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「事故物件の思い出」『#怪異が本当に出る町』より

いわゆる事故物件に住んでいたことがありまして。それはもう、当然のように皿は棚から飛び出してくるし、ラップ音も酷くて。引っ越そうにも、ここより安く住める場所もなくて。

で、考えたんです。
幽霊、じゃなくて、シェアハウスの同居人として扱おうって。
まず最初にやったのは、名前をつけることでした。生前の名前を不動産屋に聞くのも面倒だったんで、レイさんとつけました。

で、レイさんの行動(?)を見ながら、反応を返したんです。
皿を落とした時は、「あ、皿出そうとしてくれたの? ありがとねー」とかラップ音に合いの手を入れてみたりとか。
まあ、最初はレイさんもキレ散らかしてたんですけど、だんだん諦めたみたいで。
退去前には食事の後に食器を洗い場に持っていってくれたり、ラップ音でメトロノーム代わりをしてくれたりしてくれたりして、だいぶ仲良くなりました。
でも、取り壊しが決まってしまって。今はもう、ないんです。

私もそれからいろいろあって、今はこうして猫カフェのオーナーなんかやってるんですけど。で。
この前気づいたんです。
猫って、机の皿を落としたり、窓の外を見て、カカカッて鳴いたりするじゃないですか。
もしかしたらこの中に、転生したレイさんが混じってるんじゃないかなって……。


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