フォローしませんか?
シェア
枝瀬優
2021年8月27日 22:12
美術館の企画展示室いちばん広い展示室の中央に置かれているベンチに腰掛けて目の前の作品だけを静かに見つめる時間あの時間をつくれるひとが羨ましかったそのうち作品を見ているのは瞳だけできっと今晩の夕食の献立なんかを考えていたり玄関に飾る植物を選んでいたりするゆるやかに現実が混じっているいつも埋まっているベンチはおとなだけの特権であとすこし詰めてくれたらひとり座れる微妙な空白はおとなた
2021年8月19日 12:47
こどもの頃、掛け布団から足先がはみでているとおばけやなんだか怖いものに引っ張られるって根拠もない恐怖に怯えていた暗闇に紛れてやってくるそれらに恐怖して夜が怖かった暗いことが怖かった純粋な恐怖はいつのまにか居なくなって夜に暗闇に安心しているおとなのわたしたち
2021年8月12日 16:59
アイスの当たり棒がでたこどもの頃はいくら願っても当たらなかったのに興味が薄れた頃にやってくるなんて意地悪ねもうすこし暑ければ午後のおやつに引き換えてしまいたかったけれど君との約束がなくなってしまったついでに買っただけだからほんとうは当たりなんてほしくなかったよ神様が味方してくれないのはいつものことなのにね遠くで蜩が鳴いてるすべて汗になって流れたわたしのなかの水分は涙になれなかった
2021年7月17日 21:00
アスファルトに濃い影ができる夏生きてるんだなぁって実感してしまう夏眩しい笑顔をむけてくる君はいつだって消えてしまいそうで向日葵畑がこわくなる夏熱中症の一歩手前で君の幻をみた夏蜩の鳴く帰り道は世界にひとりぼっちになった気分で
2021年6月24日 20:35
愛されなかった幼少期同級生からのいじめを制服と大人から隠していた十代うっかり魔が差したリストカットぽたぽた垂れる真っ赤な血液に興奮と安心感恋した相手はとんでもない甲斐性なしで捨てられたのは自分でそんなわかりやすい壮絶な過去がひとつでもあるとわかりやすく周りが食い付いてくるねオマケでいまの自分は幸せですって顔してさ悲劇って美談にしやすいでしょそういう人間って違う世界のいきものみたいで
2021年6月22日 12:51
下駄箱からスニーカーがなくなった放課後廊下の蛍光灯がつく前の夕方未満の校内踊り場にたまる影はどこまでも深い闇で職員室からおとなとこどもの境界線をつくる珈琲の香り音楽室の窓から吹奏楽部の未完成な曲が校庭にゆるやかに響く校舎と体育館を繋ぐ廊下を脱線して、上履きのまま裏庭にでる生活の時間に植えた朝顔が眠っていた
2021年4月20日 18:52
また人の死を美化してる、美談にして語り継ごうとしている、苦しくて死にたくて辛かっただろう人の死を、わたしたちは解釈違いして、心に残そうと必死だ、きっと天使たちは空からわたしたちのつむじを見ながら笑ってる、あの人も笑っているかな、もしも笑っていたら嬉しいです、あなたの笑顔がだいすきだから、死が不幸なのはこの世に残ったわたしたちの価値観で、4回生まれ変わることが本当ならば、次の人生で、この世で笑い合い
2021年4月19日 20:41
午後の道徳の授業命や死について学ぶとききまって同級生の親友の死を語ってくる先生がいた名前も顔も声も知らないその親友の最期を聴かされるわたしたち不慮の事故だってわたしたちは話の中盤にはもう飽きていて途中から涙ぐみながら語る先生はいつだって不気味で感動ポルノ監督気分で教壇に立つ死にたいクラスメートは窓際の席からグラウンドを見つめて下級生の持久走を眺めていて一周遅れのあの子は世界の理
2021年3月28日 19:10
春がそこまできているにおいがします暖かいひざしはすきなのに春のにおい、胸がざわざわして向き合えません桜吹雪に巻き込まれて消えてしまえたら素敵なのに足元に散った花弁を踏んで進むしかないわたしたち綺麗なものはいつか必ず朽ち果ててわたしたちは見て見ぬふり綺麗な春だけ思い出にしましょそうすれば来年の春も待ち遠しくなるでしょ桜吹雪に巻き込まれて笑顔のあなたは春の妖精
2021年2月22日 19:22
忘れている誰かを永遠に待つ駅前の噴水広場高くあがる水たちは空になれなくてキラキラと一瞬で死んでいくその瞬間に目が合ったわたしたちは永遠を感じて恋に落ちる無言の住宅街を歩けば世界にひとりぼっちになれるような気がして真夜中の交差点で白い息吐きながら見上げた月はすこしぼやけて月が綺麗ですね、と言える相手はもういなくて死んでもいいのはわたし天国ってなんとなく青空の雲の上にあるイメー
2021年1月14日 17:28
こんなにも表面は冷たいのにわたしにもあなたにも燃えるような血が流れているということぎゅっ、と手を握りしめたら感じる鼓動に眩暈がしてきょうも生きていることを突きつけられる冬の寒空
2021年1月17日 18:18
思い出には勝てない過去は日々都合よく美化されてしまうから思い出のなかに生きられたらきっと現在から居なくなりたい感情と衝動と永遠にお別れできるのだろうけれどそれができないからせめて昨日の自分より元気だよ、って言い聞かせながら生きて今日を生きてるうちは明日に期待なんてしなくていいから明日も明後日になれば過去で思い出は勝手に更新されていくタップミスで上書きしてしまった日記アプリ
2021年1月19日 19:58
悪役にだって愛はあって誰かを愛しかつては愛されていたはずなのに最後に愛は勝つって誰かが言ってたよね正義の愛しか勝つことが許されない世界愛って曖昧で誰にも断言できないからなんでもかんでも愛のせいにしてまろやかにして忘れてしまうんだね愛は勝たない愛を守れた人だけが勝つんだよ
2021年1月28日 18:57
涙をながせば純粋にみえますか朝日に夜のコンビニの外灯に駅前のスターバックスの照明にきらりと光るその粒は心の汚れを丁寧に濾過してできた最終兵器頬をつたう生暖かいわたしの一部はあなたにちゃんととどくまえに蒸発してハンカチを濡らさない未練だけがチェック柄を濃くしてあなたはわたしを理解したつもりで微笑むの純度100%は神様でもありえなくて神様未満のわたしたちは祈りを捧げるふりし