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二年目

121
2020年の詩まとめ
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#散文

うそつき

うそつき

君は嘘をつくときに少し首を傾けて笑うこと、わたしに気づかれていないと思っているのだろうか、どこか苦しそうになにかを諦めたとき、自分が傷ついて終わるなら良いといつから君は正義のヒーローになってしまったの、ヒーローはもっと自分勝手に他人を救うものだと、誰かを救うことで自分も救われた気になっているのだと、オーディエンスは傷つける、言葉は一瞬で音は消えても届いた瞬間、確かに形をもって跡になること、君は知っ

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わんにゃん

ひとの心も満足にわからないのに、イヌネコに過剰な感情移入できるひとがすこしこわい

殺処分も民間保護施設も人間のエゴでしかなくて、イヌネコはわたしたちと同じ言語を発しないからわかったふりして同情する
自分は味方だから、傷つけないから、でもごはんもトイレも人間の決めたルールに従って、人間が愛せるイヌネコになってね、って笑顔で抱きあげる

イヌもネコも嫌いでないけれど、ノラネコの気ままさがすきだし、神

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性別年齢学歴肩書き恋愛対象なんか背負わずに、ただの人間でありたいだけなのにそれを許してくれない社会が嫌いだからはやく人間やめたいと願ってしまう、夜空はいつだって美しく世界を照らしてるからえらい人たちは勘違いして社会をまわした気になっているね、どうして人間は一年で一歳しか年をとったことにならないのだろう、それだけ成長が遅いってことなのかな犬猫みたいに年を重ねていつの間にか世界から消える存在で居たかっ

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等価交換

誰かを救うってことは誰かを見捨てるってことでしょ、救った数だけ亡霊がついてくるし救ったつもりで救えなかった人はカウントせずに狭間に飲み込まれて忘れられていく、見捨てられることに慣れてしまったときわたしはもう誰も救えない、手を伸ばしても指先がほんの一瞬ふれて空を切るだけでその時の君の顔が忘れられません、きっと今夜も夢にでてくるのでしょうねわたしを振り回してこの世で果たせなかったことやり尽くして朝が来

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どうしても

居なくなりたい日に限って夜中にふらっと外にでても野良猫はブロック塀のうえでのびてるしコンビニ前でたむろしてるおにいさんたちはいないし帰りのHRで不審者情報も聞かなかった、平和すぎた、うまくバランスとってるなぁ世界、せめてこのあとうっかりサンダル滑らせて田んぼに落ちたりしないとわたしが保っていられないよ

おはよう

寝ること、怖くなくなったのは君が眩しい朝日と共にわたしの寝顔見ていること、知ったから、うっすらと目を開けて幻かと手を伸ばす、あたたかい
おはよう、目覚ましは心地良い君の声、窓の外で囀ずる小鳥より身に染みた
今夜もわたしは深い闇に包まれて、君を待つ
眠っているあいだに世界がわたしを置いていってしまう夜は昔のこと

目覚めること、怖くなくなったのは君が夜に安心しきっていたから、夜の一部に深く沈んだ冷た

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if

君は死んだ、幸せになった、幸せにしてくれた、それでもやっぱり昨日までの君がすきです、今日からの僕もそんなに変わらないよってすこし困った顔で笑いかけてくるけれど、捨てたんでしょ、昨日までの自分、要らなくなったから捨てた、幸せになったはずなのに、もう一度こちら側に戻ってきてほしいと願ってしまう、そんなの我儘でしかなくて君を不幸にするってわかっているよ、僕も一度死んでみようか、そして「はじめまして」から

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見返りを求めずに正義を貫くあなたに我が儘を云ってほしくてその腕を掴んだのに、結局あなたはわたしを護ってしまうのね
大丈夫、
その一言さえも受け取ってくれないあなたにとってわたしの価値はどのくらいなのだろう、その価値よりもあなたは尊くて護られるべき存在だってこと、はやく気が付かせたくて突き放したのに、あなたは迷わず掴んでしまうのね、狡い人、それでもきっと許してしまうわたしもまだまだ甘い、依存している

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お大事に

日本史の授業中、黒板の文字がぐにゃりと歪んで視界が暗転、目を覚ますとマキロンと他人のにおいが渋滞する冷たいベッド、ふかふかのお布団と睡眠は快楽のはずなのにくすんだ白が僕を責めてくる、寝返りでギシリとベッドが音をたて椅子をひく音が返事をする、真っ白な視界が取り払われて校内一美人(仮)の保健医が僕を見下ろす、香水がきつくてマキロンが恋しくなりました、ここはいつだって清潔で静かであなたの城、準不登校児童

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誕生日

昨日、わたしは母がわたしを生んだ年齢をむかえてしまった、今日から動物的生産性がマイナスに傾く、親より先には死ねないなんて言ってみたけどわたしに続く家系図は無い無い無い縦に伸びただけの棒線、ずぅーーーっと伸びて地面に埋まって先祖と再会ハッピーエンドは死んだ者の特権わたしはこの生き地獄でにこにこ愛想ふりまいて呼吸して地球を汚して神様に怒られる、信じてないのに人間が嫌いだから神様は犬がいいなわんわん怒ら

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あなたに興味がないです
だから話しかけて返答を待つ必要も、好かれようと愛想良く笑顔を振り撒くことも、講義室で隣に座ることもないでしょう
それを都合良く解釈したあなたは、
わたしのことを「控えめで大人しくて、ちょっと恥ずかしがり屋な女の子」、分かったふりして勝手にわたしの評価を拡散拡散わたしが沢山
わたしが意識すると思ったの、渋谷スクランブル交差点の雑音と同じ
誰が好きとか嫌いとか、うざいとか死んで

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木造駅舎に電光掲示板、スマートフォンで検索をかけた5番線ホームが見つからない
快速列車に次々乗り込むサラリーマン、ボックスシートにひとりで座る
目的地へ検索かけても到着時刻が表示されない

雨の日、駅前ロータリーでバスを探す
いちばん待機列の短いバス停に並ぶ、乗車したのは自分だけ
渋滞する道路、窓ガラスの雨粒で歪む赤信号

あお

空は青いって当たり前なのに、その青をとてつもなく恨みたくなるときがあるよ
厚い雲が青を遮って僕に平和の影をおとす、僕の影は誰にも踏まれない

大衆

君はアイドルになれないよ
だってその笑顔をつくれるのはわたしだけだから
誰かに消費される君なんて、かわいくないよ