マガジンのカバー画像

二年目

121
2020年の詩まとめ
運営しているクリエイター

#note

うそつき

うそつき

君は嘘をつくときに少し首を傾けて笑うこと、わたしに気づかれていないと思っているのだろうか、どこか苦しそうになにかを諦めたとき、自分が傷ついて終わるなら良いといつから君は正義のヒーローになってしまったの、ヒーローはもっと自分勝手に他人を救うものだと、誰かを救うことで自分も救われた気になっているのだと、オーディエンスは傷つける、言葉は一瞬で音は消えても届いた瞬間、確かに形をもって跡になること、君は知っ

もっとみる
オルゴール

オルゴール

どんな曲でも聴いているとさみしくなってしまうね

過去を丁寧に掬いとって小さな箱に詰める

欠片が静かに跳ねて脳に眠っているあの日の記憶が覚醒します

忘れてしまわないようにそっと蓋を閉めて両手で包み込む

つぎはいつ開けるかわからないけれど

決して古くならない魔法の箱

迷子

迷子

秋の夕方、誰かに呼ばれた気がする

迷子になってしまいそうな空気のにおい
懐かしくて、すこし焦げくさい、でも嫌いじゃない

夕日を背にしてのびる影につられてどこまでも歩いて歩いて街のすみっこ
あと数歩進めば消えてしまえるかな
あかく燃える夕日にとけて一部になる

もうおうちに帰ろう、チャイムが鳴ります
誰でもないそれがわたしを現実に連れ戻す

何処からか漂う夕餉のにおい
わたしを迷わすにおいは消え

もっとみる
東から

東から

きっとわたしが居なくなっても朝日の届かない部屋がひとつ増えるだけで
君にはちゃんと朝日が届く、そのくらいの変化しかないんだよ

線香のにおいがまだかすかに残る喪服をクリーニングにださなきゃ、

日常に戻る
わたしがいない世界がはじまることにきっと君は疑問を抱かない
君は生きているから

わたしはいつか誰かの記憶にしかならない
記憶のわたしは誰にでも優しくて大切な存在になってしまうでしょう

だか

もっとみる
梅雨

梅雨

雨の日は無理して笑わなくても許されるような気がして
傘で表情の見えない君の機嫌をうかがわなくても許される気がして
雨音だけがふたりを隔てているのに、とても遠くに居るみたい
世界の音をかき消してくれるこの音が嫌いになれません
湿気でヘアスタイルが崩れるからと愚痴をこぼす君はかわいいよ
すべてが洗い流されてリセットされたらいいのに、と
スタバのカウンターから眺めながら飲むフラペチーノは味気ない雨の日に

もっとみる
のこりもの

のこりもの

きっと神様はじぶんがいらない部分をあつめてわたしたちをつくったのだろうね

神様からの贈りものなのよ、って美しい言葉に包まれて生まれてきたわたしたち

人間になるたびにその存在が薄くなっていくよ

あなたもわたしもカミサマからつくられたのに
よっぽど汚い部分を捨てたかったのね、カミサマ

どうですか、清くなれましたか、
人間はいつだってアナタのこと美しい存在だと信じています

神様に祈っても届く

もっとみる
あおい

あおい

空、青い 空っぽ 透き通って掴めない 落ちてくる 見透かされ
海、青い 暗い 潮のにおい 生き物の死んだ腐ったにおい 絡まって溺れて泡になって
青はわたしを消してくれるどんなにのみ込んでも歪むことなく濁ることなくまた誰かを誘って自分だけが青を知っていると錯覚させるこの世でいちばん美しくて醜い色

公園

除草作業後の公園に漂う草花が生きていたにおいがなんだか苦手だ、いきものが絶たれたにおい、生きてたにおい、砂場のあの甘いようなにおいが恋しくなってめいっぱい漕いでいたブランコからとびおりた

死装束に真っ赤な口紅でキスマークを、あの世でも君はわたしのものだよ

性別年齢学歴肩書き恋愛対象なんか背負わずに、ただの人間でありたいだけなのにそれを許してくれない社会が嫌いだからはやく人間やめたいと願ってしまう、夜空はいつだって美しく世界を照らしてるからえらい人たちは勘違いして社会をまわした気になっているね、どうして人間は一年で一歳しか年をとったことにならないのだろう、それだけ成長が遅いってことなのかな犬猫みたいに年を重ねていつの間にか世界から消える存在で居たかっ

もっとみる

過去にとべるタイムマシンができた
過去の決まった時間にかけられる電話ができた
それを望んで手をつけてしまった時、いまのわたしは死んでしまった
未来を明るくするために、なんて体のいいこと言うつもりはないよ
過去は変わらない、変えたらいけない
ここ感情を抱えて生きていかないと、
人間である意味、忘れてしまいそうだから

小学生の頃に親友と書いていた交換日記
プラスチックの軽くて脆い鍵で秘密はまもられていると信じていた
お互いだけが知ることを世界から隠せている気になっていた
いま、世界から隠してしまいたいことに溢れているのに
どんな鍵もパスワードも信じられずに
すべて自分の底に蓄積されていくだけ

星に

金平糖を夜空にかざして君のくちもとへ、あまい一等星をたべて願いが叶いますように

君になら汚されてもいいと
からっぽのわたしを溺れさせて
深く深く沈めて君の心音だけを聴いていたい