だ疑問だ。 確かに、両親はいつだって礼儀正しくて、お人好し過ぎないかと思うほどの善人だ。地域のボランティアも、頼まれれば、時間の許す限り、残りHPを無視して参加している。 ーーNOと

          吸血鬼の娘。

          #54字の宴 #ハロウィン 『おばけの子』

          #54字の宴 #ハロウィン 『おばけの子』

          #54字の宴 #ハロウィン 『眼鏡 or トリート』

          #54字の宴 #ハロウィン 『眼鏡 or トリート』

          エレキギター、始めました。

           始めたのは1月の終わり。きっかけは『ぼっち・ざ・ろっく』。陰キャが主人公のアニメへのシンパシーが高い私。作品としても最高だったので、思わず手に取りました選択中、同年代ではレアかも?  最初はベース志望だったのです。これは同漫画のリョウの影響ではなく、PEDOROのアユニの影響(今なら、ぼっちざろっくの泥酔ベーシストのきくりさんも影響を受けたかも)。弦が4本だから、不器用な自分にも行けるのでは? という不順な動機もありました。  ただ、なにせ弦楽器初心者。若くもない人間が、独

          エレキギター、始めました。

          雑貨屋『このは』のお話。その8「特別な一日」

           それは突然のことだった。 私ともみじさんは、いつものように、棚の食器を並び替えていた。 ドアベルがカランカランと鳴った。 私ともみじさんは顔を見合わせる。 ーーもしかして? もしかすると?  期待と緊張で胸が高鳴る。 「いっ、いらっしゃいませ」 ひっくり返りそうになる声をなんとか抑えて、私は言った。 ドアの向こうからやってきたのは、紺色のブレザー姿の女の子。高校の制服だろうか。電車の中で見かけたことがあるような気がする。彼女は軽く会釈をすると、まっすぐマグカップのある棚

          雑貨屋『このは』のお話。その8「特別な一日」

          雑貨屋『このは』のお話。その7「怪談?」

          ーーあれは、深夜0時を廻った頃でした。  残業でくたくただった私は、駅前の商店街を抜けて、引っ越したばかりの自宅へと向かっていました。  人気のない帰り道。暗くなり、疲れていたこともあるのでしょう。私はいつもと違う角を曲がってしまったようでした。気がつくと見知らぬ場所に立っていました。  しまった、と思い引き返そうとしましたが、自分がどちらから来たのかも分かりません。  スマホを取り出し、地図で確かめようとしましたが、画面にはバッテリー切れの表示。電車に乗っていたときには、ま

          雑貨屋『このは』のお話。その7「怪談?」

          雑貨屋『このは』のお話。その6「ポスター」

          「もみじさん、喜んでくれるかなぁ」  私は出来上がったポスターとお土産の入ったバスケットを手に、雑貨屋『このは』に向かう。  定休日の二日間と、私の本業の関係で都合がつかなかった二日間の、合わせて四日ぶりの『このは』。なんだかすごく久しぶりに感じてしまう。 ーーもみじさん、私のこと忘れてないよね?  夏休み明けの登校日のような気分。ドキドキしながら、店の扉を開ける。いつものドアベルの音が響く。 「こ、こんにち……ぅわあッ!?」  私は思わず荷物を落としそうになった。い

          雑貨屋『このは』のお話。その6「ポスター」

          雑貨屋『このは』のお話。(その5) 「初めてのお茶会」

           雑貨屋『このは』宣伝ポスター大作戦は、作者一人(一匹?)につき一点という枠を作ったお陰で、どうにか作品を絞り込むことができた。  分類して気づいたのは、それぞれに持ち味があるということ。あなぐまくんは几帳面、うさぎさんはポップ、きじさんは上品、おさるさんは真面目。そしてもみじさんはどこか懐かしくて温かみがある。  私はスマホで何枚かずつ写真を撮ると、家のパソコンで、それを元に簡単なポスターを作ってくることをもみじさんと約束した。  私たちは、品物を棚に戻す作業に取り掛かっ

          雑貨屋『このは』のお話。(その5) 「初めてのお茶会」

          雑貨屋『このは』のお話。(その4)

           カウンターの上に個性豊かなお皿やカップが並ぶ。ポスターを作るために、私ともみじさんが選びだした逸品だ。どれも紹介したいものばかりで、なかなか絞り込むことができない。本当は全部ポスターに載せたいと思うほど、魅力的だ。けれど数が多いと、その分、写真も小さくなってしまい、魅力が伝わらない。 「どうしたものでしょうか……」  もみじさんも腕組みをして悩んでいる様子。自分と友達とで一生懸命作ったものであれば、なおさら想いは強いだろう。何かテーマや枠があれば、決めやすいのだけれども。

          雑貨屋『このは』のお話。(その4)

          雑貨屋『このは』のお話。(その3)「雨の土曜日」

          「来ませんねぇ」と、私。 「来ませんねぇ」と、もみじさん。  ここは商店街からちょっと外れた場所にある雑貨屋『このは』。  今日は土曜日。  私と店長のもみじさんは、お店のカウンターで二人並んで窓の外を見つめていた。お客のいない店内には、雨が奏でるBGMが静かに流れている。  本業が休みだった私は、いつお客さんが来ても大丈夫なように、朝からもみじさんと店の掃除をし、レイアウトを整え、接客の練習をした。しかもかなり念入りに。  そしてすっかり準備万端、すべて完璧に整ったのに、お

          雑貨屋『このは』のお話。(その3)「雨の土曜日」

          雑貨屋『このは』のお話。その2

          「お先に失礼します」 少し緊張しながら、私は部署を後にした。 「お、森山さん、今日は早いね」 休憩室の自販機の前にいた先輩が笑顔で言う。 「はい。ちょっと勉強を始めたので」 ーー嘘ではない。一瞬、「ボランティアをすることになった」と言おうかと思ったけれど、雑貨屋『このは』で働く事は、もみじさんのためというより、私のためだ。そこで出てきたのが「勉強」という言葉だった。 「森山さんは偉いなぁ。真面目だし、向上もあって。頑張ってね」 「ありがとうございます」 私はお辞儀をするとエレ

          雑貨屋『このは』のお話。その2

          雑貨屋『このは』のお話

          いつもの帰り道。 人通りもまばらになった駅前の商店街を抜けてアパートを目指す。就職してから5年目。通い慣れたいつもの道。 頭の中は仕事、仕事、仕事。その隙間に、申し訳程度に、推しの新曲と今日の夕飯の心配が浮かぶ。 別に仕事が嫌いというわけではないが(かといって一生をかけたいと思うほどの情熱もない)、ここまで仕事中心の日々が続くと、ふと心にすきま風を感じてしまう。 ーー私、ずっとこのまま、仕事だけしておばあちゃんになるのかな。 展望が見えない将来に思わずため息が漏れる

          雑貨屋『このは』のお話