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#読書感想文
ひとなみ/ひとなみ(藤波えりか、金森人浩)
フォロワーの藤波えりかさんが携わっているというので、探してゲットした歌集。藤波えりか、金森人浩の短歌ユニットで「ひとなみ」というらしい。名前からとったユニット名だろうか、等身大で生きている感じが出てとてもよいですね。東京の文学フリマで買ったのですが、その時は可愛い栞や冊子もついてきてうれしかったです!
内容は自由詠やテーマ詠、相聞歌やいちごつみなどを含む140首。なかなか面白く読ませていただきま
中村文則『遮光』、読書メモ
以下、『遮光』読書会(https://note.com/yozora/n/ne60c2af7326c )時のメモです。
冒頭のサルトル、エロストラートと銃
が、カミュも
太陽が眩しいから殺した、というカミュの異邦人が想起される。ペストのような細かな心理描写。講演で意識してないとは言うものの、その講演でもカミュを扱っており、彼とフランス文学の親近性が窺える。
見られている感覚
悲しいからなくのか
読書記録012「ハイドラ」金原ひとみ
新宿に住むモデルが主人公であり、舞台設定としてはかなり華々しいものである。が、それと対照をなすかのように、モデルをしている主人公早希の内面はあまりにも暗い。早希は、有名なカメラマンである新崎と付き合っているものの、新崎の淡白な態度やほかの女に乗り換えられてしまうのではないだろうかという不安に絶えず脅かされている。恋愛という実感は薄い。またそこには仕事上の不均衡、新崎はほかの女優やモデルも撮るが、
もっとみる読書記録011「感情教育」フローベール
金持ちで学識もある主人公フレデリック君のアプローチにヒロインたちはしばしば気を許し、イベントも発生するのだが、肝心なところでフレデリック君の優柔不断やその場の感情に流されてしまう性格が裏目に出てしまい、関係は思うさま上手く結実しない。言ってみればこれは、「複数のヒロインに目移りしていてたら正規ルートを逃してしまう青年の物語」なのである。フレデリック君は子供っぽく場当たり的で、誠実さもなく思いやり
もっとみる読書記録010「TVピープル」村上春樹
基本的に『TVピープル』収録の6つの短編は、コミュニケーションの失敗や挫折を描いている。
村上春樹の作品の主要なものは、意志の疎通がとれないながらも、物語が進んだり関係性が発展していくものが多い傾向にあるが、ここに収められた短編はどれも他者との交流が断絶したところで話が終わっている。関係が発展しない代わりに表現されているのは、喪失感に彩られた奇妙なリアリティだ。
たとえばそれは普通の人の0.7倍の